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大阪高等裁判所 平成元年(ネ)315号 判決

《目次》

当事者及び代理人の表示

主文

別紙① 当事者目録

別紙② 認容金額一覧表

別紙③ 仮執行に基づく給付の返還額一覧表

事実

第一節当事者の求めた裁判

第一昭和六二年(ネ)第二〇二七号損害賠償請求控訴、平成元年(ネ)第三一五号民訴一九八条二項に基づく損害賠償請求各事件

第二昭和六二年(ネ)第二〇五四号損害賠償請求控訴事件

第三平成五年(ネ)第六二二号附帯控訴事件

第四平成五年(ネ)第一二九八号附帯控訴事件

第二節当事者の主張

第一当事者(請求原因1)及び事故の発生(請求原因2)並びにこれらに対する認否、反論について

第二因果関係(請求原因3)及びこれに対する認否、反論について

一原判決の事実摘示の補正

二当審における主張

1 一審原告ら

(一) 因果関係の判断基準について

(二) 各種ワクチンの接種による副作用について

(1) 予防接種による遅延アレルギー型副反応について

(2) 予防接種による不全型(非典型型)の後遺症について

(3) 潜伏期について

(4) ポリオ生ワクチンによる脳炎・脳症との因果関係について

(5) 点頭てんかんについて

(三) 個別の因果関係の有無について

(1) 種痘被接種者について

① 被害児番号10 鈴木旬子

② 被害児番号15 前田憲志

③ 被害児番号21 四方正太

④ 被害児番号30 澤﨑慶子

⑤ 被害児番号31 髙島よう

⑥ 被害児番号35 田村秀雄

(2) 百日咳ワクチン及び三種混合ワクチン被接種者について

① 被害児番号32 横山信二

② 被害児番号37 矢野さまや

③ 被害児番号38 菅美子

④ 被害児番号40 原雅美

2 一審被告

(一) 因果関係の判断基準について

(二) 予防接種の中枢神経系副反応について

(1) 脳炎・脳症の意義について

(2) 脳炎・脳症の臨床症状について

(3) 脳炎・脳症の発生機序について

(4) 予防接種後の脳炎・脳症後遺症としてのてんかんについて

(三) ポリオ生ワクチン接種と脳炎・脳症の因果関係について

(1) ポリオ生ワクチンについて

(2) ポリオ生ワクチンによる副作用について

(3) 脳炎・脳症について

(4) ポリオの潜伏期について

(5) ポリオ生ワクチン被接種者に対する行政認定と訴訟における因果関係について

(四) 個別の因果関係の有無について

(1) 種痘被接種者について

① 被害児番号10 鈴木旬子

② 被害児番号15 前田憲志

③ 被害児番号21 四方正太

④ 被害児番号30 澤﨑慶子

⑤ 被害児番号31 髙島よう

⑥ 被害児番号35 田村秀雄

(2) 百日咳ワクチン及び三種混合ワクチン被接種者について

① 被害児番号32 横山信二

② 被害児番号37 矢野さまや

③ 被害児番号38 菅美子

④ 被害児番号40 原雅美

(3) ポリオ生ワクチン被接種者について

① 被害児番号7 清原ゆかり

② 被害児番号12 山本治男

③ 被害児番号44 原篤

(第一次的請求)

第三安全配慮(確保)義務違反による債務不履行責任及び不法行為責任(請求原因4)並びにこれに対する認否、反論について

(第二次的請求)

第四国家賠償法に基づく責任(請求原因5)及びこれに対する認否、反論について

(当審における主張)

一一審原告ら

1 禁忌該当者であることの推定について

(一) 禁忌該当者の推定

(二) 接種及び予診の状況

(三) 個別の禁忌該当事由

2 厚生大臣の過失による一審被告の責任について

(一) 一審被告による本件被害児に対する予防接種の実施

(1) 種痘法に基づく接種

(2) 旧法五条、六条に基づく接種

(3) 旧法六条の二、九条及び一〇条八項に基づく接種

(4) 勧奨接種

(5) 被害児番号27中尾仁美に対する接種が任意接種であるとの一審被告の主張に対する反論

(6) 被害児番号48藤井崇治に対する接種が任意接種であるとの一審被告の主張に対する反論

(二) 予防接種の副反応による被害発生を防止すべき一審被告の責任

(1) 副反応による被害発生を防止すべき一審被告の法的義務

(2) 厚生大臣の地位と法的義務

(3) 厚生大臣の具体的措置義務

(三) 禁忌者を識別・除外するために必要な措置をとるべき義務

(1) 禁忌の意義・効果

(2) 禁忌事項の設定

(3) 予診について

(4) 禁忌者を識別・除外するために必要な措置をとるべき義務の内容

(四) 予防接種の実施体制・運用実態と厚生大臣の過失

(1) 接種現場の運用実態

(2) 接種医の認識状況(レベル)

(3) 被接種者側の認識状況(レベル)

(4) 一審被告の姿勢、対応

(5) 結語(厚生大臣の過失)

3 接種担当者の過失による一審被告の責任について

(一) 最高裁判決と接種担当者の過失

(二) 定期及び臨時の強制接種についての一審被告の責任

(三) 法定期間外の強制接種についての一審被告の責任

(1) 実施主体について

(2) 被害児吉田理美、同末廣美佳、同毛利孝子、同柳澤雅光、同中尾仁美、同田邉恵右、同横山信二、同大橋敬規、同木村尚孝、同矢野さまや、同菅美子、同原雅美、同小川健治の実施主体について

(3) 国家賠償法三条の責任

(四) 種痘法に基づく接種についての一審被告の国家賠償法三条の責任

(五) 勧奨接種についての一審被告の国家賠償法三条の責任

(六) 種痘の接種数を誤った過失(被害児番号35田村秀雄関係)

二一審被告

1 実施主体と一審被告の責任の関係について

(一) 定期予防接種及び臨時予防接種以外の予防接種について、一審被告が実施主体ではないことについて

(1) 旧法六条の二所定の予防接種について

(2) 旧法九条所定の予防接種について

(3) 種痘法に基づく予防接種について

(4) 勧奨接種について

① 監督責任について

② 国家賠償法三条の責任について

A インフルエンザの特別対策について

B ポリオの特別対策について

(5) 任意接種について

① 被害児番号27中尾仁美の接種について

② 被害児番号48藤井崇治の接種について

(二) 厚生大臣等の行政指導の公権力性について

(1) インフルエンザ等の勧奨接種の実施に関する厚生大臣等の行政指導に公権力性がないことについて

(2) 地方公共団体によるインフルエンザ等の勧奨接種の実施が一審被告の公権力の行使に当たらないことについて

(3) 旧法六条の二、九条による予防接種及び種痘法に基づく予防接種並びに任意接種の実施に関する厚生大臣等の行政指導に公権力性がないことについて

2 厚生大臣の過失の存否について

(一) 集団予防接種体制について

(1) 接種担当医について

(2) 十分な予診を可能ならしめるための物的・人的設備の整備

(二) 禁忌事項設定に不明確及び過誤のないこと

(1) 禁忌設定に当たっての基本的な方針

(2) 禁忌設定の経緯と趣旨

(三) 禁忌該当者の判断と予診体制について

(1) 予診の役割

(2) 予診体制の強化措置

(3) 医師に対する禁忌及び副反応の周知等に関する措置

(4) 被接種者及び保護者に対する周知等の措置

(5) 地方自治体に対する措置等

(6) 学校関係者に対する措置等

(7) 保健所における接種体制

3 一審原告らの禁忌者該当性等について

(一) 最高裁平成三年四月一九日判決について

(二) 接種担当者に過失が存しないことについて

(1) 被害児番号5 吉田理美

(2) 被害児番号7 清原ゆかり

(3) 被害児番号8 小林誠

(4) 被害児番号12 山本治男

(5) 被害児番号15 前田憲志

(6) 被害児番号17 藤本章人

(7) 被害児番号20 末廣美佳

(8) 被害児番号23 毛利孝子

(9) 被害児番号34 木村尚孝

(10) 被害児番号35 田村秀雄

(11) 被害児番号36 西晃市

(12) 被害児番号37 矢野さまや

(13) 被害児番号42 小川健治

(14) 被害児番号47 安田美保

(15) 被害児番号1高倉米一ほか一四名について

(三) 一審原告らの禁忌該当性の有無について

(第三次的請求)

第五損失補償責任(請求原因6)及びこれに対する認否、反論について

(当審における主張)

一一審原告ら

1 損失補償責任の基礎的考え方

(一) 「危険」から確定的に発現する特別の犠牲

(二) 制度創設時に用意されるべき損害回復手段

(三) 事前に損害回復措置を定めなかった場合の違憲違法性

(四) 補償責任にかかわる考え方

(五) 過失責任を認めても損失補償責任を否定してはならない

2 損失補償責任の条文上の根拠(一審被告の主張に対する反論)

(一) 憲法一三条、一四条一項、二五条を引用している趣旨

(二) 憲法二九条三項の法意

(三) 憲法二九条三項に基づく損失補償請求

(四) 生命・身体被害と憲法二九条三項

(五) 本件救済制度と損失補償責任

(六) 本件救済制度による被害者救済の相当性

二一審被告

(損失補償請求権の適否)

1 損失補償請求の不適法性について

2 憲法一三条、一四条、二五条に基づく損失補償請求の可否

(一) 憲法一三条の法意

(二) 憲法一四条一項の法意

(三) 憲法二五条の法意

(四) まとめ

3 憲法二九条三項に基づく損失補償請求の可否

(一) 憲法二九条における三項の位置づけ

(二) 憲法二九条三項の要件の検討

(1) 「公共のために用ひる」の意義

(2) 「正当な補償」の意義

(三) 憲法二九条三項に基づく損失補償請求の限界

4 生命・身体被害と憲法二九条三項

(一) 生命・身体障害に対する憲法二九条三項の類推適用の困難性

(1) 憲法二九条三項の位置づけからみた問題点

(2) 憲法二九条三項の要件からみた問題点

(二) 本件予防接種禍に対する憲法二九条三項の類推適用の困難性

(1) 本件予防接種禍と特別の犠牲

(2) 本件勧奨接種に伴う予防接種禍と特別の犠牲

(3) 本件予防接種禍と正当な補償

(4) その他の問題点

(三) いわゆる手続的類推適用説について

(四) もちろん解釈説の検討

5 本件救済制度と損失補償請求

(一) はじめに

(二) 本件救済制度の法的性格

(1) 本件救済制度の趣旨

(2) 予防接種禍に対する損失補償請求と本件救済制度の同質性

(3) まとめ

(三) 給付に関する処分と損失補償請求の関係

(四) 本件救済制度による被害者救済の相当性

(1) はじめに

(2) 正当な補償の問題性

(3) 本件救済制度の内容

(4) 医薬品副作用被害救済基金法の給付との対比

第六損害(損失)(請求原因7)及びこれに対する認否、反論について

一本件各被害児の損害について

1 原判決の事実摘示の補正

2 当審における主張(被害児番号3塩入信子ほか一〇名の一審原告らの個別損害に関する主張)

(一) 被害児番号3塩入信子について

(二) 被害児番号8小林誠について

(三) 被害児番号14金井眞起子について

(四) 被害児番号15前田憲志について

(五) 被害児番号16上田純子について

(六) 被害児番号18仲本知加について

(七) 被害児番号20末廣美佳について

(八) 被害児番号21四方正太について

(九) 被害児番号31髙島ようについて

(一〇) 被害児番号34木村尚孝について

(一一) 被害児番号37矢野さまやについて

二包括一律請求について

1 原判決の事実摘示の補正

2 当審における主張

(一) 一審原告ら

(1) 附帯控訴・請求の拡張と包括一律請求について

(2) 田中調査について

(3) 行政認定の障害等級と被害ランクの認定

(二) 一審被告

(1) はじめに

(2) 新版K式発達検査における検査結果の問題性

(3) 新版K式発達検査の検査結果を損害額ないし損失額の算定基準とすることの不当性

(4) 結論

三「個別積み上げ方式」による仮定的損害算定について

1 原判決の事実摘示の補正

2 当審における一審原告らの主張

(一) 原判決の損害認定の誤り

(1) 個別積上げ方式

(2) 誤った「バランス感覚」

(二) 逸失利益

(1) 基準とすべき平均賃金

(2) 中途死亡者についての計算間違い

(三) 介護費

(1) 原判決の認定額

(2) 介護と介護費用についての考え方

(3) 予防接種被害と介護費用

(4) Aランクの被害者の介護費用

(5) Bランクの被害者の介護費用

(四) 慰謝料

(1) 原判決の認定額

(2) 慰謝料判断にあたり考慮すべき要素

(五) 弁護士費用

四憲法二九条三項の損失補償額に関する一審被告の主張について

第七相続による権利の承継(請求原因8)及びこれに対する認否について

第八一審原告らの請求の要約

第九違法性阻却事由もしくは一審被告の責めに帰すべからざる事由の存在(抗弁1)及びこれに対する認否、反論について

第一〇時効及び除斥期間(抗弁2)並びにこれに対する認否、反論について

一原判決の事実摘示の補正

二当審における主張

1 一審被告

(一) 民法七二四条後段の二〇年の除斥期間の法的性質について

(二) 損失補償請求権の消滅時効及び除斥期間について

(1) 会計法三〇条の五年の時効期間

(2) 民法七二四条前段の類推適用による三年の時効期間

(3) 民法一六七条一項による一〇年の時効期間

(4) 民法七二四条後段の類推適用による二〇年の除斥期間

2 一審原告ら

(一) 民法七二四条後段の法的性質

(1) 長期時効説

(2) 除斥期間経過後の債権の相殺適状との関係

(3) 除斥期間経過後の利益の放棄との関係

(二) 除斥期間の起算点

第一一損益相殺等(抗弁3)、予防接種法に基づく給付と本件請求との調整(同4)、損害額算定に当たり考慮されるべき減額事由(同5)及びこれらに対する認否、反論について

(当審における主張)

一一審被告

1 損益相殺について

2 一審原告らの主張に対する反論

(一) 医療費、医療手当に係る損益相殺について

(二) 国民年金法あるいは特別児童扶養手当等の支給に関する法律に基づいて給付された手当、年金に係る損益相殺について

(三) 地方自治体単独給付分について

二一審原告ら

1 損益相殺について

(一) 予防接種被害に係る給付の受領について

(二) 現行の救済制度による給付の不十分性

(1) 一般的考察

(2) 給付の具体的相当性

① 一審被告の主張の誤り

② 正しい比較の方法(現在発生する被害児の場合)

③ 正しい比較の方法(過去に発生した被害児の場合)

④ 比較の結果

⑤ 正しい比較の方法(各年度別に比べる方法)

⑥ 死亡一時金のまやかし

⑦ 医薬品副作用被害救済制度との対比

(三) 損益相殺のあり方

(1) 損益相殺することの不当性

① 医療費、医療手当、葬祭料について

② 国民年金法あるいは特別児童扶養手当等の支給に関する法律により給付された手当、年金について

(2) 給付金をそのまま損害元本から差し引く不当性

(3) 中間利息控除により「現価」を求める計算の正しさの法的意味

第一二時効の援用の不当性・権利濫用性(再抗弁1)、民法七二四条後段を本件に適用すべきでない特段の事情(同2)、裁判外の権利行使による損害賠償請求権の除斥期間内の保存(再抗弁3)、意思無能力者による訴訟提起の不能(同4)、損害賠償債務の承認(同5)及びこれらに対する認否、反論について

(当審における主張)

一一審原告ら

1 民法七二四条後段を本件に適用すべきでない特段の事情(再抗弁2)について

2 意思無能力者による訴訟提起の不能(再抗弁3)について

3 裁判外の権利行使による損害賠償請求権の除斥期間内の保存(再抗弁4)について

4 損害賠償債務の承認(再抗弁5)について

二一審被告

1 再抗弁2ないし5に対する認否

2 時効の援用、除斥期間の経過の主張の不当性・権利濫用性に対する反論

第一三民訴法一九八条二項に基づく仮執行の原状回復及び損害賠償請求について

一一審被告

二一審原告ら

第三節証拠関係

別紙④ 仮執行に基づく支払額等一覧表 (1)ないし(4)

別紙⑤ 請求額等一覧表 (1)ないし(4)

別紙⑥ 禁忌規定の変遷

別紙⑦ 接種及び予診の状況

別紙⑧ 禁忌該当の事由

別紙⑨ 予診体制

別紙⑩ 新版K式発達検査による結果一覧表

別紙⑪ 本件行政救済措置一覧表

別紙⑫ 本件救済制度一覧表

別紙⑬ 予防接種被害に係る給付額一覧表 (1)、(2)

別紙⑭ 地方自治体単独給付額一覧表

別紙⑮ 予防接種法の救済制度に基づく将来給付一覧表

理由

第一事実認定に供した書証等の成立について

第二当事者(請求原因1)について

第三事故の発生(請求原因2)について

一被害児澤﨑慶子及び同髙島ようを除く本件各被害児について

二被害児番号30澤﨑慶子について

三被害児番号31髙島ようについて

第四因果関係(請求原因3)について

一因果関係に争いのない被害児について

二因果関係の判断基準及び各種ワクチンによる副作用について

三因果関係を否認された本件各被害児の因果関係の有無について

1 被害児澤﨑慶子及び同髙島ようを除く本件各被害児について

2 被害児番号30澤﨑慶子について

3 被害児番号31髙島ようについて

4 まとめ

(第一次的請求について)

第五安全配慮(確保)義務違反による債務不履行責任及び不法行為責任(請求原因4)について

(第二次的請求について)

第六国家賠償法に基づく責任(請求原因5)について

一本件各予防接種の実施主体と一審被告の国家賠償法上の責任との関係について

1 旧法五条、六条に基づく接種について

2 旧法六条の二、九条、一〇条八項に基づく接種及び勧奨による接種について

3 種痘法一条一項に基づく接種について

二厚生大臣の過失の有無について

1 禁忌該当者の推定について

2 接種担当医において予診を尽くしたが、禁忌者に該当すると認められる事由を発見できなかった特段の事情の有無について

(一) 被害児番号5吉田理美、同7清原ゆかり、同8小林誠、同12山本治男、同15前田憲志、同17藤本章人、同20末廣美佳、同23毛利孝子、同34木村尚孝、同35田村秀雄、同37矢野さまや、同36西晃市、同42小川健治、同47安田美保の各被害児について

(1) 被害児 吉田理美

(2) 同 清原ゆかり

(3) 同 小林誠

(4) 同 山本治男

(5) 同 前田憲志

(6) 同 藤本章人

(7) 同 末廣美佳

(8) 同 毛利孝子

(9) 同 木村尚孝

(10) 同 田村秀雄

(11) 同 西晃市

(12) 同 矢野さまや

(13) 同 小川健治

(14) 同 安田美保

(二) 被害児番号1高倉米一、同2河島豊、同3塩入信子、同4秋山善夫、同10鈴木旬子、同22三好元信、同25常信貴正、同26三原繁、同27中尾仁美、同40原雅美、同43野々垣一世、同45垣内陽告の各被害児について

(三) まとめ

3 厚生大臣が禁忌該当者に予防接種を実施させないための十分な措置を取ることを怠った過失の有無について

(一) 予防接種の副反応による被害発生を防止すべき厚生大臣の責任について

(二) 厚生大臣の具体的措置義務違反の有無について

(1) 禁忌の意味と禁忌規定の変遷について

(2) 予診等の体制について

(3) 我が国における予防接種の実施体制と運用の実際について

① 集団接種の常態化

② 集団接種の運用体制

③ 集団接種の運用実態

(4) 接種担当医の予診の重要性に関する認識状況について

(5) 被接種者側の認識状況について

(6) 厚生省の姿勢、対応について

① 副作用被害に関する調査

② 副作用被害の情報開示

③ 接種現場の予診状況に対する措置

④ 渋谷区予防接種センターの運用

⑤ 接種担当医に対する予診の重要性に関する周知の態勢

⑥ 被接種者側への禁忌の意義の啓蒙

(三) まとめ

4 結論

第七損害(請求原因7)について

一被害児金井眞起子、同池上圭子を除く本件各被害児の損害の状況について

二包括一律請求について

三田中調査について

四被害児金井眞起子、同池上圭子を除く本件各被害児の損害額の算定について

1 死亡被害児(その一)

(一) 逸失利益

(二) 慰謝料

(三) 損害合計額

2 死亡被害児(その二)

(一) 逸失利益

(二) 介護(助)費

(三) 慰謝料

(四) 損害合計額

3 死亡被害児(その三)

(一) 介護費

(二) 慰謝料

(三) 損害合計額

4 Aランク生存被害児

(一) 逸失利益

(二) 介護費

(三) 慰謝料

(四) 損害合計額

5 Bランク生存被害児

(一) 逸失利益

(二) 介助費

(三) 慰謝料

(四) 損害合計額

6 Cランク生存被害児

(一) 逸失利益

(二) 介助費

(三) 慰謝料

(四) 損害合計額

第八違法性阻却事由(抗弁1)について

第九時効及び除斥期間(抗弁2)について

一民法七二四条前段の三年の消滅時効について

1 本件各事故から三年の消滅時効について

2 本件行政救済措置の給付申請書の作成時から三年の消滅時効について

3 本件行政救済措置の支給認定の通知から三年の消滅時効について

二民法七二四条後段の二〇年の除斥期間の経過について

第一〇除斥期間の経過(抗弁2)に対する再抗弁について

一意思無能力による訴訟提起の不能(再抗弁3)について(被害児番号11稲脇豊和、同35田村秀雄、同38菅美子関係)

二裁判外の権利行使による損害賠償請求権の除斥期間内の保存(再抗弁4)について(被害児番号43野々垣一世関係)

三損害賠償債務の承認(再抗弁5)について(被害児番号14金井眞起子関係)

四民法七二四条後段を本件に適用すべきでない特段の事情(再抗弁2)について(被害児番号14金井眞起子、同41池上圭子関係)

五まとめ

第一一損益相殺等(抗弁3)、予防接種法に基づく給付と本件請求との調整(抗弁4)、損害額算定に当たり考慮されるべき減額事由(抗弁5)等について

一損益相殺等(抗弁3)について

1 予防接種健康被害に係る給付について

2 損益相殺の対象項目について

(一) 医療費、医療手当及び葬祭料について

(二) 障害基礎年金について

(三) 地方自治体単独給付分について

(四) その他の給付について

3 損益相殺対象費目の本件予防接種時の現価等について

(1) 逸失利益及び介護(助)費の損益相殺額の現価について

(2) 慰謝料の損益相殺額について

二予防接種法に基づく給付と本件請求との調整(抗弁4)について

1 予防接種法に基づく将来給付分の控除について

2 履行の猶予について

三損害額算定に当たり考慮されるべき減額事由(抗弁5)について

第一二国家賠償法に基づく一審原告らの損害賠償請求債権額について

一本件各被害児の最終損害額について

二死亡被害児の相続による権利の承継について

三一審原告らの損害賠償請求債権額について

(第三次的請求について)

第一三損失補償責任(請求原因6)について

一損失補償請求の追加的、予備的併合の適否について

二一審原告金井眞起子、同池上圭子の第三次的請求について

三一審原告金井眞起子、同池上圭子を除く一審原告らの第三次的請求について

第一四結論

一本件各請求について

1 第一次的請求について

2 第二次的請求について

3 第三次的請求について

二民訴法一九八条二項の申立て(仮執行に基づく原状回復及び損害賠償請求)について

三仮執行宣言の申立てについて

四結語

裁判所の表示

別紙⑯A 成立に争いのない書証等一覧表

別紙⑯B 成立に争いのある書証等一覧表

別紙⑰ 被害児のその後の状況等一覧表

別紙⑱(一)A 死亡被害児(その一)の認定損害額一覧表

別紙⑱(二)A 死亡被害児(その二)の認定損害額一覧表

別紙⑱(三)A 死亡被害児(その三)の認定損害額一覧表

別紙⑱(四)A Aランク生存被害児の認定損害額一覧表

別紙⑱(五)A Bランク生存被害児の認定損害額一覧表

別紙⑱(六)A Cランク生存被害児の認定損害額一覧表

別紙⑱(一)B 死亡被害児(その一)の逸失利益計算表

別紙⑱(二)B 死亡被害児(その二)の逸失利益計算表

別紙⑱(四)B Aランク生存被害児の逸失利益計算表

別紙⑱(五)B Bランク生存被害児の逸失利益計算表

別紙⑱(六)B Cランク生存被害児の逸失利益計算表

別紙⑱(二)C 死亡被害児(その二)の介護(助)費計算表

別紙⑱(三)C 死亡被害児(その三)の介護費計算表

別紙⑱(四)C Aランク生存被害児の介護費計算表

別紙⑱(五)C Bランク生存被害児の介護費計算表

別紙⑱(六)C Cランク生存被害児の介護費計算表

別紙⑱(一)D 死亡被害児(その一)の損益相殺額計算表

別紙⑱(二)D 死亡被害児(その二)の損益相殺額計算表

別紙⑱(四)D Aランク生存被害児の損益相殺額計算表

別紙⑱(五)D Bランク生存被害児の損益相殺額計算表

別紙⑱(六)D Cランク生存被害児の損益相殺額計算表

別紙⑲ 死亡被害児の相続による承継額一覧表 (1)ないし(3)

昭和六二年(ネ)第二〇二七号、平成元年(ネ)第三一五号事件控訴人、

昭和六二年(ネ)第二〇五四号事件被控訴人、

平成五年(ネ)第六二二号、

同年(ネ)第一二九八号事件附帯被控訴人(一審被告)

右代表者法務大臣

三ケ月章

右訴訟代理人弁護士

稲垣喬

右指定代理人

赤西芳文

外一〇名

昭和六二年(ネ)第二〇二七号事件被控訴人、

平成五年(ネ)第六二二号事件附帯控訴人

(一審原告番号二)

高倉米一

右特別代理人

高倉弘

同(一審原告番号三)

河島豊

右特別代理人

河島二郎

同(一審原告番号四)

塩入信子

右特別代理人

塩入久

同(一審原告番号五)

秋山善夫

右特別代理人

秋山圭佑

同(一審原告番号六)

吉田理美

右特別代理人

吉田富子

同(一審原告番号七の一・一審原告番号七増田裕加子原審承継人)

増田肇

同(一審原告番号七の二・一審原告番号七増田裕加子原審承継人)

増田恭子

同(一審原告番号八)

清原ゆかり

右特別代理人

清原敏信

同(一審原告番号九)

小林誠

右特別代理人

小林百合子

同(一審原告番号一〇の一・一審原告番号一〇幸長睦子原審承継人)

幸長好雄

同(一審原告番号一〇の二・一審原告番号一〇幸長睦子原審承継人)

幸長律子

同(一審原告番号一一)

鈴木旬子

右特別代理人

鈴木幸吉

同(一審原告番号一二稲脇豊和当審承継人)

稲脇正

同(一審原告番号一二稲脇豊和当審承継人)

稲脇ミツ子こと

稲脇みつ子

同(一審原告番号一三)

山本治男

右特別代理人

山本和夫

同(一審原告番号一四)

大喜多(旧姓上野)雅美

同(一審原告番号一五)

金井眞起子

右特別代理人

金井芳雄

同(一審原告番号一六)

前田憲志

右特別代理人

前田昌男

同(一審原告番号一七)

上田純子

右特別代理人

上田義長

同(一審原告番号一八)

藤本章人

同(一審原告番号一九)

仲本知加

右特別代理人

仲本洋二

同(一審原告番号二〇森井規雄原審承継人)

森井富美子

同(一審原告番号二一)

末廣美佳

右特別代理人

末廣英昭

同(一審原告番号二二)

四方正太

同(一審原告番号二三)

三好一美

同(一審原告番号二四)

三好道代

同(一審原告番号二六、一審原告番号二五毛利鴻当審承継人)

毛利舜子

同(一審原告番号二五毛利鴻当審承継人)

稲葉由紀子

同(一審原告番号二五毛利鴻当審承継人)

小田京子

同(一審原告番号二五毛利鴻当審承継人)

毛利和彦

昭和六二年(ネ)第二〇二七号、平成元年(ネ)第三一五号被控訴人、

柳澤こと

平成五年(ネ)第六二二号附帯控訴人(一審原告番号二七)

栁澤康男

昭和六二年(ネ)第二〇二七号被控訴人、

柳澤こと

平成五年(ネ)第六二二号附帯控訴人(一審原告番号二八)

栁澤二美子

同(一審原告番号二九)

常信勇

同(一審原告番号三〇)

常信知子

同(一審原告番号三一)

三原政行

同(一審原告番号三二)

三原洋子

同(一審原告番号三三)

中尾巖

同(一審原告番号三四)

中尾八重子

同(一審原告番号三五、一審原告番号三六田邉美好子当審承継人)

田邉幾雄

同(一審原告番号三七)

田邉博法

同(一審原告番号三九・一審原告番号三八福山靜代原審承継人)

大木清子

同(一審原告番号四〇・一審原告番号三八福山靜代原審承継人)

桑原恵子

同(一審原告番号四一・一審原告番号三八福山靜代原審承継人)

前田訓代

同(一審原告番号四二・一審原告番号三八福山靜代原審承継人)

中野節子

昭和六二年(ネ)第二〇五四号事件控訴人(一審原告番号四三)

澤﨑慶子

右特別代理人

澤﨑幸雄

昭和六二年(ネ)第二〇五四号事件控訴人(一審原告番号四四)

髙島よう

右特別代理人

髙島慎五

昭和六二年(ネ)第二〇二七号事件被控訴人、

平成五年(ネ)第六二二号事件附帯控訴人(一審原告番号四五)

横山信二

右特別代理人

横山一郎

同(一審原告番号四六)

大橋敬規

右特別代理人

大橋萬里子

同(一審原告番号四七)

木村尚孝

右特別代理人

木村武史

同(一審原告番号四八)

田村秀雄

右特別代理人

田村正

同(一審原告番号四九)

西晃市

右特別代理人

西晃正

同(一審原告番号五〇)

矢野さまや

右特別代理人

矢野邦雄

同(一審原告番号五一菅美子原審承継人)

菅ユキエ

同(一審原告番号五二)

高橋勝巳

同(一審原告番号五三)

原雅美

同(一審原告番号五四)

池上圭子

昭和六二年(ネ)第二〇二七号事件被控訴人、

平成五年(ネ)第一二九八号事件附帯控訴人(一審原告番号五五)

小川昭治

昭和六二年(ネ)第二〇二七号事件被控訴人、

平成五年(ネ)第六二二号事件附帯控訴人(一審原告番号五六)

白井良子

同(一審原告番号五七)

野々垣幸一

同(一審原告番号五八)

野々垣久美子

同(一審原告番号五九)

原竹彦

同(一審原告番号六〇)

原須磨子

同(一審原告番号六一)

垣内光次

同(一審原告番号六二)

垣内千代

同(一審原告番号六三)

山本昇

同(一審原告番号六四)

山本幸子

同(一審原告番号六五)

安田豊

同(一審原告番号六六)

安田明美

同(一審原告番号六七)

藤井英雄

同(一審原告番号六八)

藤井鈴恵

右七〇名訴訟代理人弁護士

松井昌次

中村康彦

木村保男

木村奉明

石川元也

井関和雄

伊多波重義

井上善雄

大深忠延

金子武嗣

木下準一

腰岡實

小林紀一郎

小林淑人

辻公雄

中坊公平

七尾良治

南部孝男

平岡延子

峯田勝次

守井雄一郎

柳谷晏秀

山崎昌穂

若林正伸

山崎満幾美

吉井正明

折田泰宏

寺田武彦

岡豪敏

河村利行

山崎優

福原哲晃

池田啓倫

向山欣作

島田和俊

西垣昭利

藤原猛爾

天野勝介

山本恵一

石田法子

井上隆彦

松尾道子

竹嶋健治

濱岡峰也

今村峰夫

主文

一  原判決を次のとおり変更する。

1  一審原告ら(当審承継人らを含む。以下同様)の第一次的請求(一審原告らが当審で拡張した請求を含む。)をいずれも棄却する。

2  一審被告は、一審原告金井眞起子、同池上圭子を除く一審原告らに対し、それぞれ、別紙②「認容金額一覧表」(本判決第一分冊末尾添付)の同一審原告らに対応する「認容金額」欄記載の各金員を支払え。

3  一審原告金井眞起子、同池上圭子の第二次的請求並びに同一審原告ら及び同四方正太を除く一審原告らのその余の第二次的請求(一審原告らが当審で拡張した請求を含む。)をいずれも棄却する。

4  一審原告金井眞起子、同池上圭子の第三次的請求並びに同一審原告ら及び同四方正太を除く一審原告らの第三次的請求(一審原告らが当審で拡張した請求を含む。)のうち、前記2の「認容金額」を超える部分の請求をいずれも棄却する。

二  別紙③「仮執行に基づく給付の返還額一覧表」(本判決第一分冊末尾添付)の各一審原告らは、一審被告に対し、同一覧表の「返還額」欄記載の各金員及びこれに対する一審原告柳澤康男については昭和六二年一二月一九日から、その余の一審原告らについては同年一〇月二日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  訴訟費用は、一、二審を通じ、一審原告金井眞起子、同池上圭子と一審被告との間においては、右一審原告らに生じた費用及び一審被告に生じた費用は右一審原告らの負担とし、一審原告四方正太と一審被告との間においては、右一審原告に生じた費用及び一審被告に生じた費用は一審被告の負担とし、一審原告金井眞起子、同池上圭子、同四方正太を除くその余の一審原告らと一審被告との間においては、右一審原告らに生じた費用を三分し、その二を一審被告の負担とし、その余は各自の負担とする。

四  この判決の一項の2は、一審原告澤﨑慶子、同髙島ようの認容金額の三分の一に関する部分に限り、同二項は、一審原告金井眞起子、同池上圭子に関する部分に限り、それぞれ仮に執行することができる。

事実

第一節当事者の求めた裁判

第一昭和六二年(ネ)第二〇二七号損害賠償請求控訴、平成元年(ネ)第三一五号民訴一九八条二項に基づく損害賠償請求各事件

一一審被告

1 原判決中、一審被告の敗訴部分を取り消す。

2 一審原告ら(但し、一審原告澤﨑慶子、同髙島ようを除く。)の請求をいずれも棄却する。

3 別紙④「仮執行に基づく支払額等一覧表」(本判決第三分冊末尾添付)の一審原告らは、一審被告に対し、同一審原告らに対応する同一覧表の「支払額」欄記載の各金員及び右各金員に対する右一審原告らに対応する同一覧表の「支払日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年五分の割合による各金員を支払え。

4 訴訟費用は、一、二審とも、一審原告らの負担とする。

5 3についての仮執行宣言

二一審原告澤﨑慶子、同髙島ようを除く一審原告ら

1 一審被告の控訴を棄却する。

2 控訴費用は一審被告の負担とする。

第二昭和六二年(ネ)第二〇五四号損害賠償請求控訴事件

一一審原告澤﨑慶子、同髙島よう

1 原判決中、一審原告澤﨑慶子及び同髙島ようの各敗訴部分を取り消す。

2 一審被告は、一審原告澤﨑慶子及び髙島ように対し、それぞれ、別紙⑤「請求額等一覧表」(本判決第三分冊末尾添付)の同一審原告らに対応する「請求金額」欄記載の各金員及び右各金員に対する「遅延損害金起算日」欄記載の日から支払済みまで年五分の割合による各金員を支払え。

3 訴訟費用は、一、二審とも、一審被告の負担とする。

4 仮執行宣言

二一審被告

1 一審原告澤﨑慶子及び同髙島ようの控訴(当審における拡張請求を含む。)をいずれも棄却する。

2 控訴費用は一審原告澤﨑慶子及び同髙島ようの各負担とする。

3 仮執行免脱宣言

第三平成五年(ネ)第六二二号附帯控訴事件

一一審原告澤﨑慶子、同髙島よう、同小川昭治を除く一審原告ら

1 原判決中、一審原告澤﨑慶子、同髙島よう、同小川昭治を除く一審原告ら関係部分を次のとおり変更する。

一審被告は、一審原告澤﨑慶子、同髙島よう、同小川昭治を除く一審原告らに対し、それぞれ、別紙⑤「請求額等一覧表」の右一審原告らに対応する「請求金額」欄記載の各金員及び右各金員に対する「遅延損害金起算日」欄記載の日から支払済みに至るまで年五分の割合による各金員を支払え。

2 訴訟費用は、一、二審とも、一審被告の負担とする。

二一審被告

1 一審原告澤﨑慶子、同髙島よう、同小川昭治を除く一審原告らの附帯控訴をいずれも棄却する。

2 附帯控訴費用は、一審原告澤﨑慶子、同髙島よう、同小川昭治を除く一審原告らの各負担とする。

第四平成五年(ネ)第一二九八号附帯控訴事件

一一審原告小川昭治

1 原判決中、一審原告小川昭治関係部分を次のとおり変更する。

一審被告は、一審原告小川昭治に対し、別紙⑤「請求額等一覧表」の同人に対応する「請求金額」欄記載の金員及びこれに対する「遅延損害金起算日」欄記載の日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は、一、二審とも、一審被告の負担とする。

二一審被告

1 一審原告小川昭治の附帯控訴を棄却する。

2 附帯控訴費用は一審原告小川昭治の負担とする。

第二節当事者の主張

第一当事者(請求原因1)及び事故の発生(請求原因2)並びにこれらに対する認否、反論について〈省略〉

第二因果関係(請求原因3)及びこれに対する認否、反論について〈省略〉

(第一次的請求)

第三安全配慮(確保)義務違反による債務不履行責任及び不法行為責任(請求原因4)並びにこれに対する認否、反論について〈省略〉

(第二次的請求)

第四国家賠償法に基づく責任(請求原因5)及びこれに対する認否、反論について〈省略〉

(第三次的請求)

第五損失補償責任(請求原因6)及びこれに対する認否、反論について〈省略〉

第六損害(損失)(請求原因7)及びこれに対する認否、反論について〈省略〉

第七相続による権利の承継(請求原因8)及びこれに対する認否について〈省略〉

第八一審原告らの請求の要約〈省略〉

第九違法性阻却事由もしくは一審被告の責めに帰すべからざる事由の存在(抗弁1)及びこれに対する認否、反論について〈省略〉

第一〇時効及び除斥期間(抗弁2)並びにこれに対する認否、反論について〈省略〉

第一一損益相殺等(抗弁3)、予防接種法に基づく給付と本件請求との調整(同4)、損害額算定に当たり考慮されるべき減額事由(同5)及びこれらに対する認否、反論について〈省略〉

第一二時効の援用の不当性・権利濫用性(再抗弁1)、民法七二四条後段を本件に適用すべきでない特段の事情(同2)、意思無能力者による訴訟提起の不能(同3)、裁判外の権利行使による損害賠償請求権の除斥期間内の保存(同4)、損害賠償債務の承認(同5)及びこれらに対する認否、反論について〈省略〉

第三節証拠関係〈省略〉

理由

第一事実認定に供した書証等の成立について〈省略〉

第二当事者(請求原因1)について

次のとおり補正するほか、原判決の理由説示(全六冊の四の四〇二丁裏九行目の初めから同四〇八丁表五行目の終わりまで)記載のとおりであるから、これを引用する。

(被害児番号9幸長睦子関係)

原判決四〇三丁裏四行目の「甲⑩の一」を「甲F⑩の一」と改める。

(被害児番号10鈴木旬子関係)

同四〇三丁裏一二行目の「認められる。」の後に次のとおり付加する。

「なお、一審被告は、旬子については、接種日を特定する客観的な資料がないと主張するが、右証拠によって接種日は特定されているものと認めるべきであるから、一審被告の主張は理由がない。」

(被害児番号15前田憲志関係)

同四〇四丁表一二行目の「甲F⑯の一、」の後に「三、」を付加し、同裏二行目の「兵庫」を「兵庫区」と改める。

(被害児番号23毛利孝子関係)

同四〇五丁表一〇行目の「認められ、」の後に「甲Fの一、」を付加する。

(被害児番号24柳澤雅光関係)

同四〇五丁裏二行目の「甲F、の一」の後に「(但し、原審書証目録上の表示は甲F二七の一と略称)」を付加する。

(被害児番号28田邉恵右関係)

同四〇五丁裏一二行目の「甲Fの一、」の後に「乙の一、」を付加し、同四〇六丁表三行目の「九か月」を「八か月」と改める。

(被害児番号40原雅美関係)

同四〇七丁裏二行目の「『実施者』、」を「『実施者』は大東市、」と改める。

(被害児番号41池上圭子関係)

同四〇七丁裏九行目から一〇行目の「『実施者』は」の後に「同法五条により」を付加する。

(被害児番号42小川健治関係)

同四〇七丁裏一二行目の「甲Fの一、」の後に「(但し、原審書証目録上の表示は甲F五五の一と略称)」を付加する。

第三事故の発生(請求原因2)について

一被害児澤﨑慶子及び同髙島ようを除く本件各被害児について

次のとおり補正するほか、原判決の理由説示(全六冊の四の四〇八丁表六行目から同四三二丁裏一三行目まで、但し、澤﨑慶子及び髙島ように関する部分を除く。)のとおりであるから、これを引用する。

(被害児番号1高倉米一関係)

原判決四〇八丁裏二行目の「脳性麻萎」を「脳性麻痺」と改め、同八行目の「乙②の四、」の後に「五、」を付加する。

(被害児番号2河島豊関係)

同四〇九丁表五行目から六行目の「証人河島輝子の証言」を「一審原告河島豊法定代理人河島輝子の尋問の結果及び証人河島輝子の証言(いずれも原審)」と改める。

(被害児番号3塩入信子関係)

同四〇九丁表一〇行目の「善感の判定」を「善感の有無の判定」と、同裏五行目の「同四四年」から同八行目の「されなかったこと、」までを「昭和四四年に左片麻痺の治療のため左足関節の手術を受けたこと、」と、それぞれ改める。

(被害児番号10鈴木旬子関係)

同四一二丁表一二行目の「転医」を「佐志医院、井上病院への転医」と改める。

(被害児番号11稲脇豊和関係)

同四一二丁裏六行目から七行目の「受けており、現在も心身の障害があること」を「受けていたこと、その後、平成二年七月二二日に死亡したこと」と、同九行目の「検甲F⑫の一、二」を「検甲F⑫の一ないし四」と、それぞれ改める。

(被害児番号13大喜多雅美関係)

同四一三丁裏七行目の「左足の麻痺」を「右足の麻痺」と改める。

(被害児番号15前田憲志関係)

同四一五丁表一行目の「入院時診断」を「入院時診断名」と改める。

(被害児番号16上田純子関係)

同四一五丁表八行目の「一旦」から同九行目の「再度あがり、」までを削除し、同行の「意識の薄れた状態」の前に「昭和四一年四月三〇日、」を付加し、同一〇行目から一一行目の「神戸市立中央病院」を「神戸市立中央市民病院」と改める。(なお、原判決中に「神戸市立中央病院」とあるのは、以下同様に改めるものとする。)

(被害児番号19森井規雄関係)

同四一六丁裏四行目の「六月一三日」の前に「昭和三三年」を付加し、同一〇行目の「境界域」を「境界値」と改める。

(被害児番号24柳澤雅光関係)

同四二〇丁表四行目の「できていたこと、」の後に「大西小児科医院、」を付加する。

(被害児番号33大橋敬規関係)

同四二四丁裏五行目の「敬規が、」の後に「同2(二)ないし(四)については、」を、同四二五丁表八行目の「事実は、」の後に「甲Dの六、」を、それぞれ付加する。

(被害児番号37矢野さまや関係)

同四二六丁裏一三行目の「同年八月下旬関西医大にて」を「同年一〇月下旬関西医大病院にて」と改める。

(被害児番号42小川健治関係)

同四二九丁裏一行目の「甲Fの一の後に「(但し、原審書証目録上は甲F五五の一と略称)」を付加する。

(被害児番号44原篤関係)

同四三〇丁裏一行目の「、六」を削除する。

(被害児番号46山本実関係)

同四三一丁裏二行目の「咽頭扁桃頭肥大」を「咽頭扁桃肥大」と、同一一行目の「著名」を「著明」と、それぞれ改める。

二被害児番号30澤﨑慶子について

原判決の原告各論三〇の2の(一)ないし(八)の事実のうち、慶子が、昭和三九年四月二六、七日ころ、杉田診療所で診察を受け、同診療所で口内炎と診断されたこと、同年五月五日ころに高熱となり、同月九日林診療所で診察を受け、急性化膿性口内炎と診断されたこと、同月一〇日から同月一八日まで新大阪病院に入院し治療を受けたこと、その間元気がなかったこと、同病院では「高張性脱水症(緩徐型)、壊疽性口内炎及び鵞口瘡を伴う脱水状態」と診断されたこと、同病院の診療録には脱水状態悪化、体重減少、尿回数の減少、全身状態悪化、嗜眠状態、不眠不安となるとの既往の聴取記載があること、同年一〇月三日から同月一七日まで再び同病院に入院して治療を受けたこと、昭和四三年六月ころから大阪市大病院に通院していたこと、同病院で「精神発達遅滞、点頭けいれん」と診断されたこと、その後、発熱、けいれんの大発作があったため、昭和四四年二月二四日ころから同年五月一九日ころまで為水病院へ入院したこと、同病院では精神薄弱、てんかんと診断され、精神薄弱の程度は重度一級と思われるとされたことは当事者間に争いがなく、原告各論三〇の2のその余の事実は、甲Dの四ないし七、甲Fの一ないし三、証人澤﨑信子(原審及び当審)、同塚本祐壮(当審)の各証言により、これを認める。

なお、甲Dの四、五によれば、慶子は、昭和四〇年九月三日から同年一二月二日までの間及び昭和四一年一月二五日にも大阪市大病院小児科で治療を受けており、その際には、「脳性麻痺の疑い」と診断されていることが認められる。

三被害児番号31髙島ようについて

原判決の原告各論三一の2の事実のうち、ようが精神薄弱の診断を受けていることは当事者間に争いがなく、その余の事実は、甲Fの一、二、一審原告髙島よう法定代理人髙島慎五(原審)の尋問の結果により、これを認める。

第四因果関係(請求原因3)について

一因果関係に争いのない被害児について

本件各被害児のうち、以下の二〇名については、本件各事故が本件各予防接種に起因することについて、当事者間に争いがない。

被害児番号5 吉田理美

同8 小林誠

同13 大喜多雅美

同14 金井眞起子

同16 上田純子

同17 藤本章人

同20 末廣美佳

同22 三好元信

同23 毛利孝子

同24 柳澤雅光

同25 常信貴正

同26 三原繁

同27 中尾仁美

同29 福山豊子

同34 木村尚孝

同36 西晃市

同39 高橋勝巳

同43 野々垣一世

同47 安田美保

同48 藤井崇治

二因果関係の判断基準及び各種ワクチンによる副作用について

次のとおり補正するほか、原判決の理由説示(全六冊の四の四三四丁表四行目の初めから同四四七丁表一〇行目の終わりまで)記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決四三六丁表二行目の「経験則」から同四三八丁表五行目の「いうべきである。」までを次のとおり改める。

「右蓋然性の有無は、前記白木証人の提示する四条件をその判断の枠組みとし、右四条件を充足するかどうかによって決するのが相当である。何故なら、白木証人の提唱する右四条件は、予防接種による副反応事故の発生機序については、ワクチン製剤の中の複雑な諸因子や予防接種を受ける側の個体の条件の複雑さなどが絡み合って、未だ医学的に十分な解明がなされているとはいえない状況の中で、経験科学としての医学の立場から、科学的、学問的に実証性や妥当性のある因果関係の判断基準として提唱されたものであって、その基準には十分合理性があると考えられるからである。

ところで、一審原告らは、他原因の存在については、一審被告の立証責任に属する事項と解すべきであると主張する。

しかしながら、不法行為に基づく損害賠償請求(あるいは損失補償請求)における因果関係の存在、言い換えれば高度の蓋然性の存在は、権利の発生を根拠づける事実の一内容として一審原告らがその存在につき証明責任を負担すべきものであることは明らかであるところ、他原因の存否の判断は、右蓋然性の有無の判断といわば表裏の関係にあるものであって、それ自体は独立の証明対象となる事由ではないから、他原因の不存在を一審被告の立証責任に属すべき事項と解することはできないというべきである。

もっとも、一審被告から他原因となりうる余地のある事由の存在が主張された場合には、一審原告らが本件各予防接種と本件各事故との間に高度の蓋然性があることを証明する必要上、結果として、一審原告らにおいて、一審被告が他原因として主張する事由が存在しないことを事実上立証する必要が生ずるが、それは、他原因の不存在の立証責任が一審原告らの負担とされるからではなく、一審原告らが本来負担している高度の蓋然性の存在を証明する実際上の必要性から生ずるものであって、そのことから他原因の不存在の立証責任が一審原告らに帰属するということになるわけではない。また、その場合には、一審原告らが行うべき高度の蓋然性の証明の程度は、他原因と考えうる事由が一切存在しないということにまで及ぶわけではなく、当該被害児に生じた症状が一審被告の主張する他原因に基づくものであると考えるよりは本件各予防接種によるものと考える方が経験則上合理的と解される程度に証明すれば足りるものであるから、一審原告らに、特に不可能な立証を強いることにはならないというべきである。」

2  同四四六丁裏八行目から九行目の「発症される」を「発症させる」と、同九行目から一〇行目の「てんかん発作」を「てんかん素因を原因とするてんかん発作」と、それぞれ改める。

三因果関係を否認された本件各被害児の因果関係の有無について

1  被害児澤﨑慶子及び同髙島ようを除く本件各被害児について

次のとおり補正するほか、原判決の理由説示(全六冊の四の四四七丁表一二行目の初めから同五二一丁表六行目の終わりまで、但し、澤﨑慶子及び髙島ように関する判断部分を除く。)のとおりであるから、これを引用する。

(被害児番号1高倉米一関係)

原判決四四七丁裏九行目の「翌四月六日」を「翌四月一六日」と、同四四八丁表六行目の「前示①、②の各要件」を「白木四条件のうちの①、④の条件」と、同八行目から九行目の「以下、③の要件である他原因の不存在の点について検討するに、」を「そこで、前記②、③の条件について検討するに、」と、同四四九丁表一行目の「けいれん性素因のみに起因するものでないもの」を「けいれん性素因が直接の原因となって発症したものとは認められない」と、同三行目の「③の要件」を「白木四条件のうちの②、③の条件」と、それぞれ改める。

(被害児番号2河島豊関係)

同四四九丁裏一〇行目の「前示②の要件」を「白木四条件のうちの①の条件」と、同四五〇丁表五行目の「前示①の要件」を「白木四条件のうちの④の条件」と、同六行目から七行目及び同裏一二行目の「前示③の要件」をいずれも「白木四条件のうちの②、③の条件」と、それぞれ改める。

(被害児番号3塩入信子関係)

同四五一丁裏一〇行目の「前示②の要件」を「白木四条件のうちの①の条件」と、同四五二丁表六行目の「当裁判所の判断を併せ考えると、前示①の要件」を「発生機序、潜伏期を併せ考えると、白木四条件のうちの④の条件」と、同一〇行目の「要件③」を「白木四条件のうちの②、③の条件」と、それぞれ改める。

(被害児番号4秋山善夫関係)

同四五三丁表一一行目の「前示②の要件」を「白木四条件のうちの①の条件」と、同裏四行目の「認め、前示①、③の要件」を「認められる。したがって、善夫については、白木四条件のうちの②ないし④の条件」と、それぞれ改める。

(被害児番号6増田裕加子関係)

同四五四丁裏一二行目の「前示②の要件」を「白木四条件のうちの①の条件」と、同四五五丁表六行目から七行目の「前示①、③の各要件」を「白木四条件のうちの②ないし④の条件」と、同裏末行の「唯一の原因」から同四五六丁表二行目の「不十分であり、」までを「直接の原因であるとまでは述べていないのであるから、右の薬剤使用が直ちにてんかん発作の原因であると推認することは困難であるというべきであり、」と、それぞれ改める。

(被害児番号7清原ゆかり関係)

同四五七丁表末行の「出る」を「早く出る」と、同四五八丁表八行目の「前示①ないし③の三要件」を「白木四条件」と、それぞれ改める。

(被害児番号9幸長睦子関係)

同四六〇丁表五行目から六行目の「前示①ないし③の三要件」を「白木四条件」と改める。

(被害児番号10鈴木旬子関係)

同四六二丁表四行目の「教化不良性」を「教化不能性」と、同末行の「前示の要件②」を「白木四条件の①の条件」と、同裏一〇行目から一一行目の「短期であるとの判断を併せ考えると、」を「短期となる可能性もあり得ることを考慮すると、」と、同一二行目の「前記要件の①、③」を「白木四条件のうちの②ないし④の条件」と、それぞれ改め、同四六三丁表一行目と二行目の間に次のとおり付加する。

「一審被告は、種痘の発熱が通常接種後四日目以降に発生することを前提に、旬子はたまたま接種直後にてんかん発作を起こしたもので、旬子のその後の症状はてんかん精神薄弱の自然経過と考えるべきであると主張するが、種痘の潜伏期がいかなる場合においても四日以降となるとまでは断定できないし、前記認定のような旬子の症状経過を総合的に判断すると、旬子の症状は、たまたま本件予防接種直後に素因として有していたてんかんが発現したと考えるよりは本件予防接種によるものと推認する方が経験則上も合理的であるから、一審被告の主張は採用できない。」

(被害児番号11稲脇豊和関係)

同四六三丁表末行の「同月夕方」を「同月一五日夕方」と、同四六四丁表四行目の「豊和には前記①ないし③の三要件」を「豊和は、白木四条件」と、それぞれ改める。

(被害児番号12山本治男関係)

同四六五丁裏一行目の「前示①ないし③の三要件」を「白木四条件」と、同四行目の「弛緩」を「弛緩性麻痺」と、それぞれ改める。

(被害児番号15前田憲志関係)

同四六六丁裏一行目の「筋トーマス異常」を「筋トーヌス異常」と、同四六七丁表二行目の「前示①ないし③の三要件」を「白木四条件」と、それぞれ改める。

(被害児番号18仲本知加関係)

同四六九丁裏七行目の「前示①ないし③の三要件」を「白木四条件」と、同四七一丁裏二行目の「寄形」を「奇形」と、同五行目の「援用」を「採用」と、それぞれ改める。

(被害児番号19森井規雄関係)

同四七二丁裏三行目の「右下肢」を「左下肢」と、四七五丁裏五行目の「前示①ないし③の三要件」を「白木四条件」と、それぞれ改める。

(被害児番号21四方正太関係)

同四七七丁表末行から同裏一行目の「前示①ないし③の三要件」を「白木四条件」と改める。

(被害児番号28田邉恵右関係)

同四七九丁表八行目から九行目の「右接種後」を「右接種の」と、同四八〇丁表一〇行目の「前示①ないし③の三要件」を「白木四条件」と、同裏五行目の「前示三2(1)」を「前示三2(一)」と、それぞれ改め、同四八一丁表三行目の「『原因不明』の」から同五行目の「とおりである。」までを次のとおり改める。

「原因不明の突然死の存在があるからといって、前記に認定したような恵右の発症から死亡までの経過を総合的に判断すると、恵右が本件予防接種以外の他原因によって死亡したと推認するのが相当でないことはいうまでもないから、恵右は、白木四条件のうちの②、③の条件も充足するというべきである。」

(被害児番号32横山信二関係)

同四八九丁裏二行目の「同三二」を「同32」と改め、同四九一丁表二行目の「存せず」から同六行目の「できない。」までを次のとおり改める。

「存しないことが認められ、また、右甲Dの四の診断書の記載は、その作成日付が昭和四八年一月二九日付であって、もし、右記載がカルテの内容に基づいて記載されたのであれば、当然同医師の作成したそれ以前のカルテである昭和四五年一二月一一日付の診断書(甲Dの三)にも同趣旨の記載があるはずであるところ、右カルテにはそうした記載がない。したがって、これらの点を総合的に判断すると、右甲Dの四の診断書に『生後六か月点頭てんかん症状発症』との記載がどういう経過でなされたのかは必ずしも明確ではなく、右の記載から直ちに信二が本件予防接種以前から点頭てんかんの症状を発症していた事実を認めるのは困難というべきである。」

同一一行目から一二行目の「本件②接種後にも同様のけいれん発作を起こし、」を削除し、同裏六行目の「証言している。」の後に「)」を付加し、同六行目から七行目の「前示①ないし③の三要件」を「白木四条件」と改める。

(被害児番号33大橋敬規関係)

同四九一丁裏一二行目の「同三三」を「同33」と、同四九二丁表七行目の「蛋白尿」を「尿蛋白」と、同一一行目の「同旨の」を「敬規の」と、同四九三丁表三行目の「(三混ワクチン)」を「(種痘)」と、同四九四丁表七行目の「前示①、②の要件」を「白木四条件のうちの①、④の条件」と、同八行目の「同③の要件」を「白木四条件のうちの②、③の条件」と、それぞれ改める。

(被害児番号35田村秀雄関係)

同四九六丁表一行目の「同三五」を「同35」と、同四九六丁表八行目から九行目の「津山嘉賀」を「津山喜賀」と、同裏一〇行目の「人所対象者」を「入所対象者」と、同四九七丁表四行目から五行目の「前示①ないし③の三要件」を「白木四条件」と、それぞれ改め、同裏一一行目と一二行目の間に次のとおり付加する。

「なお、一審被告は、秀雄の精神薄弱は、小頭症によるものと考えるべきであると主張するが、甲Fの三、六、七によれば、小頭症とは、頭囲が同年齢児の平均値より標準偏差の三倍を引いた値より小さいものをいうとされ、便宜上一〇歳までは同年齢の平均値より五センチメートル以上小さいものとされているところ、秀雄の頭囲は四歳時において46.4センチメートルで、平均値より2.4センチメートル小さいだけであって小頭症とはいえないことが認められ、他に秀雄が小頭症であることを認めるに足りる証拠はないから、一審被告の主張は理由がない。」

(被害児番号37矢野さまや関係)

同四九八丁表一行目の「同三七」を「同37」と改め、同五〇〇丁表四行目の「(従って、脳の縮みがあること)」を削除し、同五〇一丁表一〇行目の「前示①ないし③の三要件」を「白木四条件」と改める。

(被害児番号38菅美子関係)

同五〇一丁表一行目の「同三八」を「同38」と、同五〇三丁表三行目から四行目の「前示②の要件」を「白木四条件のうちの①の条件」と、同一〇行目の「前示①、③の要件」を「白木四条件のうちの②ないし④の条件」と、同五〇四丁表二行目の「これが」から同三行目の「説示したとおりであり、」までを「前記に認定したような美子の発症から死亡までの経過が美子の素因としてのてんかんによるものであると推認するのは困難であり、」と、それぞれ改める。

(被害児番号40原雅美関係)

同五〇四丁表九行目の「同四〇」を「同40」と、同一〇行目から一一行目の「乙の一ないし三」を「乙の一、二」と、それぞれ改め、同五〇五丁表八行目から九行目の「同五一年」から同一一行目の「されていること、」までを削除し、同裏一〇行目の「前示①ないし③の三要件」を「白木四条件」と改める。

(被害児番号41池上圭子関係)

同五〇六丁表一二行目の「同四一」を「同41」と、同裏一行目の「同Fの一ないし三」を「同Fの一、二」と、同五〇七丁表八行目の「弱視」を「左弱視」と、同五〇八丁表九行目から一〇行目の「前示①ないし③の三要件」を「白木四条件」と、それぞれ改める。

(被害児番号42小川健治関係)

同五〇八丁表末行の「同四二」を「同42」と、同五〇九丁表一行目、同五一〇丁表三行目及び八行目の「ミオクロニー様」をいずれも「ミオクローヌス(ミオクロニー)様」と、同五〇九丁裏一一行目の「同年」を「昭和四五年」と、同五一〇丁裏一二行目の「前示①ないし③の三要件」を「白木四条件」と、それぞれ改め、同末行の「相当である。」を次のとおり改める。

「相当であるが、健治の死亡と本件予防接種との間には白木四条件のうちの②ないし④の条件が充足されていないものといわざるを得ない。」

(被害児番号44原篤関係)

同五一一丁裏三行目の「同四四」を「同44」と、同五一三丁裏一一行目の「前示①ないし③の三要件」を「白木四条件」と、それぞれ改める。

(被害児番号45垣内陽告関係)

同五一四丁表一一行目の「同四五」を「同45」と、同五一六丁裏末行の「下痢によって」を「下痢症状の憎悪によって」と、同五一七丁裏三行目の「前示①ないし③の三要件」を「白木四条件」と、それぞれ改める。

(被害児番号46山本実関係)

同五一七丁裏六行目の「同四六」を「同46」と、同五一八丁表五行目の「診断を受け、翌二〇日には、」を「診断を受けたこと、翌二〇日は、下村医院に転院し、同医院で、」と、同八行目の「テトラサイクロンシップ」を「テトラサイクロンシロップ」と、同一〇行目の「右医師」を「下村医師」と、同五二〇丁表一行目の「森井規夫について説示した三つの機序」を「被害児番号19森井規雄について説示した二つの機序」と、同二行目の「森井規夫」を「森井規雄」と、同裏四行目から五行目の「前記三要件」を「白木四条件」と、同一一行目から一二行目の「唯一のものとはいえないこと」を「それが実の死亡の直接の原因であるとまでは断定していないこと、」と、それぞれ改め、同五二一丁表二行目の「実の死因が」から同四行目の「証明がある」までを次のとおり改める。

「実の発症から死亡までの経過は、麻疹がその直接の原因であるとするよりも、前記認定のとおり本件予防接種を原因とするものであると推認する方が合理的というべきである。」

2  被害児番号30澤﨑慶子について

前記第三の二で認定した事実、〈書証番号略〉、証人白木博次(原審)、同塚本祐壮、同田中昌人(いずれも当審)、同澤﨑信子(原審及び当審)の各証言(但し、澤﨑信子の後記の採用できない供述部分を除く。)によると、慶子の母澤﨑信子は、慶子の妊娠初期から順調良好で正常分娩にて慶子を出産し、生下時の体重は3.6キログラムであって、母子ともに健康であったこと、慶子の成育状況は、生後二三日目で体重3.9キログラム、胸囲四〇センチメートル、身長五八センチメートル、同三か月目で体重5.6キログラム、身長五九センチメートルであり、本件予防接種の直前である生後一〇か月二二日に当たる昭和三八年三月一七日に東住吉保健所で受けた検診の際の母子手帳の記載にも、「体重7.900kg、身長78.5cm」との記載はあるが、精神発達・運動機能が特に遅れている旨の記載はないこと、知能面、運動面の発達状況は、笑うようになったのが生後七か月、首が座ったのが同八か月で、一歳時において、座ること、這うこと、歩行、人の見分け、言語を使うことがいずれも未だできないなど、発育にやや遅れがみられたが(なお、〈書証番号略〉の陳述書並びに原審及び当審における証人澤﨑信子の証言中には、大阪市大病院を受診した際、慶子が笑うようになった時期及び首が座った時期を説明した覚えはないとの供述部分があるが、右供述部分は前掲乙号各証に照らして信用することはできない。)、それ以外には健康面で何らの問題はなく病院に行くようなことはなかったこと、慶子が昭和四三年六月二二日に受診した大阪市大病院神経精神科のカルテには、信子の医師に対する説明として、慶子は本件予防接種の時まで「マンマ」位は話しており、呼べば走ってくる状態にあったとの記載のあること、また、慶子は、昭和三八年八月から一〇月にかけてジフテリア、百日咳の、昭和三八年三月にポリオ生ワクチンの各予防接種を受けているが、その際、医師や看護婦から発育状況が遅れているというような指摘を受けたことは一度もないこと、慶子の父澤﨑幸雄が撮影した写真によれば、慶子は昭和三九年三月頃は一人立ちのできる状態にあったこと、以上の事実が認められ、これらの事実を総合すると、慶子は、本件予防接種以前には、知能、運動面での若干の遅れはあるものの、精神薄弱を疑わせるような兆候は存せず、一応正常な発達をしていたものと推認される。

また、前記第三の二で認定した事実及び前掲各証拠によれば、慶子は、昭和三九年四月二二日午前一〇時半ころに本件予防接種(種痘)を受けたこと、当夜、乳を飲もうとせず熱を出してぐったりしていたが、母信子において、風邪にかかったものと思い様子を見ていたこと、同月二六、七日ころに発熱を主訴として杉田診療所で診察を受けたところ、口内炎を合併しているとの診断を受けたこと、同年五月五日夜、舌疼痛と発熱があり、同月九日、林診療所において急性化膿性口内炎と診断され、その治療を受けたが、その後も状態は良くならず、翌五月一〇日には新大阪病院へ入院したこと、同病院の診療録によると、既往歴・原因・主要症状等として、強度脱水状態、他医にて加療受くも悪化、心衰弱、嗜眠様にて来院、診断として、高張性脱水症、壊疽性口内炎及び鵞口瘡を伴う脱水状態とされており、その入院中の症状をみると、口内炎の膿苔から連鎖球菌多数とブドウ球菌が数コロニー検出されているが、そのほかに体重減少、尿回数も減少、全身状態悪化、嗜眠状態、不眠不安があるとされており、抗けいれん剤として使用されるフェノバールエリキが約二週間にもわたって継続使用されていること、慶子は、同年五月一八日に同病院を退院し、翌一九日から同月二六日まで通院していたこと、昭和三九年六月(一歳二か月時)に大阪市大病院精神科を受診し、特殊施設に行くように勧められたこと、昭和四〇年九月三日から同年一二月二日までの間及び昭和四一年一月二五日に大阪市大病院小児科で治療を受けたが、その際には、脳性麻痺の疑いと診断されていること、また、その後も民主診療所で治療を受けていたこと、昭和四三年六月二二日ころ大けいれんを起こし、大阪市大病院で「精神発達遅滞、点頭けいれん」と診断されたこと、その後、発熱、けいれんの大発作があったため、昭和四四年二月二四日から五月一九日まで為水病院へ入院したこと、そこでは精神薄弱、てんかんと診断され、入院時にあった大、小発作は投薬により治ったものの、精神障害の程度は重度一級と思われる旨診断されたこと、以上の事実が認められる。

以上によれば、慶子は、笑うことや首の座るのが遅いなど、発育にやや遅れがみられたが、本件予防接種直前には、精神薄弱の兆候を疑わせる程の著しい精神運動発達遅滞はなかったものであり、また、本件予防接種直後から発熱し、約二週間を過ぎた五月一〇日から強度の脱水状態、心衰弱、嗜眠様状態を呈して新大阪病院に入院しており、右症状は、その時期からみても、種痘による遅延アレルギー型の副反応としての脳症によるものと推認されるから、慶子の本件予防接種後の症状は、前記の白木四条件を充足するものと認めることができる。なお、慶子が明らかな大けいれん発作を起こしたのは本件接種後相当の年月が経過した昭和四三年六月ころになってからであるが、証人白木博次(原審)の証言によれば、急性期における意識障害が軽度のものである場合においては、相当期間経過後に急激な大けいれんを起こす可能性のあることが認められるから、慶子の大けいれん発作の時期が遅いからといって、そのことから直ちに慶子の本件事故後の症状が本件予防接種に基づくものではないということにはならないものと考えられる。

ところで、一審被告は、この点に関し、慶子には本件予防接種直後に脳炎・脳症と考えられるような明確な意識障害がなく、慶子の前記嗜眠状態は口内炎による発熱と食餌摂取不能による脱水状態となったことがその原因であると主張するところ、前記認定事実によれば、杉田診療所や林診療所において、慶子が口内炎の診断を受けていたことが認められ、慶子が口内炎の症状を呈していたことは明らかである。しかしながら、仮に、慶子の症状が口内炎の発症にすぎないものであったとすれば、前記のように、慶子がそれについて相当長期の治療を受けていたにもかかわらず、症状が改善せず、結局、新大阪病院へ入院する直前のような全身状態の悪化にまで至ることは通常は考えられないのみならず、本件予防接種から約一か月半から二か月後の昭和三九年六月から特殊施設に行くよう勧められる程の急激な精神運動発達遅滞が生じたことについての合理的な説明も困難となるから、慶子の症状は、前記判示のとおり、本件予防接種の遅延アレルギー型副反応によるものと推認するのが合理的というべきである。

したがって、慶子については、本件予防接種と本件事故との因果関係を認めることができる。

3  被害児番号31髙島ようについて

前記第三の三で認定した事実〈書証番号略〉、証人大浦敏明、同重福幸子(いずれも当審)の各証言、一審原告髙島よう法定代理人高島慎五(原審)の尋問の結果によると、ようの母原告髙島恭子は、ようの妊娠中も出産時も異常はなく、ようは、ほぼ予定どおりに無事出産したこと、ようは、生後八か月で這い歩きを始め、一〇か月で一人で立ち上がり、一一か月では一人で歩けるようになっており、運動発達面では順調に発育しており、言語発達面では、生後九か月で少し発語可能であったこと、生後一年三か月時の昭和四八年一月二九日に本件予防接種(種痘)を受けたこと、接種後六、七日目の同年二月四、五日ころ検診に行ったところ、医師から付き方がひどいが、善感である旨言われたこと、右検診を受けて帰宅した後三九度位の発熱があり、翌六日になっても熱が下がらなかったので、同日午後七時ころ重福太郎医師の診察を受けたこと、また、天理よろづ相談所病院の外来カルテ〈書証番号略〉あるいは大阪市立小児保健センターの外来診療録〈書証番号略〉には、ようが、本件予防接種以前の一歳三か月頃までは、「イタイ」、「アツイ」、「ハクホ」(犬の名)、「パン」、「バイバイ」などの言葉を話していたが、本件接種後約一週間高熱が続いた以後はほとんど喋らなくなった旨の記載があること、ようは、本件予防接種後約八か月後の昭和四八年九月二七日、言葉の遅れを主訴として大阪市立小児保健センターで受診し、精神発達遅延と診断されたこと、昭和四九年一二月五日に受けたスピーチクリニック臨床心理研究所でのK式乳幼児発達検査の結果(生活年齢三歳一か月時)によると、運動が三歳〇月、DQ(発達指数)九七、動作が言語一歳六月、DQ(発達指数)四九で、特に言語了解、表出ともに低迷であったこと、大阪市立小児保健センターの昭和五三年三月一三日の検査成績は、発達指数(K式)四一であり、同年八月二四日現在における症状は、精神薄弱プラス情緒障害であり、過動、注意散漫、無関心などの情緒障害が著明で、家庭及び学校での取扱いは極めて困難な状況であると診断されたこと、以上の事実が認められる。

右事実によれば、ようは、本件予防接種以前には特に著しい精神運動発達遅滞はなかったが、本件予防接種後しばらくしてから発語・表現能力の減退が目立ち、昭和四八年九月二七日には大阪市立小児保健センターで精神発達遅延と診断され、その後、精神薄弱の状態に至っていることが認められるから、ようの症状は、前記白木四条件を充足するものというべきである。

一審被告は、ようには、本件接種前から発語・表現能力に遅れがあり、また、種痘接種後に脳炎・脳症等の中枢神経障害を来すような症状は認められないから、ようの現在の状況は原因不明の精神薄弱によるもので、種痘との因果関係は認められないと主張する。

しかしながら、本件接種前からように発語・表現能力の遅れがあったとの一審被告の主張は、重福太郎医師の「病用」と題する書面〈書証番号略〉の「家人に依れば生后九か月で少し発語可能であったが、その后発語表現能力の減少を疑っていたと言ふ」という記載部分の「その后」が「生後九か月後から」の意味であり、ようが本件接種以前から既に言語の発達遅滞の状態にあったことを前提とするものであるところ、前記認定のとおり、〈書証番号略〉によれば、ようは、本件予防接種以前の一歳三か月頃までは、「イタイ」、「アツイ」などの言葉を話していたことは明らかであって、特段言語の発達遅滞があったような事実は認められないから、右報告書にいう「その后」とは、「本件予防接種後、五、六日間の有熱期間の以後」の意味と理解するのが合理的である。

したがって、本件予防接種以前からように言語の発達遅滞があったことを前提とする一審被告の主張は採用できない。

なお、ようの本件予防接種直後の症状に関し、証人平山宗宏(原審)は、ようの本件予防接種後の症状、特に発熱は、種痘接種部位を中心とする右上膊部の蜂窩織炎に原因を求めるのが合理的であると供述するところ、平山証言は、本件予防接種後にように生じた発熱の原因が右上膊部の蜂窩織炎によるものであることの一つの説明にはなりうるが、ように生じた前記の症状がすべて右上膊部の蜂窩織炎を直接の原因とするものと考えると、本件接種の約四か月後に生じたようの発語・表現能力の急激な減退、さらには、その後の重度の精神薄弱の症状が何故生じたかの合理的な説明がつかないことになるから、同証人の右供述部分はこれを採用することはできない。

よって、ようについては、本件事故と本件予防接種との間の因果関係を認めることができる。

4  まとめ

以上によれば、本件各被害児に生じた本件各事故と本件各予防接種との間にはいずれも相当因果関係があるものと認められる。

(第一次的請求について)

第五安全配慮(確保)義務違反による債務不履行責任及び不法行為責任(請求原因4)について

原判決五二三丁裏二行目の「解するの」を「解するのが」と改め、同四行目の「(但し、」から同七行目の「である。)」までを削除し、同八行目の「種痘法」の後に「一条一項、」を付加し、同五二五丁裏六行目の「すびず、」を「すぎず、」と、同裏末行の「請求」を「第一次的請求」と、それぞれ改めるほかは、原判決の理由説示(全六冊の四の五二二丁表一行目の初めから同五二五丁裏末行の終わりまで)記載のとおりであるから、これを引用する。

(第二次的請求について)

第六国家賠償法に基づく責任(請求原因5)について

一本件各予防接種の実施主体と一審被告の国家賠償法上の責任との関係について

1  旧法五条、六条に基づく接種について

被害児番号1高倉米一、同2河島豊、同3塩入信子、同4秋山善夫、同7清原ゆかり、同10鈴木旬子、同11稲脇豊和、同12山本治男、同14金井眞起子、同17藤本章人、同18仲本知加、同19森井規雄、同22三好元信、同25常信貴正、同26三原繁、同29福山豊子、同31髙島よう、同35田村秀雄、同36西晃市、同39高橋勝巳、同43野々垣一世、同44原篤、同45垣内陽告、同46山本実、同47安田美保の各被害児(二五名)については、一審被告の機関委任事務として、その委任を受けた地方公共団体の長を実施者とする予防接種が行われたことは当事者間に争いがないところ、右各接種は、伝染の虞がある疾病の発生及びまん延の防止という公衆衛生行政をその任務とする厚生大臣の事務を機関委任によって地方公共団体の長に実施させているものであるから、これが厚生大臣の公権力の行使に該当することは明らかである。

したがって、その予防接種の実施について、一審被告が国家賠償法一条一項の責任を負担すべき場合があることはいうまでもない。

2  旧法六条の二、九条、一〇条八項に基づく接種及び勧奨による接種について

被害児番号6増田裕加子、同8小林誠、同9幸長睦子、同15前田憲志、同16上田純子、同21四方正太及び同30澤﨑慶子の各被害児(七名)が旧法六条の二に基づき開業医が実施者として行った予防接種を受けていること、被害児番号5吉田理美、被害児番号20末廣美佳、同23毛利孝子、同24柳澤雅光、同28田邉恵右、同32横山信二(本件①接種)、同33大橋敬規、同34木村尚孝、同37矢野さまや、同38菅美子、同40原雅美、同42小川健治の各被害児(一二名)が旧法九条に基づき地方自治体あるいは開業医を実施者とする予防接種を受けていること(なお、被害児番号32横山信二の本件②接種の根拠は既に認定したとおり旧法九条によるものと認められるが、〈書証番号略〉及び弁論の全趣旨によれば、右接種は、一審被告の機関委任事務として大東市が実施した定期接種の機会に行われていることが認められる。)、被害児番号27中尾仁美が旧法一〇条八項に基づき神戸市が実施した予防接種を受けていることは既に認定したとおりである。

また、被害児番号13大喜多雅美が八尾市を実施者とする予防接種(ポリオ生ワクチン)を、同48藤井崇治が津田町を実施者とする予防接種(インフルエンザワクチン)をいずれも勧奨接種により受けたことも既に認定したとおりである。

ところで、これらの各予防接種は、前記1の定期あるいは臨時の予防接種とは異なり、その直接の実施者は地方自治体あるいはその委託を受けた開業医であるが、いずれも予防接種を国民の義務として定め、その実施を罰則をもって強制する予防接種法をその背景に有するもので(旧法三条、二六条参照)、厚生大臣が強制接種として行う定期あるいは臨時の予防接種と特に異なる性質を有するわけではなく、厚生大臣が国家の公衆衛生行政の施策として行う予防接種制度の一部を構成しているものというべきであるから、これらの各予防接種の実施も、実質的には厚生大臣が地方自治体等を介して公権力を行使していたものということができる。

もっとも、被害児大喜多雅美が受けたポリオ生ワクチン及び同藤井崇治が受けたインフルエンザワクチン等の勧奨接種は、予防接種法に基づいてこれが強制されていたわけではないが、これらの勧奨接種も、予防接種法と無関係に行われることはあり得ず、急性灰白髄炎あるいはインフルエンザが予防接種法二条に定める予防接種を行うべき疾病に含まれていることにその実施の本来的根拠があるものであり、しかも、〈書証番号略〉によれば、厚生省(厚生大臣あるいは厚生事務次官等)は、地方自治体等に対し、これらの勧奨接種の細部の実施方法を定めた通達、通知を発するのみならず、これらの通達、通知に付随して、予防接種の実施の対象、実施の時期、接種方法、禁忌、費用負担等を細かく規定したワクチンの投与要領ないし実施要領を定め、これらに基づいて予防接種を実施するよう指示するなど、地方自治体等の行う予防接種に実質的にも関与していたことが認められる。

したがって、勧奨接種を含め、右各予防接種の実施についても、一審被告は、国家賠償法一条一項の責任を負うことがあるというべきである。

なお、一審被告は、崇治が本件予防接種当時、幼稚園に通園していなかったから、崇治に対する予防接種は、勧奨接種に基づくものではなく、単なる任意接種にすぎないと主張するが、〈書証番号略〉、一審原告藤井鈴恵本人尋問の結果(原審)に弁論の全趣旨を総合すると、崇治は厳密な意味でのインフルエンザの特別対策の対象者には該当しないが、崇治の母鈴恵は、津田町役場からの接種勧告通知書に基づいて本件予防接種を受けさせていることが認められるところ、これを単なる任意接種と同視するのは相当でないから、条理上、津田町役場が勧奨接種を実施したと同様の責任を負うものと解するのが相当である。したがって、この点に関する一審被告の主張は採用できない。

3  種痘法一条一項に基づく接種について

被害児番号41池上圭子が種痘法一条一項に基づき泉佐野市を実施者とする予防接種を受けたことは既に認定したとおりである。

ところで、〈書証番号略〉に弁論の全趣旨を総合すると、予防接種法による廃止前の種痘法五条によれば、同法に基づく種痘の実施は市町村がこれを行うべきものと定められているが、同法一七条は、同法二条ないし四条において定めた種痘を受けさせる義務を科料によって強制しており、また、当時の内務省も、内務省令第二六号により種痘法施行規則を制定して、市町村が行う種痘の実施対象、実施時期等を細かく定めているが、これらは、種痘の実施についても、国あるいは内務大臣が実質的に関与していたことを意味するものであって、種痘法に基づく予防接種も、予防接種法に基づく予防接種と同様、当時における国の公衆衛生行政の施策として内務大臣の関与の下に行われたことは明らかである。

したがって、種痘法に基づく種痘の実施も、当時の内務大臣による公権力の行使というべきであるから、一審被告は、これについても、国家賠償法一条一項の責任を負うことがあるというべきである。

二厚生大臣の過失の有無について

1  禁忌該当者の推定について

予防接種は、稀には重篤な被害が生ずることはあるが、予防接種の実施に際して、禁忌者を適切に除外するなどの万全の注意義務を払えば、一般的には安全であることを想定して実施されているのであるから(もし、そうでなければ、昭和五一年の予防接種法の改正により予防接種による被害者に対する本件救済制度が実施されるまで、予防接種法が何らの被害者救済制度も予定していなかったことの合理的な説明はつかないはずである。)、予防接種によって重篤な後遺障害が発生した場合には、予防接種実施規則(昭和三三年厚生省令第二七号。なお、以下では、昭和五一年厚生省令第四三号による改正に至る前の予防接種実施規則を「旧実施規則」と総称することがある。)四条所定の禁忌者を識別するために必要とされる予診が尽くされたが禁忌者に該当する事由が発見できなかったこと、被接種者が右後遺障害を発生しやすい個人的素因を有していたこと等の特段の事情が認められない限り、被接種者は禁忌者に該当していたものと推定されるものと解するのが相当である(最高裁平成三年四月一九日第二小法廷判決民集四五巻四号三六七頁参照)。

2  接種担当医において予診を尽くしたが、禁忌者に該当すると認められる事由を発見できなかった特段の事情の有無について

(一) 被害児番号5吉田理美、同7清原ゆかり、同8小林誠、同12山本治男、同15前田憲志、同17藤本章人、同20末廣美佳、同23毛利孝子、同34木村尚孝、同35田村秀雄、同37矢野さまや、同36西晃市、同42小川健治、同47安田美保の各被害児について

一審被告は、これらの一四名の被害児については、接種担当医において、いずれも予診が尽くされたと主張するので、以下、その点を検討する。

(1) 被害児 吉田理美

〈書証番号略〉、証人吉田富子(原審)の証言によれば、理美は、森本診療所で本件予防接種の接種を受けたものであるが、接種の際、接種担当医である森本医師は、簡単に聴診器をあてた程度で、それ以上の十分な予診は行わず、禁忌についての説明もしなかったことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

なお、右証人吉田富子の証言中には、森本医師がホームドクターのような存在であったとの趣旨の供述部分があるが、そのことから、直ちに同医師が本件予防接種直前の理美の状態を十分に知っていたとまでは推認できないから、十分な予診を尽くしたものと推定することはできない。

(2) 同 清原ゆかり

〈書証番号略〉、清原廣子(原審)の証言によれば、ゆかりは、兵庫保健所淡河出張所で本件予防接種を受けたものであるが、集団接種であり、簡単な問診票は使用されただけで、接種担当医は、特に問診や聴打診等はしなかったことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

なお、一審被告は、ゆかりが保健所で予防接種を受けていることから、ゆかりについては予診が尽くされていると主張するが、右各証拠及び弁論の全趣旨によれば、ゆかりの予防接種当時、保健所においても予診の重要性についての認識が必ずしも十分ではなかったこと、現に、ゆかりは、右認定のような簡単な予診を受けただけであることが認められるから、単に予防接種が保健所において実施されたということだけで、予診が尽くされたものと推認することはできない。

(3) 同 小林誠

〈書証番号略〉によれば、誠は、渡辺小児科で本件予防接種の接種を受けたが、接種前、接種担当医は、母小林百合子に誠の健康状態を尋ね、聴診器をあてた程度で、それ以上の十分な予診はしなかった。

(4) 同 山本治男

〈書証番号略〉によれば、治男は、守道小学校で本件予防接種を受けたものであり、接種の現場には、問診を行う医師と、接種(投与)役の医師とがいたが、十分な予診は行われなかったことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

なお、治男の予診の状況について、証人久保孝夫(当審)は、治男を予診した際、同被害児については十分な予診を行ったと供述するが、その内容は、同人が予診の際には一般的に聴打診もすることにしているので、治男にも聴打診はしたはずであること、また、問題があれば問診票の接種「不可」のところに○印をつけているはずであり、「可」のところに○印をつけているから接種に問題はなかったはずであるという程度の記憶に基づくもので、同人が、同被害児に対し、どのような内容の予診をし、どのような判断をしたかという具体的な記憶に基づくものではないから、右供述によって、同被害児について十分な予診が行われたものと認めるのは困難である。

(5) 同 前田憲志

〈書証番号略〉、証人前田洋子(原審)の証言によれば、憲志は、戸嶋小児科診療所で本件予防接種を受けたが、接種にあたって、接種担当医から十分な予診は受けなかったことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

(6) 同 藤本章人

〈書証番号略〉、藤本みち子(原審)の証言によれば、章人は、昭和幼稚園で本件予防接種を受けたが、接種は集団で行われ、当時、章人は胃腸が弱っていたのか舌の周りが白くなっていたので、母藤本みち子は接種の前に、そのことを医師に伝えたが、医師は聴診器をあて、口の中をみただけで、それ以上の十分な予診は行わなかったことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

なお、右各証拠によれば、予診の際には問診票が使用されており、そこには特に異常がある旨の記載はないが、その内容は極めて簡単なものであり、問診票の記載に特に異常がないからといって、直ちに全身状態の検査が不要となるわけではないのに、接種担当医は、章人の母から申出のあった舌の周りを見ただけでそれ以上の予診は行わなかったことが認められる。

(7) 同 末廣美佳

〈書証番号略〉、証人末廣宏子(原審)の証言によれば、美佳が本件予防接種を受けた際、問診票は使用されているが、接種担当医は、問診票の内容を確認しただけで、それ以上の予診は行わなかったことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

(8) 同 毛利孝子

〈書証番号略〉によれば、孝子は、東住吉保健所加美出張所で本件予防接種(種痘)を受けたものであり、その際、問診票は使用されたが、その内容は極めて簡単なものであったこと、にもかかわらず、看護婦は体の調子がどうかということを尋ねただけであり、接種担当医も、それ以上の予診はしなかったことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

一審被告は、孝子の母毛利舜子は問診票〈書証番号略〉を自分で記載して提出したものであると主張するところ、問診票の記載からは、どの部分を舜子が記載したのかは必ずしも明確には断じ難いが、仮に、舜子がすべての項目について自分で○印を入れて提出したものであるとしても、専門家でない者の記載したものであるから、接種担当医にはさらに予診を尽くす義務があるといわざるを得ないところ、本件接種においては、右認定のとおり、身体の調子がどうかを尋ねただけでそれ以上の予診が行われた事実はこれを認めることができない。また、一審被告は、孝子が保健所で予防接種を受けていることから、孝子については、予診が尽くされていると主張するが、右各証拠及び弁論の全趣旨によれば、孝子の予防接種当時、予診の重要性についての認識は保健所においても十分ではなかったこと、現に、孝子は、右認定のとおり、問診票に基づいた簡単な予診を受けただけであることが認められるから、単に予防接種が保健所において実施されたということだけで、予診が尽くされたものと推認することはできない。

(9) 同 木村尚孝

〈書証番号略〉、証人木村時江(原審)の証言によれば、尚孝は、守口市立東小学校の体育館で本件予防接種を受けたものであり、接種会場には、医師が二名、看護婦か保健婦が二、三名いたが、ごく簡単な問診票が受付の所に用意してあり、接種前、受付で「熱はありませんか」、「特に悪いところはありませんね」と簡単な質問を受けただけで、それ以上の聴打診、触診などの予診は行われなかったことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

(10) 同 田村秀雄

〈書証番号略〉によれば、秀雄は、昭和三一年五月八日、大阪府泉南郡岬町で本件予防接種の集団接種を受けたが、接種担当医である市川トヨ医師から特に予診は行われなかったことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

一審被告は、市川医師が秀雄のかかりつけの医師であったと主張するところ、〈書証番号略〉によれば、同医師が以前に秀雄を診察したことがある事実は認められるが、本件全証拠によるも、同医師がかかりつけの医師であった事実まではこれを認めることはできないから、一審被告の主張は採用できない。また、仮に同医師がかかりつけの医師であったとしても、接種時の状態を当然に知っているわけではないから、十分な予診を尽くすべき義務は免れないものであるが、右認定のとおり、同医師は十分な予診を行ってはいない。

(11) 同 西晃市

〈書証番号略〉、証人西悦子(原審)の証言によれば、晃市は、大阪市西保健所で本件予防接種の集団接種を受けたこと、母子手帳には予診票があったが、晃市の母西悦子は何も記入せずに提出したこと、接種担当医は、何の予診もしなかったことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

一審被告は、晃市が保健所で予防接種を受けていることから、晃市については、予診が尽くされていると主張するが、〈書証番号略〉には予診がなされたような形跡はないし、右各証拠及び弁論の全趣旨によれば、晃市の予防接種当時、保健所においても予診の重要性についての認識が十分でなかったこと、現に、晃市は、右認定のとおり、問診票に何の記載もされていないのに、何らの予診も受けなかったことが認められるから、単に予防接種が保健所において実施されたということだけで、予診が尽くされたものと推認することはできない。

(12) 同 矢野さまや

〈書証番号略〉、証人矢野直美(原審)の証言によれば、さまやは、伊藤小児科で本件予防接種の接種を受けたが、何の予診も行われなかったことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。さまやの父矢野邦雄作成の書面(〈書証番号略〉)中には、伊藤医師の健康診断を受けさせたのちに本件接種を受けたとの記載はあるが、右記載から同医師が予診を尽くしたものと推認することは困難である。

(13) 同 小川健治

〈書証番号略〉、証人小川昭治(原審)の証言によれば、健治は、稲垣医院で本件予防接種を受けたが、接種の際、稲垣医師は、聴診器を当てる程度の簡単な予診をしただけでそれ以上の十分な予診はしなかったことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

また、〈書証番号略〉によれば、同医師がかかりつけの医院であったことは認められるが、同医師が接種時の健治の全身状態を当然に知っていたとまでは推認できないところ、同医師が右認定以上の視診、触診等の予診を尽くしたと認めるに足りる証拠はない。

(14) 同 安田美保

〈書証番号略〉、証人安田明美(原審)の証言によれば、美保は、昭和五〇年九月二日、西奈良県民センターの「保健センター」で本件予防接種を受けたこと、通知のハガキの裏は問診票になっており、当日は、約二〇〇坪位の接種会場に、母親、幼児などで約二〇〇名から三〇〇名位が集まっており、三名の女性職員が問診票のチェックをしていたこと、美保の母安田明美は、美保が同年五月一二日のポリオ生ワクチン服用後三九度の発熱があり、その後しばらく便の回数が多くなった事実があったため、問診票の「これまでの予防接種で副作用があったか」という欄に○印をつけ、欄外に「ポリオで発熱」と書いて出したが、衛生課の職員は、「ポリオで熱は出ないよ」と言いながら、赤い印をつけて予診医に回したこと、接種担当医も、母親が右のような説明をしたにもかかわらず、これを聞き流すだけで、それ以上の触診等はしなかったことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

なお、一審被告は、美保については十分な予診が尽くされたと主張し、証人大久保加保子(当審)の証言を援用するが、同人の証言は、美保が本件予防接種を受けた昭和五〇年九月二日当日、西奈良県民センターに立ち合わせていたかどうか自体を定かに記憶していないものであって、その証言から美保の予診の状況を認定することは困難であるのみならず、同人の証言によれば、その当時の予防接種の状況は、午後二時から三時三〇分の一時間三〇分の間に医師二人で約二〇〇人を接種してしまうという過密スケジュール(一人当たり約五四秒)の状態で行われていたことが認められ、いずれにしても、美保について、十分な予診が行われたとは到底認められない。

(二) 被害児番号1高倉米一、同2河島豊、同3塩入信子、同4秋山善夫、同10鈴木旬子、同22三好元信、同25常信貴正、同26三原繁、同27中尾仁美、同40原雅美、同43野々垣一世、同45垣内陽告の各被害児について

一審被告は、これら一二名の各被害児は、保健所において予防接種を受けたものであるから、予診は尽くされていると主張するが(被害児番号7清原ゆかり、同23毛利孝子、同36西晃市に関しても保健所において接種を受けた旨の主張があるが、これらの被害児については既に判示したとおりである。)、〈書証番号略〉及び弁論の全趣旨によれば、右各被害児はいずれも一審被告主張の保健所において本件予防接種を受けたことは認められるものの、本件各予防接種当時、保健所において予防接種を担当した医師においても予診の重要性についての認識は必ずしも十分ではなかったこと、現に、右各被害児は、いずれも、予診を全く受けないか、予診を受けたとしても極めて簡単な予診しか受けていないことが認められるから、本件各予防接種が保健所において実施されたとしても、予診が尽くされたものと推認することはできない。

(三) まとめ

以上によれば、前記の各被害児は、いずれも、予診をほとんど受けずに接種を実施されたものであり、また、問診等の何らかの予診を受けた場合であっても、禁忌規定の重大な意味、予診の重要さに意を配った行き届いた予診を受けた者は皆無であったといわざるを得ず、他に予診が尽くされたにもかかわらず、禁忌該当者であることを発見することができなかった特段の事情があったことを認めるに足りる証拠はない。

したがって、右各被害児については、前記の禁忌者該当の推定を覆すに足る特段の事情があったとは認められないから、いずれも本件各予防接種当時施行されていた各予防接種施行心得ないしは旧実施規則にいう禁忌者に該当していたものと推定するのが相当である。

3  厚生大臣が禁忌該当者に予防接種を実施させないための十分な措置を取ることを怠った過失の有無について

(一) 予防接種の副反応による被害発生を防止すべき一審被告の責任について

一審被告は、国家又は地域社会において一定割合以上の国民が予防接種を受けておけば、伝染病の発生及びまん延の予防上大きな効果があることに着目し、主として社会防衛、集団防衛の見地から、公衆衛生行政の施策の一環として、国民に対し予防接種を義務づけもしくは勧奨してきたものであり、前記に判示したとおり、それが旧法五条、六条による接種であるか、同法六条の二、九条、一〇条八項による接種であるか、勧奨接種であるか、種痘法に基づく接種であるかを問わず、省令、通達、通知等によって、予防接種の実施方法等につき細かく市町村長、地方自治体及び予防接種を担当する医師を指導・監督してきたものである。

しかも、予防接種は、異物であるワクチンを人体に注入するものであり、もともと、ある程度の危険を伴い、軽度の発熱、発赤、発疹等の副作用が生ずることが知られているが、そうした軽度の副作用のみにとどまらず、時には、脳炎・脳症といった生命にもかかわるような重篤な副反応被害が発現する可能性のあることは経験的に知られており、特に、種痘の副反応被害として種痘後脳炎が発症する事実は、既に戦前から認識されていたものであって、一審被告も、予防接種によって、稀にこうした重篤な副反応被害が生ずる可能性のあることは認めている。

ところで、予防接種法は、社会防衛の見地から国民に予防接種を義務づけているが、予防接種法が予防接種を受ける個々の国民に、軽度の発熱、発赤、発疹といった程度を超えた、生命にもかかわるような重篤な副反応被害が生ずることを容認しているものではないことは明らかなところである。したがって、予防接種によって生命にかかわる重篤な副反応被害が生ずる危険性がある以上、予防接種を強制あるいは勧奨する一審被告は、予防接種を受ける個々の国民に対し、予防接種によってこのような重篤な副反応被害が発生しないよう万全の措置を講じるべき法的義務を負っているものというべきである。予防接種法(昭和五一年法律第六九号による改正前の旧法を指す。以下同じ。)自体も、特に戦前から症状の激しい副反応が生ずることの知られていた腸チフス・パラチフスにつき、一二条に、「腸チフス又はパラチフスの予防接種を行うときは、あらかじめ予防接種に対する禁忌徴候の有無について健康診断を行わなければならない。禁忌徴候があると診断したときは、その者に対して予防接種を行ってはならない。」との規定を置いて、その趣旨を明示しているが、この趣旨は、単に腸チフス・パラチフスの予防接種のみに止まるものではなく、すべての予防接種について妥当するものである。

また、予防接種法一五条は、「この法律で定めるものの外、予防接種の実施方法に関して必要な事項は、省令で定める。」と省令への委任を規定しているが、この省令で定めるべき予防接種の実施方法に関して必要な事項の中には、あらかじめ行うべき禁忌徴候の有無についての健康診断(いわゆる予診)に関する事項、その前提となる禁忌の設定に関する事項、あるいはこれらの周知徹底に関する事項等、予防接種による事故の発生を防止するために必要な事項が含まれているというべきであり、省令を定め、それを施行する直接の責任者は、その省の業務を統括する大臣であって、伝染病の伝播及び発生の防止その他公衆衛生の向上及び増進の業務全般を所管している行政官庁は厚生省であるから、厚生省の業務を統括する厚生大臣は、予防接種による事故の発生を回避するために必要な措置をとるべき法的義務を負っているものといわなければならない。

もっとも、予防接種は、その性質上、重篤な副反応が生ずる可能性を完全に否定することは困難であり、できるかぎりの措置を講じたとしても、稀には重篤な被害が生ずる可能性がないわけではないが、逆に言えば、そうした危険性があることを認識しながら、それでもなお、伝染病のまん延を防ぐという全体の共通の利益を達成するために予防接種を法律により強制あるいは勧奨するものであるから、予防接種の実施の際に厚生大臣に要請される義務もこうした危険性を可能な限り排除するための最善の注意義務が要請されるものといわなければならない。(なお、予防接種法の要請する最善の注意義務が尽くされたとしても、確率的には、それでもなお、稀に重篤な被害が生ずることも全くないとはいえないが、財産権の侵害に対して、正当な補償を行うべきことを要求している憲法二九条三項の趣旨から考えると、万一、こうした不幸な事態が生じた場合においても、これらの被害を放置することは許されず、本来、一審被告は、その特別な犠牲に対する損失を補償すべき制度を憲法の精神にしたがって定めておくべきものであり、損失補償を定めた法律が制定されていない場合においては、憲法二九条三項に基づいて直接その損失を補償することが可能かどうかが問題となる余地があるものというべきである。)

(二) 厚生大臣の具体的措置義務違反の有無について

そこで、以下、厚生大臣(種痘法については内務大臣)が前記の注意義務を尽くしたといえるかどうかについて検討する。

〈書証番号略〉、証人赤西英、同朝倉新太郎、同青山英康、同丹羽允、同大谷杉士、同福見秀雄、同白木博次、同村瀬敏郎、同平山宗宏、同高倉弘、同河島輝子、同河島二郎、同塩入久、同秋山千津子、同吉田富子、同小林百合子、同鈴木季子、同稲脇ミツ子こと稲脇みつ子、同上野幸子、同金井芳雄、同藤本みち子、同四方清子、同澤﨑信子、同田村正、同田村キミ子、同菅ユキエ、同福田千里、同前田博子(いずれも原審)の各証言、一審原告稲脇豊和本人、同増田恭子本人、同幸長芳雄本人、同森井富美子本人、同三好道代本人、同毛利舜子本人、同中尾八重子本人、同田邉幾雄本人、同小川昭治本人、同野々垣久美子本人、同原須麿子本人、同垣内千代本人、同安田明美本人、同常信知子本人、同三原洋子本人、同山本幸子本人、同前田訓代本人、同藤井鈴恵本人、同柳澤二美子本人、一審原告高倉米一法定代理人高倉千枝子、同河島豊法定代理人河島輝子、同幸長睦子法定代理人幸長律子、同清原ゆかり法定代理人、同山本治男法定代理人山本峯子、同上田純子法定代理人上田末子、同仲本知加法定代理人仲本マツ子、同末廣美佳法定代理人末廣宏子、同髙島よう法定代理人髙島眞悟こと髙島慎五、同横山信二法定代理人横山喜代子、同大橋敬規法定代理人大橋萬里子、同木村尚孝法定代理人木村時江、同西晃市法定代理人西悦子、同矢野さまや法定代理人矢野直美、同高橋勝巳法定代理人高橋陽己、同原雅美法定代理人原昌也、同前田憲志法定代理人前田洋子(いずれも原審)の各尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(1) 禁忌の意味と禁忌規定の変遷について

① 予防接種には副反応による重篤な被害が発生する可能性があるため、従来から、これを防止することを目的として、重篤な副反応(合併症)の発生する蓋然性が高いと経験的に考えられる特定の身体的状態を禁忌として、それに該当する者を予防接種の対象から除外するという措置がとられてきた。最初にこれを法的に根拠づけたのが、種痘法(明治四二年法律第三五号)の種痘施術心得(明治四二年一二月二一日内務省告示第一七九号)一一条であった。

② その後の予防接種法の施行に伴い、各種の伝染病につき予防接種を罰則の強制をもって国民に義務づけるとともに、禁忌者を予防接種の対象から除外するための法的措置として、まず腸チフス・パラチフスについては、予防接種法一二条二項において、「腸チフス又はパラチフスの予防接種を行うときは、あらかじめその予防接種に対する禁忌徴候の有無について健康診断を行わなければならない。禁忌徴候があると診断したときは、その者に対して予防接種を行ってはならない。」旨の規定が置かれた。さらに、昭和二三年一一月一一日、予防接種施行心得(厚生省告示第九五号)が制定され、前記種痘施術心得が廃止されるとともに、「種痘施行心得」、「ジフテリア予防接種施行心得」、「腸チフス・パラチフス予防接種施行心得」、「発しんチフス予防接種施行心得」及び「コレラ予防接種施行心得」が定められ、禁忌に関する規定が置かれた。

③ 昭和二五年二月一五日、「百日咳予防接種施行心得」(厚生省告示第三八号)が制定され、禁忌事項が定められた。

④ 昭和二八年五月九日「インフルエンザ予防接種施行心得」(厚生省告示第一六五号)が制定され、禁忌事項が定められた。

⑤ 昭和三三年九月一七日、前記各「施行心得」を統合・改善した旧実施規則(厚生省令二七号)が制定施行され、同四条において禁忌事項が定められた。旧実施規則は、昭和三九年の厚生省令第一七号及び昭和四五年の厚生省令第四四号により、禁忌事項が付加改正された。

⑥ その後、昭和五一年の予防接種法の改正に伴い、旧実施規則は、同年九月一四日の厚生省令第四三号により改正され、禁忌を定める四条も改められた。

⑦ 右①ないし⑥の内容の詳細は、一審原告ら主張の別紙⑥「禁忌規定の変遷」記載のとおりである。

(2) 予診等の体制について

禁忌該当者を的確に識別するためには、専門家である医師による禁忌事項の有無についての健康診断、すなわち予診が極めて重要である。このため、予診および接種等については、種々の規定もしくは通達等が置かれていたが、その詳細は、一審原告ら主張の別紙⑨「予診体制」記載のとおりであった。

(3) 我が国における予防接種の実施体制と運用の実際について

予防接種の副反応事故をできるだけなくすため、前記のように、予防接種法制定当時から禁忌や予診についての定めが置かれていたのであるが、予防接種の実施体制とその運用実態は、以下のような状況であった。

① 集団接種の常態化

予防接種の実施形態としては、例えば、かかりつけの医師のような個々の被接種者が自ら選択した医師のところで個別に予防接種を受けるという個別接種の方法もあり、特に先進諸国ではそれが主流になっているところが多いが、我が国では、戦後一貫して、学校又は保健所等の一定の場所に接種対象者を多数集め、実施主体が開業医を臨時に雇用し、あるいは地域の医師会に一括委託して医師会が会員の中から接種を担当する医師を選定して接種を実施するいわゆる集団接種の方法が主流をなしてきた。これは、接種率を上げるには、個人の自発的意思に負う部分の多い個別接種より、一定の会場に地域の接種対象者を集めて接種を実施するほうが都合のよいことや、接種を担当する医師等の人数の少なさや地域的偏在の問題、接種コストの問題、あるいは我が国ではいわゆるホームドクターがいるとは限らないといった事情からきたものである。

なお、昭和二六年法律第一二〇号による予防接種法の改正後は、定期の予防接種につき、市町村長の行う予防接種のみならず、一般の医師において自発的に受けた予防接種も、この法律に基づいて受けたものとされ、その限りでは、個人がかかりつけの医師から予防接種を受ける道も開かれており、本件各被害児の中には、かかりつけの医師による予防接種を受けた者もごく一部にはいたが、その場合においても、後記に認定するとおり、予防接種を担当する医師の禁忌事項の設定の意義やその重要性に関する意識が必ずしも十分なものとはいえないものであった結果、被接種者の全身状態を十分に把握したうえ、時間をかけて予診を行うことが可能となる個別接種の特質が必ずしも生かされない実情にあった。

② 集団接種の運用体制

厚生省の行政施策も、集団接種が予防接種の中心であるということを前提として立てられてきた。前記のように、昭和三四年の旧実施要領制定前の各予防接種施行心得には、急いでする場合でも医師一人が一時間に接種する人数はおよそ一五〇人とする(但し、種痘は八〇人、百日咳は一〇〇人)との定めがおかれていたし、予防接種会場についても、「十分に広くて清潔な場所を選び、換気、室温等に注意しなければならない。」との規定が設けられていた。また、昭和三四年制定の旧実施要領においても、集団接種を前提に、予防接種実施計画の作成に当たっては、特に個々の予防接種がゆとりをもって行えるような人員の配慮に考慮すること、医師一人を含む一班が一時間に対象とする人員は種痘では八〇人程度、種痘以外では一〇〇人程度とすることといった定めや、接種場所につき、採光、換気等に十分な窓の広さ、照明設備等を有する清潔な場所であり、冬期に十分な暖房設備を備えていることといった物的設備についての定めが設けられていた。

③ 集団接種の運用実態

しかしながら、昭和三四年の旧実施要領制定前の各予防接種施行心得で定められていた医師一人が一時間に接種する人数はおよそ一五〇人(種痘については八〇人、百日咳については一〇〇人)といった基準や、昭和三四年制定の旧実施要領の定めていた医師一人を含む一班が一時間に対象とする人員は種痘では八〇人程度、種痘以外では一〇〇人程度とすることといった基準は、それ自体が、予診によって禁忌該当者を識別、除外するための予診を尽くす基準としてはその人数が多すぎ、適切な基準の設定であったとは言いがたいものであったにもかかわらず、集団接種の運用の実態をみると、右の最低限の基準さえほとんど遵守されず、これから乖離した運用がなされていた。

すなわち、予防接種の接種現場の実態は、時間的な余裕、物的・場所的設備、人的体制のいずれの面も不十分なものといわざるを得ない状況であって、禁忌該当者を識別し、これを除外するための予診は全く省略されたままか、予診が行われたとしても、受付の係員や保健婦等が体温の測定をしたり、身体状況の簡単な聞き取りをする程度である場合がほとんどであり、医師による最も丁寧な予診の場合においてさえも、簡単な視診がなされる程度のことが多かった。

昭和三四年八月八日発行の日本医事新報(〈書証番号略〉)によれば、短時間に多数の被接種者に対する予防接種を実施している実情に対して、山田茂医師が「集団予防接種は、これでよいか」という表題の文章を掲載した事実のあることが認められるが、これなどは、当時の接種現場における予診の状況が極めて不十分なものであり、接種現場の医師が既にそのころから予診の在り方を問題にしていたことを示すものであって、こうした接種現場の状況は、厚生省当局も認識していたものと推認される。また、接種現場によっては、昭和四三年前後においても、公会堂のロビーに多数の被接種者を並べ、わずか二、三時間で約四〇〇人もの被接種者に接種を行うような例もあった。

しかも、接種現場のこのような状況は、昭和四五年ころから問診票が予診の一手段として用いられるようになってからも基本的には改善されなかった。現に、本件各被害児のうちでも、比較的接種時期の遅い被害児である被害児髙島ようや同安田美保の場合においても、未だ予診は十分なものとはいえなかった。すなわち、ようの場合について見れば、種痘の接種を受けたのは昭和四八年一月二九日であり、禁忌を疑うべき徴候(湿疹と鼻水)があり、問診票にも「鼻水」と記載し、「湿疹」の所に○印をつけて提出したにもかかわらず、接種担当医は、聴打診もしないまま接種をしたし、美保の場合も、種痘の接種を受けたのは昭和五〇年九月二日であり、接種前に行われたポリオ生ワクチン服用後の三九度の発熱、頻便があったため、問診票にも「ポリオで発熱」と記載して提出したが、接種担当医は、何らの予診も行わないまま漫然接種に及ぶという状況であった。また、その他の本件各被害児についてみても、被害児番号5吉田理美ほか一三名の各被害児の予診の状況は前記2(一)の(1)ないし(14)のにおいて認定したような状況であり、その他の各被害児の予診状況も、概ね一審原告ら主張の別紙⑦「接種及び予診の状況」記載のとおりであって、禁忌の意味が十分に意識されたうえでの視診、触診、聴打診等の丁寧な予診を受けた者は皆無といってよい状況であった。

(4) 接種担当医の予診の重要性に関する認識状況について

接種担当医の接種現場における予診の状況は、前記のとおり、禁忌該当者を発見、識別してこれを除外することにつながるような実質を備えたものとは言いがたいものであったが、その原因は、予防接種を担当する医師や保健婦等の禁忌や予診の重要性についての認識が低いことにその原因があった。すなわち、医学教育の現場でも、昭和三〇年代ころまでは予防接種に伴う副反応や禁忌の問題を学生に体系的に教えるということはなく、一般の医師が体系的に予防接種の副反応や禁忌の問題を勉強する場はなかった。しかも、後記のとおり、予防接種による副反応被害の実態については公表されるどころか、むしろ予防接種の必要性のみが強調されていたため、年間数回臨時に駆り出される程度の開業医(その中には、小児科や内科が専門でない医師も混じっていた。)は、予防接種の副反応や禁忌の問題に対する関心が薄かった。予防接種を担当する医師でさえ、予防接種実施規則や予防接種実施要領等の存在を十分には知らず、これをあらかじめ読んで接種に臨む者は極めて少ないという実情にあり、医師会でも、この問題について特段指導をしていなかった。そのため、医師の間においても、予防接種により重篤な副反応が生ずることがあるという事実についての認識は乏しく、ましてや、予防接種による副反応を防止するために禁忌が設定され、禁忌を識別するためには、予診が必須不可欠のものであるという認識が一般の医師レベルまではなかなか浸透しなかった。

(5) 被接種者側の認識状況について

予防接種の禁忌は、被接種者の現在及び過去の健康状態や発育状況、家族のアレルギーの有無等の情報を知ることによって判断されるものであるから、禁忌該当者であるか否かの判断を医師が的確に行うには、被接種者の側が禁忌の重要性について十分認識を持ったうえで、自分の健康状態等について知っていることを接種担当医に対して積極的に、かつ、できるだけ正確に申し出ることの必要性・重要性をよく分っていなければならない。しかし、本件各被害児の保護者を含む被接種者である一般の国民は、予防接種による副反応が存在すること自体を知らなかったばかりか、禁忌や予診の重要性について十分な認識を与えられていなかったため、禁忌を判断するのに必要な情報を接種担当医に提供できるような状況ではなかった(なお、〈書証番号略〉によれば、昭和四六年二月に京都府医師会が発行した「予防接種関連法規集」のまえがきにおいて、太田廣通医師は、接種を受ける住民側への予防接種の副反応に関する啓蒙の必要性を訴えているが、これは、昭和四六年当時においても、いまだ、予防接種による副反応に関する情報が被接種者たる国民に十分に周知されていなかったことを示すものである。)。

(6) 厚生省の姿勢、対応について

前記のような禁忌該当者を発見、識別し、これを接種対象者から除外するための十分な予診がなされないまま予防接種が行われるという状況は、予防接種法施行当初から相当長期間続いたが、厚生大臣を頂点とする厚生省当局は、右の状況を改善することなくそのまま放置していた。

① 副作用被害に関する調査

厚生省当局は、予防接種の副作用被害を組織的に調査することについては必ずしも積極的ではなかった。予防接種の副作用被害は古くから知られていたにもかかわらず、我が国において副作用についての調査が行われるようになったのは、ようやく昭和四〇年代に入ってからであり、実際に行われた調査についても、例えば、昭和四〇年以降開始された種痘研究班(高津班)の調査は、大病院に対する簡単な照会調査にとどまっており、種痘調査研究委員会(染谷班)の調査も、同時調査ではあったが、調査対象数が少なく、また継続期間もわずか三か月と短いものであり、もともと予備調査と位置づけられていたにもかかわらず、本調査は行われないままに終わるなど、いずれも、調査内容・調査方法とも不十分なものであった。

また、禁忌の設定との関係においても、被接種者の体調もしくは体質的素因等により重篤な副作用が起こりやすい場合のあること及びどのような素因を禁忌とすべきかについては一定の経験的知識が累積されてきたのであるが、これを積極的に分析し、副作用の起こりやすい体調、素因等を科学的調査によって調べるという組織的作業も十分には行われて来なかった。

② 副作用被害の情報の開示

予防接種によって稀に重篤な被害が生ずることは前記認定のとおり一審被告もこれを認めるところであるが、厚生大臣を頂点とする厚生省当局は、古くから予防接種による悲惨な被害の存在を認識しながら、国民に対しては、こうした被害や予防接種の危険性についての情報を十分に開示せず、高い接種率を維持することに主眼を置いていた。

例えば、人口動態統計によれば、我が国では、昭和二六年(一九五一年)から四一年(一九六六年)までの一六年間に一六四名の種痘による死亡者を記録しており、この毎年の事故死の集計は、厚生省によって国際保健機構(WHO)に報告されていたにもかかわらず、厚生省防疫課(現在の保健情報課)が公表した種痘事故死届出件数は同一期間でわずか六名でしかなく、厚生省当局は、予防接種の副作用事故については、外部に公表しないという態度をとっていた。

③ 接種現場の予診状況に対する措置

厚生省当局は、接種現場の運用実態、接種医の認識状況、被接種者側の認識状況は、前記のとおり、禁忌該当者を識別、除外するための予診を行うには極めて不十分な状況にあることは十分認識していたものと推認されるが、昭和五〇年頃までは、その状況を改善するような実効性のある措置をとらなかった。

例えば、日本医師会は、昭和三四年一月三〇日付けで、厚生省公衆衛生局長に対し、「従来、予診は比較的簡便にされていたが今後はどうするのか。」という趣旨の問合わせを発しているが、厚生省公衆衛生局長は、「予防接種実施規則四条の規定は、健康診断を行う際の診断方法の水準を示したものであって被接種者一人一人に対して同条に示されたすべての方法による診察を行う趣旨でないことは、従前のとおりであります。」と回答し、従前の予診のやり方を今後も踏襲すれば足りるかのごとき回答をしているのである。

また、厚生省当局の右の姿勢は、昭和三四年以降も変わることはなく、接種現場である市町村においても、予診のために十分な時間を割ける態勢をとろうとしたところはなく、後記の渋谷区医師会の設置した予防接種センターの如く接種現場の体制や予診等について格別の配慮をしているような特別の接種会場を除けば、他の一般の接種現場の状況は変わることがなかった(〈書証番号略〉によれば、京都府医師会の太田廣通医師は、京都府医師会が市町村長の予防接種に対する認識の欠如等を問題とし、医学的に完全な接種体制を確立することなどを要求して、京都府下の予防接種を昭和三七年一二月一日から三八年二月一五日まで停止した事実があることを紹介しているが、この例などは、厚生省当局が接種現場の実情を改善しようとしなかった事実を推認させるものである。)。

④ 渋谷区予防接種センターの運用

自主的に予診等を十分実施できるような体制をとって予防接種を実施してきた渋谷区医師会が運用する渋谷区予防接種センターのやり方をみると、以下のような体制で運用されている。

すなわち、東京都から予防接種業務の委託を受けた渋谷区の医師会は、昭和四四年に予防接種の業務を集中管理し、かつ、予防接種を恒常的に受けられるようにするための常設会場として渋谷区予防接種センターを開設した。そこでは、予診室と接種室を物理的に分け、予診を専門に担当する医師と接種を担当する医師を別々に配置し、まず、予診を担当する医師が問診票を見ながら問診等の予診を行い(問診票のチェックだけで済ますということはない。)、そこで接種可と判断された被接種者につき、接種室で再度接種担当医師がチェックしたうえで接種するというシステムを採用している。また、予診室の入口の所に予防接種を受けるに当たっての注意等を記載した注意書を目につきやすいように掲示し、事前に必ず体温の測定をしてもらったうえ(家庭でして来なかった人にはその場で体温計を貸して測らせる。)、問診票の記載をしてもらっている。医師二人が一組となって、一時間当たり通常、四〇人ないし六〇人程度を処理している。また、予防接種に関する諸問題につき、医師会内部の予防接種センター運営委員会において常時研究会を組織して研究を行い、予診のレベルアップ等に努力している。さらに、渋谷区予防接種センターが主催して外部の会場で集団接種を行う場合も、必ず、予診と接種を担当する医師を分け、接種をしてもよいかどうかにつき二重チェックができる態勢をとっている。しかも、予診担当対接種担当を二対一の割合で配置し、かつ、予診担当には予防接種センター運営委員を務めるようなベテランの医師を配置するという予診重視の態勢をとっている。なお、外部での集団接種の場合は、一五〇人程度を三人一組の医師が担当し、一時間半程度で処理するようにしている。そして、このように、外部での集団接種の場合は、一人に当てられる時間がやや短いという問題等もあるので、接種について問題のあるケースはやや広めに振るい落とすようにし、そういう人は予防接種センターの方に回ってもらって慎重に判断するというシステムをとっている。

このようなやり方で予防接種を実施してきた結果、渋谷区予防接種センターは、昭和五六年までに約一三〇万件の予防接種を実施したが、後遺症を残したり、入院治療を要するような重篤な副反応事故は一件も発生させていない。

⑤ 接種担当医に対する予診の重要性に関する周知の態勢

予診の必要性・重要性等についての一般の接種医の認識状況(レベル)は前記のとおりであったにもかかわらず、厚生省当局が一般の医師を対象に、副反応被害やそれを避けるための予診の重要性等について周知を図るためにとった措置も極めて不十分であり、厚生省当局が昭和四五年ころまでにとった措置は、日本医事新報に実施規則や実施要領の全文を登載した程度であった。

その後、昭和四五年ころ以降になって、厚生省当局も関与して予防接種の副反応や禁忌についての文献や論文が刊行され出したが、一般の医師等の目につくような形で刊行され出したのは、多くは昭和四〇年代も末ころになってからであった。例えば、予防接種副反応研究班という公的な名前で、予防接種を担当する医師向けに、予防接種の副反応や禁忌の内容につき詳細に解説した手引きの案が作成されたのは、昭和四九年四月になってからであり、それが正式に手引書として刊行されたのは、ようやく昭和五〇年七月になってからのことである。

もっとも、昭和四五年以前にも、昭和二四年には社団法人細菌製剤協会編で「予防接種講本」が出され、また、昭和二八年には厚生省防疫課編で「防疫必携」、昭和三九年には厚生省防疫課監修で「防疫シリーズ・痘そう」がそれぞれ刊行されたことはあるが、このような書籍は防疫の専門家以外の、接種を現実に担当する一般の開業医等の目にまで広く触れるものではなく、また、そこでの副反応事故についての分析も、例えば、「防疫シリーズ・痘そう」では、日本では種痘後脳炎の発生は極めて稀で心配はいらないと断定しているなど、予防接種を推進する方向での記述が目立つもので、禁忌や予診の必要性についての一般医師の認識レベルを引きあげる方向のものではなかった。

⑥ 被接種者側への禁忌の意義の啓蒙

副反応被害の存在、これを避けるための禁忌事由、そして禁忌該当者を識別、除外するための予診の重要性についての一般国民の認識レベルが極めて低いものであり、予診を実効あらしめるための被接種者側の十分な動機づけが何らできていなかったことは前記のとおりであるが、厚生省当局は、これらの状況についても、これを放置したまま改善する措置はほとんど講じなかった。

右の点について、旧実施要領においては、一応、「多人数を対象として予診を行う場合には、接種場所に禁忌に関する注意事項を掲示し、又は印刷物として配布して、接種対象者から健康状態及び既往症等の申出をさせる等の措置をとり禁忌の発見を容易ならしめること」、「予防接種を行う前には、当該予防接種の副反応について周知徹底を図り、被接種者に不必要な恐怖心を起こさせないようにすること」が定められてはいた。

しかしながら、現実には、厚生省当局及び各地方自治体ともにその点を被接種者である国民に積極的に周知させようという姿勢に乏しかったため、学校等で集団接種が行われるような場合でも、全く禁忌についての掲示がされないか、たとえ掲示されたとしても、注意事項を紙に書き、教室の黒板に張っておくといった、被接種者側の注意をほとんど引かない、形式的な周知方法がとられることが多かった。また、被接種者に対し予防接種の実施を知らせる通知等の中でも、禁忌については全く触れていないものが多く、しかも、自治体関係者の禁忌の内容の理解が正確でないことも多かったため、たとえ禁忌について触れている場合でも、禁忌のすべてを網羅しない不完全なものも多かった。さらに、地方自治体が交付する母子手帳(母子健康手帳)の記載内容をみると、昭和四〇年代の初めころまで使用されていた母子手帳では、予防接種は法律上の義務であり、必ず予防接種を受けるようにという記載のみがなされ、禁忌については何ら触れられていない。昭和四〇年代半ばころになると、禁忌が記載されている母子健康手帳も出てくるようになるが、その記載内容は、禁忌の記載としては依然として不完全なものが多い現状が続いた。

なお、昭和三九年に刊行された厚生省防疫課監修の前記「防疫シリーズ・痘そう」は、種痘の副作用としての種痘後脳炎の存在について触れてはいるが、種痘の副作用は、「日本での発生はきわめてまれですから、決して種痘をおそれる必要はないのです。」と結んでおり、かえって禁忌を啓蒙する観点からはマイナスの影響を及ぼすような内容になっている。

その後、昭和四五年の種痘禍の報道等により予防接種の副反応の問題が社会問題化したことにより、厚生省当局は、矢継ぎ早に通知を発し、問診票を活用すること等を指示するとともに、被接種者及び保護者への周知の徹底についても指示したが、その内容は、いまだ、軽度の副反応は従来から見られるもので、被接種者及び保護者がいたずらに不安を起こさないよう、また、予防接種に関する知識を普及させて予防接種に理解と協力を求めようという点に重点を置くものであった。そして、昭和四五年以降、徐々に、予防接種の副反応や禁忌について触れた一般人向けの啓蒙書も刊行されるようになったが、その多くは昭和四〇年代末以降刊行されたものであった。

(三) まとめ

以上に認定した事実によれば、接種現場の状況は、禁忌該当者を発見識別し、これを接種対象から除外するための予診を行うための体制としては、極めて不十分なものであったが、接種現場の予診体制がこうした不十分な状況となった原因は、もともと、厚生大臣あるいは厚生省当局が予診の重要性を周知徹底させず、十分な予診を実施できるような予診体制を整備しなかったことにあるものと認められる。

もっとも、厚生大臣あるいは厚生省当局は、予診の重要性を指摘し、予診を行う際の基準として前記の旧実施要領のような定めを設けているが、こうした厚生省当局の設定した接種人員の上限の人数を守ったとしても、接種担当医が一人の被接種者に割ける時間は、種痘の場合でもわずか一分に満たず、それ以外の予防接種ではさらにそれより少なく、接種時間以外に禁忌該当者を発見するための十分な予診を行う時間がとれないことは明らかであって、こうした実際上十分な予診を行うことができないような基準を設定したことは、それ自体が厚生大臣としての注意義務に違反するものというべきである。

のみならず、厚生大臣を初めとする厚生省当局は、こうした基準さえも遵守しない接種現場の予診状況を認識しながら、接種現場の不十分な予診体制を長期間にわたって放置していたものであって、接種現場の予診体制を速やかに改善するための具体的措置を行うべき義務にも違反したものと言わざるをえない。

なお、接種現場における予診の体制を改善することによって、予防接種による重篤な副反応被害を防止することが可能であったことは、充実した予診を実施できるような体制をとって予防接種を実施してきた模範的な例とされる前記の渋谷区予防接種センターにおいて、今までに全く重篤な副反応事故が発生していないことからも窺い知ることができるものである。

また、予防接種による副作用被害を避けるためには、予診が極めて重要で有効なものであり、禁忌該当者を識別、除外するための予診が十分に行われるためには、接種場所・接種に費やす時間・接種を行うスタッフといういわば接種体制の面での充実以外にも、接種を行う者とこれを受ける者の双方における予診の重要性等についての知識・認識レベルとが相まって向上することが必要であるから、伝染病の伝播及び発生の防止その他公衆衛生の向上及び増進を任務とする厚生省の長として同省の事務を統括する厚生大臣には接種担当医及び被接種者である国民の双方に予診や禁忌の重要性を周知徹底させるための具体的な施策をとるべき義務もあったところ、前記認定のように、予防接種を担当する医師や保健婦等の禁忌や予診の重要性についての認識が低く、禁忌を識別するためには、予診が必須不可欠のものであるという認識が接種を行う側に浸透していなかったのであるから、こうした実情に対して速やかに適切な措置を講ずべきであったにもかかわらず、これらの点については、厚生大臣は、昭和四五年ころに日本医事新報に実施規則や実施要領の全文を登載する程度の措置をとったにとどまり、予防接種を担当する医師向けに、予防接種の副反応や禁忌の内容を詳細に解説した正式な手引書を刊行するという具体的な対応をとったのも昭和五〇年七月になってからであって、こうした経過からすれば、厚生大臣には、接種を担当する一般の医師に禁忌者を除外するための予診の重要性を周知徹底すべきであったのに、昭和五〇年ころまで積極的にこれを行わなかった過失があるというべきである。

さらに、禁忌該当者であるか否かの判断を医師が的確に行うには、被接種者の側が禁忌の重要性について十分認識を持ったうえで、自分の健康状態等について知っていることを接種担当医に対して積極的に、かつ、できるだけ正確に申し出ることの必要性・重要性を十分認識していることが前提となるところ、厚生大臣は、被接種者である国民に対し、悲惨な被害と予防接種の危険性についての情報を十分に開示せず、高い接種率を維持することに主眼を置いていたため、これを国民に周知させようという姿勢に乏しく、そのことが、禁忌者を除外するために必要とされる予診の内容を不十分なものとさせた原因となったものであって、被接種者である国民に予診の意義、重要性を周知徹底させるなどの措置を行うべき義務にも違背していたものというべきである。

4  結論

本件各被害児四八名は、前記1、2において判示したとおり、いずれも禁忌者に該当していたものと推定される者であるところ、昭和二三年から昭和五〇年の間に発生した本件各被害児の副反応被害は、いずれも厚生大臣が禁忌者を除外するための十分な予診を受けさせるための体制を速やかに確立し、地方自治体あるいはその委託を受けて予防接種を実施する開業医等に対してその体制を確立させるような適切な措置を講ずべきであったのに、前記のような不十分な基準を設定したり、不十分な予診体制のまま予防接種を実施していた接種現場の予診体制を改善することを怠ったために生じたものであり、厚生大臣には、本件各被害児に生じた本件各事故の発生を事前に予見する可能性も、禁忌該当者を適切に除外するための具体的措置を講じていればその発生を未然に回避する可能性もあったというべきである。

したがって、一審被告は、本件各被害児に重篤な副反応事故が生じたことについて、国家賠償法一条一項に基づく責任を免れないというべきである。

第七損害(請求原因7)について

一被害児金井眞起子、同池上圭子を除く本件各被害児の損害の状況について

〈書証番号略〉、証人高倉弘、同吉田富子、同小林百合子、同上野幸子、同金井芳雄(いずれも原審)の各証言、一審原告上田純子法定代理人上田末子、同藤本章人法定代理人藤本みち子、同末廣美佳法定代理人末廣廣子、同木村尚孝法定代理人木村時江、同西晃市法定代理人西悦子、同高橋勝巳法定代理人高橋陽己(いずれも原審)の各尋問の結果、一審原告稲脇豊和本人、同三好道代本人、同毛利舜子本人、同柳澤二美子本人、同常信知子本人、同三原洋子本人、同中尾八重子本人、同前田訓代本人、同野々垣久美子本人、同安田明美本人、同藤井鈴恵本人(いずれも原審)の各尋問の結果および各検証(いずれも原審)の結果によれば、被害児番号14金井眞起子及び同41池上圭子を除く本件各被害児及びその家族らが被った原審口頭弁論終結時までの被害の状況及び介護を必要とした程度は、原判決(全六冊の二)の〔原告各論〕の一ないし一三、一五ないし四〇、同四二ないし四八の各「5損害」欄記載のとおりであることが認められる。

また、別紙⑰「被害児のその後の状況等一覧表」(本判決第四分冊末尾添付)の「認定に供した証拠」欄記載の各証拠によれば、同一覧表記載の各被害児の原審口頭弁論終結時以後の状況及び家族らの介護の状況等は、同一覧表の各被害児に対応する「その後の状況」欄記載のとおりであることが認められる。

なお、被害児番号14金井眞起子及び同41池上圭子については、後記のとおり除斥期間の経過によりその請求権が消滅しているものと解されるので、これらの各被害児についての損害認定はしない。

二包括一律請求について

一審原告らは、本件各被害児が被った損害が共通のものであり、等質性があるから、損害額は包括一律的に算定すべきであるとして、弁護士費用を除く本件各被害児の損害額について、死亡者については九〇〇〇万円あるいは七〇〇〇万円、最重度のAランクの被害者については一億二〇〇〇万円、重度のBランクの被害者については九〇〇〇万円(但し、被害児番号21四方正太については五〇〇〇万円)、その他のCランク被害者については五〇〇〇万円(但し、被害児番号41池上圭子については二五〇〇万円)を請求すると主張するが、本件においては、本件各被害児の接種を受けた時期、被害の状況、介護を要した期間、被害者救済制度によって給付を受けた内容等が異なり、それに応じて、本件各被害児の被った被害の状況も、被害児ごとに相当程度異なることが認められるから、本件においては、その損害額を包括一律的に算定するのは相当ではなく、本件各被害児の被害の状況に応じて個別的に算定するのが相当である。

したがって、本件各被害児の損害額を包括一律的に算定すべきであるとの一審原告らの主張は採用できない。

三田中調査について

(一)  〈書証番号略〉及び証人田中昌人(当審)の証言によれば、別紙⑩「新版K式発達検査による結果一覧表」記載の被害児二二名については、平成四年七月八日から同年九月一五日にかけて、田中昌人・田中杉恵の両教授による新版K式発達検査が実施され、その結果は、同一覧表記載のとおりであったことが認められる。

(二)  ところで、田中調査は、田中証人の証言によっても明らかなとおり、被検査者の精神発達の状況を明らかにすることによって、将来の介護の指針を立てることに主眼のあるものであって、損害の状況を直接調査するための検査ではないから、これを直ちに損害額算定の基準として一般化すべき性質のものでないことはいうまでもない。

しかしながら、その調査の手法は、被検査者の現在の状況を課題を遂行できるかどうかという点から客観的に把握しようとするものであるから、その検査によって得られた結果は、被検査者の発達状態を示す一つの基準として、それなりの合理性を有するものと認められる。

したがって、本件における本件各被害児に生じた損害の程度を評価する際においても、右調査結果を参考にすることが望ましいと考えられる。

四被害児金井眞起子、同池上圭子を除く本件各被害児の損害額の算定について

前記一認定の各被害児及びその家族らが受けた被害の状況、介護(あるいは介助)を必要とする程度並びに前記三の田中調査の発達検査の結果等を総合して判断すると、右各被害児及びその家族らが受けた被害は、その被害の内容に応じて、被害者を死亡被害児と生存被害児に分け、生存被害児をさらに日常生活に全面的な介護を要する後遺障害を有する被害児(Aランク生存被害児)、日常生活に他人の介助を必要とする後遺障害を有する被害児(Bランク生存被害児)、一応他人の介助なしに日常生活を維持することが可能な程度の後遺障害を有する被害児(Cランク生存被害児)とに区別し、右の区別にしたがって、各被害児の損害額を個別に算定するのが相当である。

なお、一審原告らは、逸失利益の算定に当たって、被害児の性別によりその基礎となる賃金に相違を設けるべきではないと主張するが、賃金センサスは、各年度における社会の賃金の実情を反映したものであるから、逸失利益の算定においてもこれを考慮せざるを得ない。したがって、この点についての一審原告らの主張は採用できない。但し、男女の賃金格差が相当程度あることに鑑み、その生活費の控除割合は、男子五〇パーセント、女子三〇パーセントとして、その実質的な公平を図ることとする。

1  死亡被害児(その一)

(一) 逸失利益

別紙⑱(一)B「死亡被害児(その一)の逸失利益計算表」(本判決第四分冊末尾添付)記載の一四名の被害児は、本件各予防接種によって本件各事故に遭わなければ、満一八歳から満六七歳までの四九年間就労できたはずである。そこで、右各被害児の本件各予防接種時における逸失利益の現価を算出すると、以下のとおりとなる。

(1) 一八歳時から本件口頭弁論終結時まで

一八歳時から本件口頭弁論終結時である平成五年における満年齢までについては、それぞれ男女別に、一八歳時の年度の賃金センサスの「産業計、企業規模計、学歴計」(第一巻第一表、以下も同様の表による。)の全労働者平均賃金と平成三年度賃金センサスの「産業計、企業規模計、学歴計」の全労働者平均賃金(各年度の賃金センサスの各賃金額は当裁判所に顕著である。)とを平均した額の収入を得ることができたにもかかわらず、これを喪失したものと推認し、右の金額を基礎として、生活費控除を男子五〇パーセント、女子三〇パーセントとし、ライプニッツ式計算法により、本件各予防接種時までの年五分の割合による中間利息を控除するものとする。

そうすると、右期間の逸失利益の現価は、前記計算表の「逸失利益A」欄記載の金額となる。

(2) 本件口頭弁論終結時から六七歳時まで

本件口頭弁論終結時から就労可能最終年齢である六七歳時までは、男女別に、それぞれ平成三年度の賃金センサスの「産業計、企業規模計、学歴計」の全労働者平均賃金程度の収入を得ることが可能であったにもかかわらず、これを取得することができなかったものと推認し、右の金額を基礎として、生活費控除を男子五〇パーセント、女子三〇パーセントとし、ライプニッツ式計算法により、本件各予防接種時までの年五分の割合による中間利息を控除することとする。

そうすると、右期間の逸失利益の現価は、前記計算表の「逸失利益B」欄記載の金額となる。

(二) 慰謝料

右各死亡被害児は、本件各予防接種当時、被害児福山豊子が一〇歳、同人を除くその余の死亡被害児がいずれも三歳未満の乳幼児であり、本件各予防接種の当日あるいはその後のわずかの期間内に死亡しており、その生涯は余りにも短く痛ましいものである。これらの事情を考慮すると、慰謝料は各被害児一人当たり一五〇〇万円とするのが相当である。

(三) 損害合計額

以上によると、右各死亡被害児の弁護士費用を除く損害合計額は、別紙⑱(一)A「死亡被害児(その一)の認定損害額一覧表」(本判決第四分冊末尾添付)の「損害額合計」欄記載の金額となる。

2  死亡被害児(その二)

(一) 逸失利益

別紙⑱(二)B「死亡被害児(その二)の逸失利益計算表」(本判決第四分冊末尾添付)記載の五名の被害児は、本件各予防接種によって本件各事故に遭わなければ、満一八歳から満六七歳までの四九年間就労できたはずである。また、被害児増田裕加子、同幸長睦子、同稲脇豊和、同菅美子はAランク生存被害児相当であるから、その労働能力喪失率は一〇〇パーセントと認めるべきであり、被害児森井規雄はCランク生存被害児相当であって、その労働能力喪失率は六〇パーセントであったと認めるのが相当である。

そこで、前記の死亡被害児(その一)と同様の方法により、右各被害児の本件各予防接種時における逸失利益の現価を算出すると、以下のとおりとなる。

(1) 一八歳時から死亡時まで

一八歳時から各死亡時までについては、それぞれ男女別に、一八歳時の年度の賃金センサスと平成三年度の賃金センサスの全労働者平均賃金とを平均した額の収入を得ることができたにもかかわらず、これを喪失したものと推認し、右の金額を基礎として、ライプニッツ式計算法により、本件各予防接種時までの年五分の割合による中間利息を控除するものとする。

そうすると、右期間の逸失利益の現価は、前記計算表の「逸失利益A」欄記載の金額となる。

(2) 死亡時から本件口頭弁論終結時まで

死亡時から本件口頭弁論終結時である平成五年における満年齢までについては、それぞれ男女別に、一八歳時の年度の賃金センサスの全労働者平均賃金と平成三年度賃金センサスの全労働者平均賃金とを平均した額の収入を得ることができたにもかかわらず、これを喪失したものと推認し、右の金額を基礎として、生活費控除を男子五〇パーセント、女子三〇パーセントとし、ライプニッツ式計算法により、本件各予防接種時点までの年五分の割合による中間利息を控除することとする。

そうすると、右期間の逸失利益の現価は、前記計算表の「逸失利益B」欄記載の金額となる。

(3) 本件口頭弁論終結時から六七歳時まで

本件口頭弁論終結時以降から就労可能最終年齢である六七歳時までは、男女別に、それぞれ平成三年度の賃金センサスの全労働者平均賃金程度の収入を得ることが可能であったにもかかわらず、これを取得することができなかったものと推認し、右の金額を基礎として、生活費控除を男子五〇パーセント、女子三〇パーセントとし、ライプニッツ式計算法により、本件各予防接種時までの年五分の割合による中間利息を控除するものとする。

そうすると、右期間の逸失利益の現価は、前記計算表の「逸失利益C」欄記載の金額となる。

(二) 介護(助)費

別紙⑱(二)C「死亡被害児(その二)の介護(助)費計算表」(本判決第四分冊末尾添付)記載の各被害児は、いずれも同計算表の各「死亡年月日」欄記載の日まで生存しており、本件各事故時から死亡時までの期間は、生存被害児と同様、日常生活に介護あるいは介助を要したものと認められるところ、その程度は、被害児増田裕加子、同幸長睦子、同稲脇豊和、同菅美子の四名については、いずれも日常生活に全面介護を必要としたものであるから、後記のAランク生存被害児に準じた介護費を認めるのが相当であり、また、被害児森井規雄は、中学校卒業後一旦就職してから昭和五三年に失職するまでの期間は、一応他人の介助なしに日常生活を維持することが可能であったが、本件事故時から同人が中学校を卒業するまでの間は、日常生活の多くに通常の子供よりも両親の手助けが必要であったこと、昭和五三年に失職してから昭和五七年に死亡するまでのは、情緒不安定のため、ほとんど目を離せない状況となり、父母が常に付き添っていたなどの事情を考慮すると、同人についても、生存中の全期間を通じて、後記Cランク生存被害児に準じた介助費を認めるのが相当である。

そこで、後記のAランク生存被害児の介護費あるいはCランク生存被害児の介助費の算定方法に準じて、右各被害児の本件各予防接種時の介護費あるいは介助費の現価を算出すると、前記計算表の「介護(助)費」欄記載の金額となる。

(三) 慰謝料

右各死亡被害児の被った精神的苦痛に対する慰謝料は、各被害児一人あたり一五〇〇万円をもって相当と認める。

(四) 損害合計額

以上によると、右各死亡被害児の弁護士費用を除く損害合計額は、別紙⑱(二)A「死亡被害児(その二)の認定損害額一覧表」の「損害額合計」欄記載の金額となる。

3  死亡被害児(その三)

(一) 介護費

別紙⑱(三)C「死亡被害児(その三)の介護費計算表」(本判決第四分冊末尾添付)記載の被害児小川健治は、同計算表の「死亡年月日」欄記載の日まで生存しており、本件事故時から死亡時までの期間は、生存被害児と同様、日常生活に介護を要したものと認められ、その介護を必要とした程度は、Aランク生存被害児に相当するものであったと認められる。

しかしながら、既に判示したとおり、同人が本件予防接種によって受けた被害のうち、死亡の点は、本件予防接種との間の因果関係が認められないから、死亡による逸失利益は認められず、介護費も、死亡時までではなく、同人の直接の死因である若年性関節リュウマチが発症するまでの四年間のみが本件事故と相当因果関係のある損害となるというべきである。

そこで、後記のAランク生存被害児の介護費の算定方法に準じて、被害児小川健治の本件予防接種時の介護費の現価を算出すると、同計算表の「介護費」欄記載の金額となる。

(二) 慰謝料

被害児小川健治の被った精神的苦痛に対する慰謝料は、その介護を必要とした期間、介護の程度等を斟酌すると、一〇〇〇万円をもって相当と認める。

(三) 損害合計額

以上によると、被害児小川健治の弁護士費用を除く損害合計額は、別紙⑱(三)A「死亡被害児(その三)の認定損害額一覧表」(本判決第四分冊末尾添付)の「損害額合計」欄記載の金額となる。

4  Aランク生存被害児

(一) 逸失利益

別紙⑱(四)B「Aランク生存被害児の逸失利益計算表」(本判決第四分冊末尾添付)記載の一一名の被害児は、Aランク生存被害児に該当するものと認められるから、労働能力喪失率は一〇〇パーセントと認めるのが相当であり、右各被害児の逸失利益を前記の死亡被害児(その一)と同様の方法により算出すると、以下のとおりとなる。

(1) 一八歳から本件口頭弁論終結時まで

一八歳時から本件口頭弁論終結時までについては、それぞれ男女別に、一八歳時の年度の賃金センサスと平成三年度の賃金センサスの全労働者平均賃金とを平均した額の収入を得ることができたにもかかわらず、これを喪失したものと推認し、右の金額を基礎として、ライプニッツ式計算法により、本件各予防接種時までの年五分の割合による中間利息を控除するものとする。

そうすると、右期間の逸失利益の現価は、前記計算表の「逸失利益A」欄記載の金額となる。

(2) 本件口頭弁論終結時から六七歳時まで

本件口頭弁論終結時以降から就労可能最終年齢である六七歳時までは、男女別に、それぞれ平成三年度の賃金センサスの全労働者平均賃金程度の収入を得ることが可能であったにもかかわらず、これを取得することができなかったものと推認し、右の金額を基礎として、ライプニッツ式計算法により、本件各予防接種時までの年五分の割合による中間利息を控除するものとする。

そうすると、右期間の逸失利益の現価は、前記計算表の「逸失利益B」欄記載の金額となる。

(二) 介護費

別紙⑱(四)C「Aランク生存被害児の介護費計算表」記載の各生存被害児は、本件各予防接種による発症後からその日常生活に全面的な介護を必要としたものであり、また、今後も死亡するに至るまで、その生涯にわたって同様の全面的な介護が必要なものと推認され、その介護を必要とする期間は、右各被害児の本件各事故等における年齢と同年齢の者の平均余命期間(当裁判所に顕著な平成三年簡易生命表によることとし、一年未満は切り捨てる。以下、同様の表による。)に一致するものと認めるのが相当である。

そして、右介護に費やされる労務を金銭に換算して、各被害児の本件各予防接種時における介護費の現価を算出すると、以下のとおりとなる。

(1) 介護開始時から本件口頭弁論終結時まで

介護開始時から本件口頭弁論終結時である平成五年の満年齢時までは、介護が必要となった当時の介護費と平成五年時の介護費の平均をもって介護費算出の基礎となる年間介護費とし、右の金額を基礎として、ライプニッツ式計算法により、本件各予防接種時までの年五分の割合による中間利息を控除するものとし、その際、介護開始時の介護費は、介護開始時点以降本件口頭弁論終結時までの物価の推移等をも考慮し(平成二年を一〇〇とした場合の消費者物価指数が、昭和三〇年13.2、昭和四〇年25.0、昭和五〇年59.2、昭和六〇年93.5、平成三年103.3と著しい上昇を示めしていることは公知の事実である。)、昭和二〇年代については年額三〇万円(月額二万五〇〇〇円)、昭和三〇年代については年額六〇万円(月額五万円)、昭和四〇年代については年額一二〇万円(月額一〇万円)、昭和五〇年代以降は年額一八〇万円(月額一五万円)とし、本件口頭弁論終結時である平成五年時の介護費については年額一八〇万円(月額一五万円)とすることとする。

そうすると、Aランク生存被害児の介護開始時から本件口頭弁論終結時までの本件介護費の現価は、前記計算表の「介護費A」欄記載の金額となる。

(2) 本件口頭弁論終結時から平均余命期間最終年齢時まで

本件口頭弁論終結時である平成五年の満年齢時から平均余命期間最終年齢までは、年額一八〇万円(月額一五万円)をもって介護費算出の基礎となる年間介護費とし、右の金額を基礎として、ライプニッツ式計算法により、本件各予防接種時までの年五分の割合による中間利息を控除するものとする。

そうすると、Aランク生存被害児の本件口頭弁論終結時から平均余命期間最終年齢までの本件介護費の現価は、前記計算表の「介護費B」欄記載の金額となる。

(三) 慰謝料

Aランク生存被害児の被った精神的苦痛に対する慰謝料は、一五〇〇万円をもって相当と認める。

(四) 損害合計額

以上によると、右各Aランク生存被害児の弁護士費用を除く損害合計額は、別紙⑱(四)A「Aランク生存被害児の認定損害額一覧表」(本判決第四分冊末尾添付)の「損害額合計」欄記載の金額となる。

5  Bランク生存被害児

(一) 逸失利益

別紙⑱(五)B「Bランク生存被害児の逸失利益計算表」(本判決第四分冊末尾添付)記載の七名の被害児は、Bランク生存被害児に該当するものと認められるから、労働能力喪失率は九〇パーセントと認めるのが相当であり、右各被害児の逸失利益を前記の死亡被害児(その一)と同様の方法により算出すると、以下のとおりとなる。

(1) 一八歳から本件口頭弁護終結時まで

一八歳時から本件口頭弁護終結時までについては、それぞれ男女別に、一八歳時の年度の賃金センサスと平成三年度の賃金センサスの全労働者平均賃金とを平均した額の収入を得ることができたにもかかわらず、これを喪失したものと推認し、右の金額を基礎として、ライプニッツ式計算法により、本件各予防接種時までの年五分の割合による中間利息を控除するものとする。

そうすると、右期間の逸失利益の現価は、前記計算表の「逸失利益A」欄記載の金額となる。

(2) 本件口頭弁論終結時から六七歳時まで

本件口頭弁論終結時以降から就労可能最終年齢である六七歳時までは、男女別に、それぞれ平成三年度の賃金センサスの全労働者平均賃金程度の収入を得ることが可能であったにもかかわらず、これを取得することができなかったものと推認し、右の金額を基礎として、ライプニッツ式計算法により、本件各予防接種時までの年五分の割合による中間利息を控除するものとする。

そうすると、右期間の逸失利益の現価は、前記計算表の「逸失利益B」欄記載の金額となる。

(二) 介助費

別紙⑱(五)C「Bランク生存被害児の介助費計算表」(本判決第四分冊末尾添付)記載の各生存被害児は、本件各予防接種による発症後から現在まで日常生活に他人の介助を必要としたものであり、また、今後も死亡するに至るまで、その生涯にわたって日常生活に他人の介助を必要とするものと推認され、その介助を必要とする期間は、右各被害児の本件各事故時における年齢と同年齢の者の平均余命期間に一致するものと認めるのが相当である。

そして、前記のAランク生存被害児と同様の方法により、右介助に費やされる労務を金銭に換算して、各被害児の本件各予防接種時における介助費の現価を算出すると、以下のとおりとなる。

(1) 介助開始時から本件口頭弁論終結時まで

介助開始時から本件口頭弁論終結時である平成五年の満年齢時までは、介助開始時の介助費と平成五年時の介助費の平均をもって介助費算出の基礎となる年間介助費とし、ライプニッツ式計算法により、本件各予防接種時までの年五分の割合による中間利息を控除するものとし、その際、右介助費算出の基礎となる年間介助費は、前記Aランク生存被害児の年間介護費の約七〇パーセント程度とするのが相当であるから、介助開始時の介助費は、昭和三〇年代については年額四〇万円、昭和四〇年代については年額八〇万円、昭和五〇年代以降については年額一二〇万円とし、本件口頭弁論終結時である平成五年時の介助費については年額一二〇万円とすることとする。

そうすると、Bランク生存被害児の介助開始時から本件口頭弁論終結時までの本件介助費の現価は、前記計算表の「介助費A」欄記載の金額となる。

(2) 本件口頭弁論終結時から平均余命期間最終年齢時まで

本件口頭弁論終結時である平成五年の満年齢時から平均余命期間最終年齢までは、Aランク生存被害児の年間介護費の約七〇パーセントである年額一二〇万円をもって介助費算出の基礎となる年間介助費とし、右の金額を基礎として、ライプニッツ式計算法により、本件各予防接種時までの年五分の割合による中間利息を控除するものとする。

そうすると、Bランク生存被害児の本件口頭弁論終結時から平均余命期間最終年齢までの本件介助費の現価は、前記計算表の「介助費B」欄記載の金額となる。

(三) 慰謝料

Bランク生存被害児の被った精神的苦痛に対する慰謝料は、一二〇〇万円をもって相当と認める。

(四) 損害合計額

以上によると、右各Bランク生存被害児の弁護士費用を除く損害合計額は、別紙⑱(5)A「Bランク生存被害児の認定損害額一覧表」の「損害額合計」欄記載の金額となる。

6  Cランク生存被害児

(一) 逸失利益

別紙⑱(六)B「Cランク生存被害児の逸失利益計算表」(本判決第四分冊末尾添付)記載の八名の被害児は、Cランク生存被害児に該当するものと認められるところ、その各被害の状況に照らすと、その労働能力喪失率は、被害児前田憲志、同木村尚孝、同西晃市についてはいずれも七五パーセント、同上田純子については六〇パーセント、同大喜多雅美、同藤本章人、同高橋勝巳、同原雅美についてはいずれも四〇パーセントと認めるのが相当であり、右各被害児の逸失利益を前記の死亡被害児(その一)同様の方法により算出すると、以下のとおりとなる。

(1) 一八歳から本件口頭弁論終結時まで

一八歳時から本件口頭弁論終結時までについては、それぞれ男女別に、一八歳時の年度の賃金センサスと平成三年度の賃金センサスの全労働者平均賃金とを平均した額の収入を得ることができたにもかかわらず、これを喪失したものと推認し、右の金額を基礎として、ライプニッツ式計算法により、本件各予防接種時までの年五分の割合による中間利息を控除することとする。

そうすると、右期間の逸失利益の現価は、前記計算表の「逸失利益A」欄記載の金額となる。

(2) 本件口頭弁論終結時から六七歳時まで

本件口頭弁論終結時以降から就労可能最終年齢である六七歳時までは、男女別に、それぞれ平成三年度の賃金センサスの全労働者平均賃金程度の収入を得ることが可能であったにもかかわらず、これを取得することができなったものと推認し、右の金額を基礎として、ライプニッツ式計算法により、本件各予防接種時までの年五分の割合による中間利息を控除することとする。

そうすると、右期間の逸失利益の現価は、前記計算表の「逸失利益B」欄記載の金額となる。

(二) 介助費

別紙⑱(六)C「Cランク生存被害児の介助費計算表」(本判決第四分冊末尾添付)の各生存被害児は、現在は、一応他人の介助なしに日常生活を営むことが可能となっているものと認められるが、同計算表の事故時年齢から介助不要時年齢までの期間は、日常生活の多くに通常の児童よりも家族の手助けが必要であったものと推認されるから、これらの被害児についても、右の期間については、介助の程度に応じた介助費を認めるのが相当である。

そして、右介助に費やされる労務を金銭に換算して、各被害児の本件各予防接種時における介助費の現価を算出すると、以下のとおりとなる。

すなわち、介助開始時の介助費と介助不要時の介助費の平均をもって介助費算出の基礎となる年間介助費とし、ライプニッツ式計算法により、本件各予防接種時までの年五分の割合による中間利息を控除するものとし、その際、右介助費算出の基礎となる年間介助費は、前記Aランク生存被害児の年間介護費の約五〇パーセント程度とするのが相当であるから、介助開始時及び介助不要時の各介助費は、昭和三〇年代については年額三〇万円、昭和四〇年代については年額六〇万円、昭和五〇年代については年額九〇万円とすることとする。

そうすると、Cランク生存被害児の介助開始時から介助不要時までの本件各予防接種時の本件介助費の現価は、同計算表の「介助費」欄記載の金額となる。

(三) 慰謝料

Cランク生存被害児の被った精神的苦痛に対する慰謝料は、被害児前田憲志、同木村尚孝、同西晃市についてはそれぞれ八〇〇万円、同上田純子については六〇〇万円、同大喜多雅美、同藤本章人、同高橋勝巳、同原雅美についてはそれぞれ四〇〇万円をもって相当と認める。

(四) 損害合計額

以上により、右各Cランク生存被害児の弁護士費用を除く損害合計額は、別紙⑱(六)A「Cランク生存被害児の認定損害額一覧表」(本判決第四分冊末尾添付)の「損害額合計」欄記載の金額となる。

第八違法性阻却事由(抗弁1)について

本件各予防接種が実施当時適法に効力を有していた法令及び法令に準ずる通達等に基づいてなされた行為であることはいうまでもないが、予防接種の実施それ自体が法令に基づく適法な行為であることと、予防接種を実施するうえでの注意義務を怠り、被接種者に重篤な生命あるいは健康への被害をもたらした場合に国家賠償法上の責任を負うこととは全く別の事柄であって、単に、予防接種の実施が法令等に基づく行為であることから、その生じた結果すべてが社会的に相当な行為として是認され、その違法性が阻却されるということにならないことは明らかである。したがって、一審被告の抗弁1は理由がない。

第九時効及び除斥期間(抗弁2)について

一民法七二四条前段の三年の消滅時効について

1  本件各事故から三年の消滅時効について

(一) 本件各被害児が本件各予防接種を受けたのち、約一か月位の間に本件各予防接種による本件各事故が発症していること、本件各被害児全員(四八名)に係る一審原告らがいずれも本件各事故(あるいは一審被告の主張する本件各予防接種から約一か月後の時効起算日)から三年以上経過した後に本件訴訟を提起したことは、前記第一及び第二において認定した原判決(全六冊の二)の〔原告各論〕の各「1接種の状況」及び「2経過」に関する事実並びに本件記録上から明らかである。

(二) しかしながら、民法七二四条前段の短期消滅時効が完成するためには、被害者が「加害者」を認識していたこと、すなわち、本件についていえば、本件各被害児に係る一審原告又はその法定代理人らが、本件各事故が一審被告の不法行為に基づくものであることを認識していたことが必要であるところ、本件各事故発生当時、同人らにおいて、本件各事故が一審被告の違法な行為に基づいて生じたことを認識していたことを認めるに足りる証拠はない。したがって、一審被告の抗弁2(二)(1)①の主張は採用できない。

2  本件行政救済措置の給付申請書の作成時から三年の消滅時効について

(一) 被害児番号1ないし5、8ないし14、16ないし31、33ないし41、43ないし48の各被害児(四三名)に係る一審原告らについて、一審原告又はその法定代理人らが一審被告主張の日までに本件行政救済措置(昭和四五年七月三一日閣議了解に基づく行政救済措置)を受けるための給付申請書を作成したことは当事者間に争いがなく、弁論の全趣旨によれば、同人らは、いずれもそのころ右給付申請書を予防接種済証等とともに当該市町村長等に提出していることが認められる。

そうすると、右各被害児に係る一審原告又はその法定代理人らは、少なくとも、そのころには本件各事故が本件各予防接種を原因とするものであることを知ったものと推認することができる。

(二) しかしながら、前記に判示したとおり、民法七二四条前段の短期消滅時効が完成するためには、同人らにおいて本件各事故の発生が一審被告の不法行為に基づくものであることを認識していたことが必要であるところ、本件行政救済措置に基づく給付申請書を作成提出した当時、同人らは、前記各被害の発生が一番被告の機関委任事務として地方公共団体の長が実施し、あるいは一審被告が国の施策として地方自治体等に実施させた本件各予防接種を原因とするものであることを認識するに至ったことは認められるものの、それ以上に、同人らが一審被告の行為の違法性まで認識していたと認めるに足りる証拠はない。したがって、一審被告の抗弁2(二)(1)②の主張も採用できない。

3  本件行政救済措置の支給認定の通知から三年の消滅時効について

(一) 被害児番号2、3、5、8、11、14、17、22ないし29、34、36、43ないし46、48の各被害児(二二名)に係る一審原告らについて、一審原告又はその法定代理人らが一審被告主張の日に本件行政救済措置の支給認定通知を受けたことは当事者間に争いがないから、前記と同様、右各被害児に係る一審原告又はその法定代理人らは、少なくとも、そのころには本件各予防接種に係る被害が本件各予防接種を原因とするものであること自体はこれを認識していたものと推認することができる。

(二) しかしながら、前記と同様、本件行政救済措置の支給認定通知を受けた当時、同人らが、一審被告の行為の違法性を認識していたと認めるに足りる証拠はない。したがって、一審被告の抗弁2(二)(1)③の主張も採用できない。

二民法七二四条後段の二〇年の除斥期間の経過について

1  被害児番号11稲脇豊和、同14金井眞起子、同35田村秀雄、同38菅美子、同41池上圭子、同43野々垣一世の各被害児に係る一審原告ら(眞起子、秀雄、圭子については被害児本人、豊和については当審承継人稲脇正及び同稲脇みつ子、美子については菅ユキエ、一世については野々垣幸一、野々垣久美子)については、本件各予防接種時から右一審原告らの本件訴訟の提起までに二〇年の期間が経過していることが本件記録上明らかである。

2  ところで、民法七二四条後段の二〇年の期間の法的性質については、これを長期時効を定めたものと解するか、除斥期間を定めたものと解するかの見解の対立があるが、最高裁平成元年一二月二一日第一小法廷判決(民集四三巻一二号二二〇九頁)は、右規定は除斥期間を定めたものであると解しており、当裁判所も、右最高裁判決と同様の立場を採るべきであると考えるものである。

そうすると、右各被害児に係る一審原告らについては、いずれも本件訴訟の提起までに除斥期間が経過していることになるから、原則的には、右被害児に係る一審原告及びその相続人らの損害賠償請求権は本件各予防接種時から二〇年の期間の経過とともに消滅することになるものと解さざるを得ない。

3  一審原告らは、民法七二四条後段の規定は、除斥期間ではなく、長期の時効期間を定めたものと解すべきであり、最近の学説もこれを除斥期間と解することには批判的であると主張するが、民法七二四条前段は、被害者が加害者及び損害を知った場合に関する短期時効を定めたものであり、同条後段は、被害者の主観的認識とはかかわりなく、不法行為の時から二〇年という客観的な期間経過の事実によって法律関係を安定させることを目的とした規定と解するのが相当である。また、一審原告らは、仮に民法七二四条後段の規定を適用すべきであるとしても、本件においては、その起算点は、前記六名の被害児らに係る一審原告らにとって、本件予防接種による損害賠償請求を行うことが客観的に可能となった時期は、昭和四五年七月三一日の閣議了解の時であるから、その満了日はそれから二〇年後の平成二年七月三〇日となると解すべきところ、右各被害児はいずれもその期間満了前に本件訴訟を提起していると主張するが、民法七二四条後段は、除斥期間の起算日を「不法行為ノ時ヨリ」と規定しており、後記のように除斥期間の満了が停止されると解すべきような特別な規定のないかぎり、被害者が損害賠償を請求することができたかどうかというような被害者側の主観的な事情はこれを考慮しない趣旨と解されるから、その起算点を右閣議了解の時と解釈することはできないというべきである。

4  したがって、一審被告の抗弁2(二)(2)の主張は理由がある。

第一〇除斥期間の経過(抗弁2)に対する再抗弁について

一意思無能力による訴訟提起の不能(再抗弁3)について(被害児番号11稲脇豊和、同35田村秀雄、同38菅美子関係)

1 民法一五八条は、「時効ノ期間満了前六ケ月内ニ於テ未成年者又ハ禁治産者カ法定代理人ヲ有セサリシトキハ其者カ能力者ト為リ又ハ法定代理人カ就職シタル時ヨリ六ケ月内ハ之ニ対シテ時効完成セス」と規定し、未成年者あるいは禁治産者が法定代理人が欠けた状態にある場合には、その状態が解消するまでの間及びその状態が解消してから六か月の間は消滅時効が停止することを認めているが、その趣旨は、これらの者は行為能力(あるいは意思能力)が十分でなく、権利を有している場合であっても、法定代理人なしにはその権利を保全することが全く期待できないにもかかわらず、行為能力が欠如した状態のまま消滅時効を完成させることは、その結果が余りにも不当であって著しく正義に反することになるため、時効制度を認める一方で、例外的に、これらの者の権利の保護を優先しようとした点にあるものと解される。

そうだとすると、その制度趣旨は、禁治産宣告を受けていない場合であっても、その者が禁治産者と同様の状態にあって実質上行為能力が著しく欠如した状態にある者についても及ぼされるべきであり、また、それを消滅時効の場合に特に限定すべき合理的な理由もないから、除斥期間の満了が問題とされる場面においても類推適用されるものと解するのが相当である。

2  ところで、〈書証番号略〉、証人稲脇みつ子、同田村キミ子、同菅ユキエ(いずれも原審)の各証言及び弁論の全趣旨によれば、被害児稲脇豊和、同田村秀雄、同菅美子の三名の被害児は、いずれも満二〇歳に達した当時(豊和については昭和四六年八月一八日、秀雄については昭和五〇年一二月二八日、美子については昭和四七年一一月三〇日)、禁治産宣告はされていなかったが、禁治産者と同様の著しく事理を弁別する能力を欠き、実質上の行為能力を欠如した状態にあり、本件各事故による損害賠償を請求するための訴訟を自ら提起することは不可能な状態にあったことが認められる(なお、本件記録によれば、右被害児三名について、本件訴訟が提起されたのは、豊和については昭和五〇年八月四日、秀雄及び美子については昭和五四年一〇月一八日であること、豊和については父稲脇正、秀雄については父田村正をそれぞれその特別代理人とする方法によって、本件訴訟の進行が行われていること、また、美子については、美子本人の名義で訴訟が遂行されていたところ、同人の死亡と同時に母菅ユキエが美子の一審原告たる地位を承継したため、特別代理人の選任手続は行われていないが、同人についても、本件訴訟提起当時、特別代理人あるいは後見人の選任手続が必要な状態にあったことが認められる。)。

そうすると、右被害児三名については、民法一五八条の類推適用により、同人らが満二〇歳になった後、同人らが行為能力を有する状態となるか、同人らのために後見人が選任されてから後六か月に至るまでの間は、民法七二四条後段の二〇年の除斥期間の満了は停止されていたものと解するのが相当であるから(本件全証拠によるも、その後本件訴訟の提起時までに右三名の被害児の精神状態が回復し、自ら訴訟提起が可能となった事実や同人らのために後見人が選任された事実はこれを認めることができない。)、本件訴訟提起当時まで除斥期間の満了は停止されていたことになるというべきである。

したがって、右三名の被害児に係る一審原告らの再抗弁3の主張は理由がある。

二裁判外の権利行使による損害賠償請求権の除斥期間内の保存(再抗弁4)について(被害児番号43野々垣一世関係)

1  一審原告野々垣幸一、同野々垣久美子は、本件行政救済措置に基づく給付の支給申請書を作成提出したことによって、本件予防接種に基づく被害についての損害賠償請求権は除斥期間内に保存されたと主張するので、以下、この点について判断する。(なお、被害児稲脇豊和、同田村秀雄に係る一審原告らについても同様の主張はあるが、同人らについては前記の再抗弁に理由があるので、判断の必要がない。)

2  被害児野々垣一世が昭和三三年五月二〇日に本件予防接種を受け、同月三一日に死亡したこと、一世の父母である一審原告野々垣幸一、同野々垣久美子が本件訴訟を提起したのが昭和五四年一〇月一八日であり、本件訴訟の提起が一世の予防接種時から二〇年を経過した後であることは前記認定のとおりであるところ、一審原告野々垣幸一、同野々垣久美子が、昭和三三年五月二〇日の接種日から二〇年を経過する以前である昭和四六年一月一八日に右給付申請書を作成し、そのころ、右給付申請書を大阪市長に提出したことは既に認定したとおりである。

3  そこで、同一審原告らの右給付申請行為が本件損害賠償請求権の除斥期間内の保存といえるかどうかについて検討する。

本件予防接種に基づく損害賠償請求権の請求と本件行政救済措置に基づく給付申請は、一方が不法行為に基づく私法上の損害賠償請求であり、また、他方が公法上の被害者救済制度に基づく請求であって、厳密な意味では、両者の法律的な性質が異なることはいうまでもない。

しかしながら、本件行政救済措置に基づく給付の支給申請を行う行為は、予防接種を原因として発生した被害の補償、補填を目的とするという点では私法上の損害賠償請求と共通の性質を有するものであって、被害の発生原因となった行為の違法性を認識していたかどうかという点についての違いはあるにせよ、被害の回復を求める明確な意思を有しており、実際に権利行使のための行為を行ったという点においては、損害賠償の請求と同等に評価しうるものというべきであるから、除斥期間内の経過による請求権の消滅を阻止するという側面においては、これを裁判外の権利行使として取り扱うことは許されるというべきである。なお、実質的に考えても、本件行政救済措置に基づく給付申請当時、予防接種の被害者らが一審被告が国の政策として行った予防接種を違法なものと認識することは極めて困難であったこと、また、一審被告から同救済措置に基づく給付を受けながら同時に一審被告に対して損害賠償請求を行うことは事実上困難であったと考えられることなどの事情を総合すると、被害者らの給付申請行為を損害賠償請求権の裁判外における権利行使と同視し、これによって損害賠償請求権が保存されたとすることは何ら不当とはいえないものと解される。

ところで、除斥期間の定められている請求権を保存するには、除斥期間の満了までに裁判外で権利行使の意思を明確にすれば足り、裁判上の権利行使を行うまでの必要はないと解すべきであるところ(最高裁平成四年一〇月二〇日第三小法廷判決参照)、一審原告野々垣幸一、同野々垣久美子が行った前記の本件行政措置に基づく給付申請行為は、除斥期間内における権利の保存行為であって、それによって除斥期間の満了は阻止されたことになるから、結局、同一審原告らは、除斥期間の満了前に裁判外で本件損害賠償請求権を保存したことになるというべきである。

したがって、一審原告野々垣幸一、同野々垣久美子の再抗弁4の主張は理由がある。

4  なお、一審被告は、前記のとおり、本件給付申請行為の時点から損害賠償請求権の行使が可能であったとして、右給付申請書作成時からの三年の短期消滅時効の主張(抗弁2(二)②)をしているので、一審原告野々垣幸一、同野々垣久美子らの給付申請行為が損害賠償請求権の権利行使と同視されるとすると、右時点(一審原告野々垣幸一、同野々垣久美子については昭和四六年一月一八日)から、損害賠償請求権の短期消滅時効が進行するのではないかという点が一応問題となる。

しかしながら、本件行政救済措置に基づく給付申請行為を裁判外の権利行使と同視するとはいっても、そのことは、右給付申請行為によって権利の保存がなされたものと同視されるため、損害賠償請求権の除斥期間の満了が阻止されるというにとどまり、右給付申請当時、同一審原告らが一審被告の行為の違法性を認識していなかったことは前記判示のとおりであって、損害賠償請求権それ自体の権利行使を行うことは不可能であったものと認められるから、右給付申請行為時点から当然に損害賠償請求権の短期消滅時効の進行が開始されることにはなるわけでない。

三損害賠償債務の承認(再抗弁5)について(被害児番号14金井眞起子関係)

1  一審原告金井眞起子は、一審被告が同一審原告を本件予防接種の被害児と認定し、本件行政救済措置に基づく給付を行っているのは債務の承認あるいは債務の承認に準ずる行為であるから、以後除斥期間の適用はなくなり、損害賠償請求権は保存されると主張するので検討する。(なお、被害児稲脇豊和、同野々垣一世に係る一審原告らについても同様な主張はあるが、同一審原告にについては前記の再抗弁に理由があるので、判断の必要がない。)

2  被害児金井眞起子が、昭和四六年度に、一審被告から本件行政救済措置に基づく給付(後遺症一時金一三〇万円)を受けている事実は当事者間に争いがない。

3  ところで、一審被告が眞起子に本件行政救済措置による給付を行ったのは、眞紀子が本件予防接種によって受けた被害について、一審被告自らがこれを救済する必要性のあることを認めていることに基づくものであるから、その点からいえば、一審被告の本件行政救済措置に基づく給付行為は、厳密な意味での債務の承認そのものではないが、信義則上民法一四五条の債務の承認に準ずる行為と評価し得る余地が全くないわけでない。

しかしながら、眞紀子が本件予防接種を受けたのは昭和二五年四月二一日であること及び眞紀子が一審被告から本件行政救済措置に基づく給付を受けたのはそれから二〇年を経過した後であることは前記認定のとりおであるから、仮に眞紀子が本件予防接種に基づく損害賠償請求権を有していたとしても、それは昭和二五年四月二一日から二〇年を経過した昭和四五年四月二一日の経過をもって既に消滅してしまっており、一審被告の本件行政救済措置に基づく給付は、その消滅後になされたことになる。

4  したがって、仮に、一審被告が昭和四六年一一月一一日に眞紀子に対して行った本件行政救済措置に基づく給付を債務の承認に準ずる行為とみる余地があり得るとしても、一審被告が右給付を開始する以前に除斥期間が経過してしまっている以上、除斥期間の法的性質からも、眞紀子については、その後に損害賠償債務が復活(あるいは新たに発生)することにはならないというべきであるから、一審被告の給付行為が除斥期間経過後に開始された場合においても損害賠償請求権が保存されるとの一審原告金井眞起子の再抗弁5の主張は採用できない。

四民法七二四条後段を本件に適用すべきでない特段の事情(再抗弁2)について(被害児番号14金井眞起子、同41池上圭子関係)

一審原告らは、本件各予防接種制度が少数の国民の特別犠牲のうえに成立してきた制度であること、また、一審被告が、本件各予防接種から死亡、脳障害という重篤な副作用が稀にではあるが絶えず発生することを十分に認識しながらも、伝染病に対する集団防衛という公共目的のために、全国一律に本件各予防接種を強制し、もしくは一審被告の強力な行政指導のもとに実施してきたものであること、他方、本件各被害児には何らの帰責事由が存しないにもかかわらず、副反応事故を引き受ける結果となっていることなどから、本件における一審原告金井眞起子、同池上圭子については民法七二四条後段の除斥期間の規定は適用すべきでない特段の事情があると主張するが(被害児稲脇豊和、同田村秀雄、同菅美子に係る一審原告らについても同様の主張はあるが、同人らについては既に前記の再抗弁に理由があるので、判断の必要がない。)、民法七二四条後段の除斥期間の規定は、既に判示したとおり、不法行為の時から二〇年という客観的な期間の経過によって法律関係の確定を図ろうとした制度であって、被害者あるいは加害者側の主観的事情を特に問題とするものではないと解するのが相当であるから、本件における予防接種の被害者についてのみ、特にその適用を除外する解釈を行うことはできないというべきである。

したがって、一審原告金井眞起子及び同池上圭子の再抗弁2の主張は採用できない。

五まとめ

以上によれば、一審被告の抗弁2に対する一審原告らの再抗弁2ないし5のうち、被害児番号11稲脇豊和、同35田村秀雄、同38菅美子の各被害児に係る一審原告らの再抗弁3、被害児番号43野々垣一世に係る一審原告野々垣幸一、同野々垣久美子の再抗弁4は理由があるが、一審原告金井眞起子(被害児番号14)及び同池上圭子(被害児番号41)の再抗弁はいずれも理由がないことになる。

第一一損益相殺等(抗弁3)、予防接種法に基づく給付と本件請求との調整(同4)、損害額算定に当たり考慮されるべき減額事由(同5)等について

一損益相殺等(抗弁3)について

1  予防接種健康被害に係る給付について

別紙⑬「予防接種被害に係る給付額一覧表」記載の各被害児に係る一審原告らが、本件行政救済措置および本件救済制度並びに国民年金法あるいは特別児童扶養手当等の支給に関する法律に基づき、一審被告(あるいは地方自治体)から同一覧表記載のとおりの各費目の給付を受けたこと、また、別紙⑭「地方自治体単独給付額一覧表」記載の各被害児に係る一審原告らが、各地方自治体から同一覧表記載のとおりの各費目の給付を受けたことはいずれも当事者間に争いがない。

2  損益相殺の対象項目について

一審被告は、一審原告らが給付を受けた前記各費目のすべての給付を損益相殺の対象に含めるべきだと主張するのに対し、一審原告らは、①医療費、医療手当及び葬祭料、②国民年金法あるいは特別児童扶養手当等の支給に関する法律による給付である障害基礎年金、特別児童扶養手当、障害児扶養手当、特別障害者手当及び福祉手当、③第三者からの見舞金である地方自治体単独給付分については一審原告らの損害額から控除することは許されず、さらに、障害基礎年金については、仮に控除する余地があり得るとしても、年金給付額の四割相当額に限られるべきであると主張するので、以下、この点について検討する。

(一) 医療費、医療手当及び葬祭料について

予防接種法は、市町村長は、給付を受けるべき者が「同一の事由」について損害賠償を受けたときは、その価額の限度において、給付を行わないことができると定めており(同法一九条)、ここにいう同一の事由が認められるときは、予防接種法に基づく給付と損害賠償とは相互補完の関係に立つことになるから、その限りで、損益相殺の対象となると解するのが相当である。また、ここでいう同一の事由とは、単に同一の災害から生じた損害であることを意味するものと解すべきではなく、予防接種法上の給付と損害賠償とが相互補完性を有する関係にある場合をいうものと解される(最高裁昭和六二年七月一〇日第二小法廷判決民集四一巻五号一二〇二頁参照)。

ところで、本件行政救済措置及び本件救済制度における医療費とは、予防接種を受けたことによる疾病について医療を受ける者の医療費の実費であり(予防接種法施行令四条参照)、医療手当とは、通院に要する交通費、入院に伴う諸雑費に充てるためのものであり、葬祭料とは、いうまでもなく葬儀費用を意味するものであって、これらは、本件において、一審原告らが請求している逸失利益、介護(助)費、慰謝料、弁護士費用という損害の各費目とはその趣旨、目的を異にし、右にいう同一の事由の関係にあるものとは認められない。

したがって、これらの各費目については、損益相殺の対象としないのが相当である。

(二) 障害基礎年金について

前記「予防接種被害に係る給付額一覧表」の⑰障害基礎年金欄記載の給付は、国民年金法に基づく老齢、障害、遺族の各基礎年金の一つとして給付される年金であり、疾病にかかり、又は負傷し、一定の障害の状態となったときに支給されるものであるところ(同法一五条、三〇条)、国民年金法は、一審原告らの主張するとおり、国民から保険料を徴収し、それを原資として給付を実施する仕組みを採用しており、その意味では保険料支払いの対価としての性質を一部有しているものと考えられないではない。

しかしながら、他方、同法は、障害もしくは死亡又はこれらの直接の原因となった事故が第三者の行為によって生じた場合において、政府が給付をしたときは、その給付の価額の限度で、受給権者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得するものとし(同法二二条一項)、この場合において、受給権者が第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で、給付を行う責めを免れる(同条二項)とも定めており、第三者の加害行為により障害の状態が生じた場合には、保険料の対価としての性質を特別には考慮せず、同一の事由による損害の二重填補を排除しており、この理は、障害の状態を引き起こした加害者が一審被告である場合も同様と解すべきである。

したがって、障害基礎年金については、その全額を損益相殺の対象とするのが相当である。

(三) 地方自治体単独給付分について

(1) 弁論の全趣旨によれば、前記の「予防接種被害に係る給付額一覧表」の⑫地方自治体単独給付分欄記載の金員は、いずれも、地方自治体が、独自に、主として住民福祉の立場から、一部は、補助金、医療費、交通費等の実費補填の趣旨で、大部分は、見舞金、弔慰金等の趣旨で支給したものであり、予防接種事故を機縁として第三者から贈られた任意の見舞金、弔慰金に類する性質のものであって、一審原告らが被った前記各損害を直接填補する性質を有していないものと認められる。また、実質的に考えても、右給付に相当する金員について、一審被告が地方自治体から求償を受ける関係にあるわけでもないから、これらの金員については、損益相殺の対象としないのが相当である。

(2) なお、一審被告は、右の地方自治体単独給付分が損益相殺の対象とならないとしても、被害児番号10、同15、同21、同31の各被害児ないしは家族らが地方自治体から給付を受けた前記の「地方自治体単独給付額一覧表」記載の各給付のうち、見舞金を除く給付については、少なくとも、本件損害賠償請求権と同一の目的を有するから、損益相殺の対象とすべきであると主張するが、前記(1)と同様、右給付は、その名目のいかんを問わず、地方自治体が前記に判示した見舞金の趣旨で支給したものと理解するのが相当であって、これを損益相殺の対象とするのは相当でないから、一審被告の主張は採用の限りではない。

(四) その他の給付について

弁論の全趣旨によれば、本件行政救済措置及び本件救済制度並びに国民年金法あるいは特別児童扶養手当等の支給に関する法律に基づいて支給された前記の「予防接種被害に係る給付額一覧表」の②後遺症一時金、③後遺症特別給付金、⑧障害児養育年金、⑨障害年金、⑬特別児童扶養手当、⑭障害児福祉手当、⑮特別障害者手当、⑯福祉手当欄記載の各給付は、いずれも本件請求に係る逸失利益あるいは介護(助)費と同一の性質を有し、相互補完の関係にあるものと認められる。したがって、これらの各給付については、損益相殺の対象とするのが相当である。

また、弁論の全趣旨によれば、本件行政救済措置及び本件救済制度に基づいて支給された「予防接種被害に係る給付額一覧表」の④弔慰金、⑤再弔慰金及び⑩死亡一時金欄記載の各給付は、いずれもその支給の対象が死亡被害児の父母等であり、死亡被害児本人の受けた精神的損害を直接填補するものではないが、その親族らの受けた精神的損害を慰謝する性質を有する金員であるから、死亡被害児について相続人固有の慰謝料請求がされていない本件においても(本件における死亡被害児に係る一審原告らの請求は、相続人である一審原告らが被った損害の賠償請求そのものではなく、死亡被害児の被った損害賠償請求権を相続したとの請求がなされている。)、公平の原則上、これらの金員についても、右各給付を受けた死亡被害児の相続人らに係る一審原告らの慰謝料から控除するのが相当である。

3  損益相殺対象費目の本件予防接種時の現価等について

(1) 逸失利益及び介護(助)費の損益相殺額の現価について

本件各被害児の損害を算定するに際し、逸失利益と介護(助)費については、前記のとおり、本件各予防接種時における現価によってその損害額を算定したが、逸失利益と介護費を本件各予防接種時の現価によって算出しながら、その損益相殺の対象となる一審被告からの給付金についてのみ長期間の支払いを単純に足し算して元本から差し引く方法では、最終的な損害額が損益相殺の対象となる各給付のなされた時期によって変動する事態が生ずるのみならず、右各給付が均等に行われている場合よりも後になって高い額が支払われた場合の方が被害者に不利となるなど、その結果も不合理であるから、右損益相殺の対象となる給付についても、その均衡上、本件各予防接種時の現価を算出したうえで、損益相殺を行うのが相当である。

したがって、本件各被害児が本件行政救済措置及び本件救済制度並びに国民年金法あるいは特別児童扶養手当等の支給に関する法律に基づいて給付を受けた前記「予防接種被害に係る給付額一覧表」の金員のうち、逸失利益及び介護(助)費と同一の性質を有する損益相殺対象費目である後遺症一時金、後遺症特別給付金、障害児養育年金、障害年金、特別児童扶養手当、障害児福祉手当、特別障害者手当、福祉手当、障害基礎年金欄記載の各給付については、本件各予防接種時における現価を算出したうえで損益相殺することになるが、その算出は、以下のとおりの方法によるものとする。

すなわち、右損益相殺額の現価は、厳密にいえば、各年度ごとの給付について、それぞれの本件各予防接種時の現価を算出し、それを合算すべきことになるが、こうした方法による計算は極めて煩雑で実際的ではないから、本件においては、給付が最初に行われた年度(年度当初)から最終の給付のあった年度(年度末)までの各給付の総額から年間の平均給付額を算出し、右金額が右期間中継続して支給されたものとみなして、本件各予防接種時の損益相殺額の現価を算出することとする。

そうすると、逸失利益・介護(助)費から損益相殺すべき金額は、別紙⑱(二)D「死亡被害児(その二)の損益相殺額計算表」の「逸失利益・介護(助)費との損益相殺額」、同⑱(四)D「Aランク生存被害児の損益相殺額計算表」の「逸失利益・介護費との損益相殺額」、同⑱(五)D「Bランク生存被害児の損益相殺額計算表」及び同⑱(六)D「Cランク生存被害児の損益相殺額計算表」の各「逸失利益・介助費との損益相殺額」欄記載の金額となる(損益相殺額計算表はいずれも本判決第四分冊末尾添付)。

(2) 慰謝料の損益相殺額について

前記「予防接種被害に係る給付額一覧表」の弔慰金、再弔慰金及び死亡一時金欄記載の各給付は、一審原告らの損害のうちの慰謝料と同一の性質を有する給付と考えられるが、これらについては、その損益相殺の対象となる慰謝料の金額及び損害額の算定における慰謝料の補完的機能などを考慮し、その全額を損益相殺するのが相当と考えられる。

したがって、その損益相殺対象額は、別紙⑱(一)D「死亡被害児(その一)の損益相殺額計算表」、同⑱(二)D「死亡被害児(その二)の損益相殺額計算表」(いずれも本判決第四分冊末尾添付)の各「慰謝料との損益相殺額」欄記載の金額となる。

二予防接種法に基づく給付と本件請求との調整(抗弁4)について

1  予防接種法に基づく将来給付分の控除について

一審被告は、予防接種法に基づく給付について、その将来分についてもこれを控除すべきであると主張するところ、予防接種法上の救済制度による給付が法的な裏付けをもち、将来にわたって継続的にその履行が行われることは確実と考えられるが、給付が現実になされていない以上、そのような将来の給付額を損害額から控除するのは相当ではなく、仮に将来給付を現価に評価してこれを行うとしても相当ではないというべきであるから、一審被告の右主張は採用できない。

2  履行の猶予について

一審被告は、また、障害児養育年金及び障害年金相当額については、労災保険法(旧)六七条一項一号の趣旨を類推適用して、その履行を猶予されるべきであると主張するが、法律上の根拠に乏しく、本件において、右規定を類推適用すべき合理的根拠も見出しがたいから、一審被告の右主張は採用できない。

三損害額算定に当たり考慮されるべき減額事由(抗弁5)について

1  一審被告は、予防接種制度が伝染病の発生、まん延から国民の健康を守る為、国の施策として予防接種を実施せざるを得ないこと、仮に予防接種を実施した結果、違法の問題が生ずるとしても広範な裁量に基づく施策が結果として違法と評価されるにすぎないから、その程度は微弱であり、損害額の算定に当たってもこの点を考慮すべきであると主張する。

しかしながら、予防接種の実施は、その副反応によって直接国民に重篤な被害をもたらす可能性のあることが知られているのであるから、その実施に際して一審被告には極めて高度の注意義務が課せられているといわざるを得ないものであって、それが国の施策として行われるからといって、直ちにその行為が広範な裁量に基づく行為であるとか、違法性が微弱であるとかいうことはできないことはいうまでもない。したがって、一審被告の右主張は失当である。

2  一審被告は、原判決(全六冊の六)の別紙Ⅴ「損害額の減額について考慮されるべき事実一覧表」記載のとおり本件各被害児側にも本件各事故の発生もしくは被害の拡大に寄与した身体症状があったとして、因果関係の割合的認定の法理又は過失相殺ないし損害公平分担の法理により、これを損害額算定に当たり考慮すべきであると主張する。

しかしながら、被害児番号1高倉米一、同3塩入信子、同4秋山善夫、同6増田裕加子、同7清原ゆかり、同24柳澤雅光、同26三原繁、同32横山信二、同33大橋敬規、同40原雅美、同43野々垣一世、同45垣内陽告の右一覧表の「禁忌事項」の欄記載の各事実は、むしろ一審被告において十分な予診を実施することによってこれを発見すべきことが期待されているものであるから、本件各被害児にこうした事由があるとしても、これを損害額算定に当たっての減額事由とするのは相当ではない。

また、被害児番号1高倉米一、同3塩入信子、同8小林誠、同16上田純子、同21四方正太、同22三好元信、同26三原繁、同27中尾仁美、同30澤﨑慶子、同36西晃市、同46山本実、同47安田美保の右一覧表の「その他」欄記載の各事実のうち、被害児高倉米一が予診時にけいれんの事実を告げなかった事実は、本件予防接種当時、一審被告が予診の重要性を被接種者に十分に告知しなかったことに主たる原因があると解されるから、これを減額事由とするのは相当ではないし、その余の右各被害児についての事由も、そうした抽象的な可能性のあることを理由に損害額を減額することはできないというべきである。

次に、右一覧表の「他原因」欄記載の各事実のうち、被害児番号2河島豊、同3塩入信子、同4秋山善夫、同6増田裕加子、同7清原ゆかり、同9幸長睦子、同10鈴木旬子、同11稲脇豊和、同12山本治男、同15前田憲志、同18仲本知加、同19森井規雄、同21四方正太、同28田邉恵右に関する主張、同32横山信二、同35田村秀雄、同37矢野さまや、同40原雅美、同42小川健治(但し、「てんかん発症の可能性」の主張)、同44原篤、同46山本実に関する各主張が認められないことは既に各被害児ごとの因果関係における判断において判示したとおりであって、いずれも理由がなく、被害児番号25常信貴正、同27中尾仁美、同36西晃市に関する各主張部分については、これを認めるに足りる証拠がなく、採用できない。もっとも、被害児番号1高倉米一にけいれん素因があったこと、同19森井規雄にポリオの感染・発症(左足麻痺)があったこと、同33大橋敬規に周産期の異常による底上げ状態があったこと、同42小川健治の死因が若年性関節リュウマチであったこと及び同45垣内陽告について消化器の異常があったことは、いずれも各被害児ごとの因果関係の判断においてこれを認めたところであるが、被害児小川健治以外の右各被害児について、一審被告の主張する「他原因」は、それが損害額に寄与した程度が明らかではないから、これを直ちに減額事由とすることは相当ではないし、被害児小川健治が若年性関節リュウマチで死亡した点については、既に死亡の因果関係を否定したうえで損害額を算定しているから、それ以上に損害額を減額する必要はない。

第一二国家賠償法に基づく一審原告らの損害賠償請求債権額について

一本件各被害児の最終損害額について

1  損益相殺後の損害額

以上に判示したところにより、被害児番号14金井眞起子、同41池上圭子を除く本件各被害児の損益相殺後の損害額(但し、弁護士費用を除く。)を計算すると、別紙⑱(一)A「死亡被害児(その一)の認定損害額一覧表」、同⑱(二)A「死亡被害児(その二)の認定損害額一覧表」、同⑱(三)A「死亡被害児(その三)の認定損害額一覧表」、同⑱(四)A「Aランク生存被害児の認定損害額一覧表」、同⑱(五)A「Bランク生存被害児の認定損害額一覧表」、同⑱(六)A「Cランク生存被害児の認定損害額一覧表」(いずれも本判決第四分冊末尾添付)の各「損害額合計」欄記載の金額から各「損益相殺額」を控除した各「損益相殺後の損害額」欄記載の金額となる。

2  弁護士費用

本件訴訟の経緯、立証の難易その他の諸事情を考慮すると、弁護士費用については、前記「損益相殺後の損害額」の五パーセントに当たる金額をもって本件不法行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当であり、これによれば、右各被害児について認容すべき弁護士費用(但し、一万円未満切捨て)は、前記各一覧表の各「弁護士費用」欄記載の金額となる。

3  最終損害額

したがって、右各被害児の最終損害額は、前記各一覧表の各「最終損害額」欄記載の金額となる。

二死亡被害児の相続による権利の承継について

1  被害児番号11稲脇豊和を除く各死亡被害児の権利の承継についての一審原告らの主張事実(請求原因8)は当事者間に争いがない。

また、本件記録中の一審原告番号一二稲脇豊和承継人稲脇正(当審番号13)及び同稲脇みつ子(同14)提出の「訴訟手続受継の届書」と題する書面添付の戸籍謄本によれば、被害児稲脇豊和は、原審口頭弁論終結後の平成二年七月二二日に死亡し、父母である右両名が豊和の有していた権利義務を各二分の一ずつ相続したことが認められる。

2  さらに、本件記録中の一審原告番号三六田邉美好子承継人田邉幾雄提出の「訴訟手続受継の届書」と題する書面添付の戸籍謄本によれば、一審原告田邉美好子が昭和六一年五月三日に死亡し、父である一審原告番号三五田邉幾雄(当審番号39)が美好子の有していた権利義務を全部相続したこと、また、一審原告番号二五毛利鴻承継人毛利舜子外三名提出の「承継の申立」と題する書面添付の戸籍謄本によれば、一審原告毛利鴻が昭和六四年一月七日に死亡し、妻である一審原告番号二六毛利舜子(当審番号27)が鴻の有していた権利義務の二分の一を、子である稲葉由紀子(同28)、小田京子(同29)、毛利和彦(同30)が各六分の一を相続したこと、がそれぞれ認められる。

3  そこで、右死亡被害児に係る一審原告らが、各死亡被害児から承継した損害賠償請求権の額を算出すると、別紙⑲「死亡被害児の相続による承継額一覧表」(本判決第四分冊末尾添付)の各「承継額」欄記載の金額となる。

三一審原告らの損害賠償請求債権額について

以上によれば、死亡被害児に係る一審原告らは、国家賠償法一条一項に基づき、前記の「死亡被害児の相続による承継額一覧表」の各「「承継額」欄記載の損害賠償請求債権を、一審原告金井眞起子、同池上圭子を除く生存被害児である一審原告らは、同じく、前記第一の3の各「最終損害額」欄記載の損害賠償請求債権を一審被告に対してそれぞれ有することになる。

(第三次的請求について)

第一三損失補償責任(請求原因6)について

一損失補償請求の追加的、予備的併合の適否について

1  本件記録によれば、本件訴訟は、当初、債務不履行あるいは不法行為に基づく請求を第一次的請求、国家賠償法一条に基づく請求を第二次的請求として提起されたものであり、その後、同様の第一次的請求及び第二次的請求を追加する事件が併合されて審理されていたものであるところ、一審原告らは、一審被告に対し、昭和五九年五月一四日付け準備書面(同年六月七日原審第四〇回口頭弁論で陳述)によって、憲法に基づく損失補償請求権に基づく第三次的請求を予備的に追加するに至ったものであることが明らかである。

2  ところで、一審被告は、一審原告らの右憲法上の損失補償請求権に基づく第三次的請求は、行政事件訴訟法四条後段にいう公法上の法律関係に関する訴訟(いわゆる実質的当事者訴訟)に該当することを理由に、右第三次的請求の追加的、予備的申立ては不適法であると主張する。

しかしながら、第三次的請求である損失補償請求と第一次的請求及び第二次的請求に基づく各損害賠償請求とは、当事者が同じであるうえ、いずれも対等の当事者間で金銭給付を求める訴訟であって、その主張する経済的利益の内容、請求額も同一であり、その請求原因も、本件各予防接種という同一の行為に起因する損害(損失)の填補を求めるものであって、その発生原因も実質的に共通するものであるから、請求の基礎を同一にする請求として、民事訴訟法二三二条の規定による訴えの追加的変更に準じて、前記の各損害賠償請求に損失補償請求を追加することができるものと解するのが相当である(最高裁平成五年七月二〇日第三小法廷判決参照)。

したがって、第三次的請求が不適法であるとの一審被告の主張は理由がないというべきである。

二一審原告金井眞起子、同池上圭子の第三次的請求について

一審原告金井眞起子、同池上圭子については、前記に判示したとおり、国家賠償法に基づく第二次的請求は、一審被告の抗弁2(除斥期間の経過)の主張に理由があるため、結論的にはこれを棄却すべきものであるが、右一審原告らの本件各予防接種に係る本件各事故が一審被告の不法行為に基づくものであることは、既に認定したところである。

ところで、一般論として、国家賠償法に基づく損害賠償請求権が除斥期間の経過により消滅したと解される場合に、さらに、憲法二九条三項等の憲法上の規定に基づいて直接その損失補償請求が可能な場合があるかどうかは一つの問題ではあるが、予防接種の結果生じた特別犠牲について直接憲法に基づいて損失補償を求める請求と、国家賠償法に基づいて損害賠償を求める請求とは、その請求が違法な行為を原因とするものか、適法な行為を原因とするものかの違いはあるにせよ、いずれも予防接種によって生じた被害の補填を求めるという点では共通な性質を有するものであるから、本件損害賠償請求権について民法七二四条後段の除斥期間の規定の適用を認める以上、右損失補償請求権についてもその類推適用を認めるのが相当と解される。

したがって、本件各予防接種時から本件訴訟の提起までにいずれも二〇年の期間が経過していることが明らかな本件においては、右一審原告らの第三次的請求は、その請求権の存否を検討するまでもなく理由がないと言わざるを得ない。

三一審原告金井眞起子、同池上圭子を除く一審原告らの第三次的請求について

一審原告金井眞起子、同池上圭子を除く一審原告らは、前記に判示したとおり、一審被告に対し国家賠償法に基づく損害賠償請求権を有するから、第三次的請求のうち、国家賠償法上の責任に基づいて認容された前記各最終損害額(あるいは承継額)に対応する部分については、その申立てが当然に失効するものと解されるが、右認容金額を超える申立て部分については、第二次的請求が一部棄却されたことにより第三次的請求である憲法上の損失補償請求権の存否が一応問題となる余地がある。

しかしながら、仮に右の損失補償請求権が存在するとしても、その損失補償額は、請求権の性質上、国家賠償法上の責任に基づいて認容した金額を超えることはないものと解される。

したがって、右一審原告らの右認容金額を超える第三次的請求は、その存否を検討するまでもなく理由がないというべきである。

第一四結論

一本件各請求について

1  第一次的請求について

一審原告らの第一次的請求(一審原告らが当審で拡張した請求を含む。)はいずれも理由がないから、これを棄却すべきである。したがって、一審原告澤﨑慶子、同髙島ようの各控訴及び同一審原告らを除く一審原告らの各附帯控訴のうち、第一次的請求に関する部分はいずれも理由がない。

2  第二次的請求について

(一) 一審原告金井眞起子、同池上圭子の第二次的請求(同一審原告らが当審で拡張した請求を含む。)は全部理由がないから、これを棄却すべきである。したがって、同一審原告らの各附帯控訴のうち、第二次的請求に関する部分はいずれも理由がない。

(二) 一審原告金井眞起子、同池上圭子を除く一審原告らの第二次的請求(一審原告らが当審で拡張した請求を含む。)のうち、一審原告四方正太の請求は申立ての限度でこれを全部認容すべきであり(同一審原告の第三次的請求についての申立ては当然失効する。)、同一審原告を除くその余の一審原告らの各請求については本判決主文一項の2記載の各認容金額の限度でこれを認容し、その余は棄却すべきであって、一審原告澤﨑慶子、同髙島ようの各控訴及び一審原告金井眞起子、同池上圭子を除く一審原告らの各附帯控訴はいずれも全部又は一部理由があるから、これらの各控訴及び各附帯控訴に基づき、原判決の主文二項のうちの第二次的請求に関する部分を本判決主文一項の2、3のとおり変更する(但し、右一審原告らの各附帯請求のうち、一審原告秋山善夫を除く右一審原告らの前記各認容金額に対する不法行為時以後の日である別紙⑤「請求額等一覧表」の「遅延損害金起算日」欄記載の日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める各附帯請求はいずれも理由があるからこれを認容し、一審原告秋山善夫の前記認容金額に対する附帯請求は、本件予防接種日である昭和三二年一一月二六日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める部分は理由があるからこれを認容するが、その余の附帯請求部分は理由がないからこれを棄却する。なお、一審原告菅ユキエの遅延損害金の起算日は、本件予防接種日の翌日の昭和二九年一月二二日である。)。

3  第三次的請求について

(一) 一審原告金井眞起子、同池上圭子の第三次的請求(同一審原告らが当審で拡張した請求を含む。)は全部理由がないから、これを棄却すべきである。したがって、同一審原告らの各附帯控訴のうち、第三次的請求に関する部分はいずれも理由がない。

(二) 一審原告金井眞起子、同池上圭子、同四方正太を除く一審原告らの第三次的請求(一審原告らが当審で拡張した請求を含む。)のうち、前記の第二次的請求で認容された金額に相当する請求部分は、その申立てが一部失効することになるから、右部分に相当する原判決主文一項の第三次的請求の認容部分は当然に失効するものであり、右認容金額を超える請求部分はいずれも理由がないから、これを棄却すべきである。したがって、同一審原告らの各附帯控訴のうち、第三次的請求の部分はいずれも理由がない。

二民訴法一九八条二項の申立て(仮執行の原状回復及び損害賠償請求)について

1  別紙④「仮執行に基づく支払額等一覧表」の一審原告らが、原判決の仮執行宣言に基づく仮執行により同一覧表記載の「支払額」欄記載の金員の支払いを受けたことは当事者間に争いがなく、一審原告らのうち、一審原告番号一二稲脇豊和、同二五毛利鴻、同三六田邉美好子がその後に死亡し、同一覧表の「当審承継人氏名」欄記載の当審承継人らが同一覧表の「当審承継割合」欄記載の割合でその権利義務を承継したことは既に認定したとおりである。

2  ところで、前記のとおり、当審において、第二次的請求の全部あるいは一部を認容し、第三次的請求を棄却(但し、一部は申立てが失効)したことに伴い、一審原告澤﨑慶子、同髙島ようを除くその余の一審原告らの第三次的請求の一部を認容した原判決の主文一項が変更される結果、原判決の認容した金額の各三分の一の部分について仮執行の宣言を付した同判決の主文四項の仮執行宣言はその効力を失うことになる。そうすると、右一審原告らの関係では、右仮執行に基づいて支払われた各金員の返還及びこれに対する支払日の翌日(一審原告柳澤康男については昭和六二年一二月一九日、その余の右一審原告らについては同年一〇月二日)から各返済済みまで年五分の割合による損害金の支払いを求める一審被告の申立ては理由があることになる。

したがって、右一審原告ら(但し、一審原告稲脇豊和、同毛利鴻、同田邉美好子についてはその当審承継人である稲脇正、同稲脇みつ子、毛利舜子、田邉幾雄)に対し、本判決主文二項記載のとおり、仮執行に基づいて給付を受けた各金員の返還及びこれに対する損害金の支払いを命ずることとする。

三仮執行宣言の申立てについて

一審原告澤﨑慶子、同髙島ようの仮執行宣言の申立てについては、第二次的請求に基づいて認容した前記認容金額の各三分の一の限度で仮執行の宣言をすることとし(なお、一審被告の仮執行免脱宣言の申立ては理由がないから、これを却下する。)、また、民訴法一九八条二項に基づき一審原告らに対し仮執行に基づく給付の返還及び損害金の支払いを命ずる部分についての一審被告の申立てについては、一審原告金井眞起子及び同池上圭子に関する部分についてはこれを相当と認め、仮執行の宣言をするが、その余の一審原告らに関する部分については、その必要がないものと認め、これを付さないこととする。

四結語

よって、訴訟費用の負担につき、民訴法九六条、八九条、九二条、九三条、行訴法七条を、仮執行の宣言につき、民訴法一九六条をそれぞれ適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官宮地英雄 裁判官山﨑末記 裁判官亀田廣美)

別紙④〜⑯、⑱(一)B〜⑲〈省略〉

別紙⑰ 被害児のその後の状況等一覧表

一 被害児番号1高倉米一

認定に供した証拠〈書証番号略〉、証人高倉千枝子(当審)の証言

その後の状況

1 米一は、昭和四七年九月から大阪府立の身体障害者施設である「金剛コロニー」に入所しているが、現在も同コロニーに入所している。コロニー内での米一の生活は、食事、用便なども自分一人ではできないため、職員の全面介護を受けている。コロニー内では、一人でうろうろと歩き回っていることが多く、高いところに登る癖があるため、昭和六二年には右足を、平成二年には右鎖骨を骨折して入院した。また、しょっちゅう自分の手を口に入れてしゃぶるため、コロニーでは母高倉千枝子の作った手しゃぶり防止用の手袋をさせられている。コロニー内では、毎食後抗てんかん剤を服用するとともに、骨折しやすいため、朝は骨粗しょう症を防止する薬も飲んでいる。

2 米一は、毎月七日間、一年に約七〇日間程度自宅に帰ってくるが、そのときも、一日中父母のいずれかが付き添って全面介護している。自分で危険かどうかの判断ができないため、燃えているストーブの上に登ったり、走っている自動車の前に飛び出したりするので目が離せない。自宅に米一を一人残して外出するときは、やむを得ず外から鍵を閉めて出かけている。

二 被害児番号2河島豊

認定に供した証拠 〈書証番号略〉、証人河島輝子(当審)の証言

その後の状況

1 豊は、現在寝たきりの状態にあり、食事、用便なども父母が全面介護している。昭和六三年五月から河内長野市福祉センターに通い出したが、自分では歩けないため、父母が豊の寝ている部屋から寝ている敷物ごと引きずって車庫の側の部屋まで行き、そこで豊を抱きかかえて車に乗せる方法で送り迎えをしている。風呂に入れるときが大変で、以前は父母が二人で入れていたが、体重が重くなったことと、父母が老齢化したため、二人では入れられず、現在は、河内長野市から派遣されるヘルパーが来宅するときに簡易浴槽に入れるのと、河内長野市の施設で入浴させることができるだけである。

2 てんかんの発作は、現在も、常時発生しており、朝晩各一回ずつとその外にも一日三、四回程度大きな発作があり、それ以外にも小さな発作がある。毎食後三回、抗けいれん剤を飲ませているが、発作は抑えられない。

3 豊は、夜なかなか寝つかないことが多く、また、昼夜を問わず、常に大声を出すため、父母は、近所に気兼ねな生活を送っており、豊の介護のために、平成二年には約二〇〇万円ほどかけて、自宅を大改造した。

三 被害児番号3塩入信子

認定に供した証拠 〈書証番号略〉、証人塩入久(当審)の証言

その後の状況

1 信子は、昭和五六年四月から大阪市平野区内の作業所に行き、同作業所でコップ等にシールを貼る仕事をしているが、最近は作業所に行くのを嫌がり、週に一日か多くとも二日しか行かなくなった。信子が作業所からもらうお金は、月一〇〇〇円前後で、とても家計の足しになるようなものではない。

2 信子には、左半身の麻痺があり、眠っているとき以外は常に付き添って介護する必要があり、けいれんを起こす心配もあるので、家族は信子を一人にして外出することができない状況にある。信子は、現在も大阪大学医学部付属病院小児科に月一、二回通院しており、同病院で抗けいれん剤や骨カルシウム剤をもらい、毎日三回服用させている。薬の服用を忘れると、前屈したり、後ろに倒れたりするようなけいれん発作が起こる。

3 信子は、予防接種被害者健康手帳の交付を受けており、現在の障害等級は二級である。

四 被害児番号4秋山善夫

認定に供した証拠 〈書証番号略〉、証人秋山千津子(当審)の証言

その後の状況

1 善夫は、昭和三八年から社会福祉法人「桃花塾」に入所していた。一八歳をすぎれば、児童部から成人部へ入れてもらうはずであったが、障害の程度が最重度であったため、成人部へは入れてもらえず、他の施設を探すように言われた。しかし、なかなか適当な施設がないため、その後も桃花塾の児童部在籍の延長を繰り返してもらいながら桃花塾に入所していた。

2 昭和六二年五月、「採光学園」が完成し、その完成と同時にようやく新しい施設に入所することができるようになり、現在は同学園で全面介護を受けながら生活している。なお、同学園では、朝、昼、晩と寝る前に抗けいれん剤の投与を受けている。

3 善夫は、年に約八回合計五〇日ぐらい自宅に帰ってくるが、一人では何もできないので、散歩に連れていくのにも父母が連れ添っている。また、ストレスのためか、衣類をずたずたに食い千切ってしまう癖がついており、昭和五一年四月には、化繊の絨毯を食べてしまい、便を詰まらせたこともあった。

4 善夫は、昭和五八年ころから、年に二、三度ばたんと棒を倒すようなひきつけの大発作を起こすようになった。ひきつけの大発作で眉の上を一〇針も縫うような傷を負うことも度々ある。

五 被害児番号5吉田理美

認定に供した証拠 〈書証番号略〉、証人吉田富子(当審)の証言

その後の状況

1 理美の障害の状況は、原審当時とほとんど変化はなく、すべての事に対して自分から行動しようとする意思がなく、すべて人まかせの状態であり、食事、衣服の着脱、用便その他の世話はすべて全面介護が必要である。

2 昭和六一年三月交野養護学校高等部を卒業後、行くところがなかったので、母の吉田富子が高等部卒業の子供たちの保護者と開設した「やすらぎ作業所」に入れているが、何一つ作業はできず、邪魔をするだけなので、車椅子に括られて座っているだけのことが多い。家庭においても、以前とほとんど変化はないが、石鹸を食べたり、熱いベープマットを口に入れて噛んだり、生理ナプキンを取り出して口に入れたり、行動が以前よりエスカレートしている。また、口の中には絶えず四本指を入れているため、寒くなると手はしもやけになって赤く腫れ上がり、そのため夜も熟睡できないことがある。

六 被害児番号7清原ゆかり

認定に供した証拠 〈書証番号略〉、証人清原廣子(当審)の証言

その後の状況

ゆかりは、ずっと寝たきりの状態であり、物を目で追い、音には反応するが、現在首のすわりが悪く、寝返りも不能な状態のままである。発作は現在もあり、主に両下肢に発現し、一点を凝視する状態となる。食事、入浴も全面介護が必要である。

七 被害児番号8小林誠

認定に供した証拠 〈書証番号略〉、証人小林百合子(当審)の証言

その後の状況

1 誠は、抗けいれん剤を服用しているが、平均して一か月に二四、五回けいれん発作を起こしており、発作を起こすたびに負傷している。

2 誠は、昭和五八年ころから「みのたに園」に通園し、同所でビニールの被覆にステップルを入れる作業をしているが、通園バスの停留所までは、母が送り迎えをしている。食事は、何とか自分でできるが、食べ物をこぼすことが多い。排便も失敗することが多く、衣服の着脱、入浴にも介護が必要な状態は変わっていない。

八 被害児番号10鈴木旬子

認定に供した証拠 〈書証番号略〉、証人鈴木季子(当審)の証言

その後の状況

1 旬子は、昭和五三年に入所した未成年者の施設である「のぎく療育園」に現在も特別に入所させてもらっているが、全面介護が必要であり、一人では全く生活できない。排便はおむつをしたままである。ひきつけ、けいれんは、引き続き続いており、抗けいれん剤の必要な状態は変わっていない。家には、年二回、正月とお盆の約二週間くらい帰っている。

2 旬子は、手しゃぶりがひどかったため、母が特別に作った手袋をしていたが、平成三年ころから食欲がなくなり、急にやせてきており、手しゃぶりも減るなど少しずつ活気がなくなりつつある。

九 被害児番号11稲脇豊和

認定に供した証拠〈書証番号略〉

その後の状況

1 豊和は、昭和六〇年三月ころからは食事は一日一食となり、飲み物もストローを使っていた。排便は、一日中おむつをしていたが、便意もあまりなかった。また、そのころから、だんだん左足だけでなく、右足も萎えてきて、右足にも力が入らないようになった。

2 平成元年一二月には、全身衰弱のため、加古川市内の病院に一時入院した。

平成二年一月以降、豊和は、食欲もなく、食べようとする気がないため、母がスプーンで一口ずつ食べさせた。風呂は、一か月に一回、巡回のヘルパーが来宅したときにしか入れられなかった。同年七月二二日に死亡したが、死ぬ最後の約一年間は、全く寝たきりの状態であった。死亡するまで抗けいれん剤を飲んでいた。

一〇 被害児番号12山本治男

認定に供した証拠 〈書証番号略〉、証人山本峯子(当審)の証言

その後の状況

1 治男は、児童福祉法により「国立療養所紫香楽病院」に入院しているが、全面介護が必要な状態は変わらない。

2 治男は、お盆と年末年始の各一週間家に帰るが、以前は家の中で這うような動作をすることがあったが、現在はそうした行動をすることも全くなくなっている。

一一 被害児番号15前田憲志

認定に供した証拠〈書証番号略〉

その後の状況

1 憲志は、昭和六三年三月に神戸市立青陽養護高等学校を卒業し、卒業後は身体障害者が集まって作業する作業所に働きに行き、紙箱を折って組み立てるなどの軽作業をした。その後、靴底のゴムを貼る会社に行ったが、平成三年一〇月から、身体障害者の特別採用として神戸市内のホテルに就職し、シャワーキャップを小箱に入れる作業をしている。給料は一か月約九万円である。

2 憲志は、現在も抗けいれん剤を一日三回服用しているが、知らない人に会ったなど緊張したときには発作が起こることがある。簡単な字を書くときでも右手にふるえがあり、うまく書けない。手先の器用さを要する作業はできない。言葉は不明確で聞き取りにくく、言語障害がある。簡単な計算もできない。

一二 被害児番号16上田純子

認定に供した証拠〈書証番号略〉

その後の状況

1 純子は、現在も抗けいれん剤を服用しているが、それでも軽い発作は一日に数回ある。

2 生理の始末や手を洗うことは自分でできるようになったが、習慣化したことをやっている可能性が高く、その意味を十分には理解できていない。

3 ひらがなは以前から読み書きできるが、漢字は、母が教えても小学校一年生くらいのものしか判らない。九九は現在もできない。

4 以前から勤めている会社に現在も勤めているが、仕事は、長靴の外についている会社のマークをローラーで押さえて付けるという簡単な作業をしている。

一三 被害児番号18仲本知加

認定に供した証拠 〈書証番号略〉、証人仲本洋二(当審)の証言

その後の状況

1 知加は、平成元年三月に大阪府立大淀養護学校高等部を卒業したが、知加には右手右足の麻痺があり、体重も約九〇キログラムと肥満気味であったため、父母は、通学バスの送迎に苦労した。知加は、知能も十分ではなく、右手の麻痺があり、生理日の手当が自分でできないので、生理日には学校を休んでおり、また、体調が悪いときも、けいれん大発作を起こす心配があったため、学校を休んだ。

2 知加は、抗けいれん剤を服用しているが、現在も時々、意識を消失するような大けいれんが起こる。

3 知加の父は、養護学校に通う父兄らの協力を得て、昭和六二年四月、障害児のための施設の作業場「杉の子会館生活訓練所」を開設し、知加も、養護学校卒業後、週二、三回、同作業所に母が一日中付き添う形で通っているが、知加が同作業所で行っている作業は、割り箸の袋入れが中心である。

4 知加は、原審当時は、一審被告による被害者救済制度では二級の認定であったが、昭和六三年一一月三〇日の「田中ビネ式発達検査」で「IQ二五、MA5.5」という結果が出たことから、一級の認定に変更になった。

一四 被害児番号20末廣美佳

認定に供した証拠〈書証番号略〉

その後の状況

1 美佳は、毎日朝晩抗けいれん剤を服用しているが、それでも月に五、六回軽い失神発作が出ている。

2 左足は、右足より約二センチメートル短く、左腕も右腕より約五センチメートル短く、アンバランスの程度は以前よりひどくなっており、ちょっとした段差でも大変転びやすく、走ることはできない。また、左手は麻痺していて、左手を使った作業はできない。

3 食事や用便には非常に時間がかかる。生理の始末も訓練でようやくできるようになったが、やはり時間がかかる。包丁は危険で使えない。

4 人のいうことが十分理解できず、腹を立てると、大声でわめいたり、物を投げつけたり、パニックになることが多い。

5 美佳は、何か所か単純作業を行う職場に勤めたが、作業能率が極めて悪いので、邪魔者扱いにされて長続きしなかった。平成三年八月ころに障害者に理解のある会社に勤務したときには何とかうまく勤められたが、会社の業績が悪化し、人員整理の必要が生じたため、平成四年八月には退職させられた。

美佳は、平成五年五月一〇日から、「みのり作業所」という施設でダンボールの箱の組立作業をやっているが、作業時間は一日五時間ほどで、もらえるお金は一か月数千円程度にすぎない。また、一人で交通機関が使えないため、施設への送り迎えは母が行っている。

一五 被害児番号21四方正太

認定に供した証拠〈書証番号略〉

その後の状況

正太は、原審当時から右耳七〇デシベル、左耳八〇デシベルの「両感音性難聴」とされていたが、平成四年四月一四日に社会保険庁神戸中央病院で施行された標準聴力検査の結果によれば、右耳112.5デシベル、左耳107.5デシベルの両側感音難聴であり、身体障害者二級に該当するとの診断がされている。

一六 被害児番号30澤﨑慶子

認定に供した証拠〈書証番号略〉、証人澤﨑信子(当審)の証言

その後の状況

1 慶子は、すみれ愛育園に入っていたが、昭和六二年七月から岸和田市にある「採光学園」に入所し、現在に至っている。慶子の様子は以前と同じで、一時も目を離すことができない。また、けいれん防止のため、朝、昼、晩と抗けいれん剤を飲み、寝る前には睡眠薬を飲んでいる。

慶子は、春休み、夏休み、冬休みにそれぞれ約一か月家に帰り、家で過していたが、平成四年三月ころから腎臓を悪くしたため、家に連れて帰っている。

2 慶子の父は、平成元年一一月ころ、胃の摘出手術をしたため、身体が弱り、平成三年三月に勤務先を退職せざるをえなくなった。慶子の母は、家でミシン踏みの内職をしていたが、慶子が家に長くいるようになってから、その内職をやめ、つきっきりで面倒をみている。

一七 被害児番号31髙島よう

認定に供した証拠 〈書証番号略〉、証人髙島恭子(当審)の証言

その後の状況

1 ようは、中学の特殊学級を卒業した後、県立の稲葉養護学校に入った。養護学校は、三重県の久居市にあり、通学はスクールバスであったが、ようの父か母が、毎朝バス停まで連れて行き、帰りは母が迎えに行った。

養護学校は、平成二年三月に卒業した。卒業後、ようの父は、家に閉じ込めておくことになるのを避けるため、ように作業をさせてくれるような所がないか探したが、ようを働かせてくれる所はなかった。

その後、同年一〇月から、伊賀町にある無認可の作業所に入れてもらっている。朝、父親が作業所まで連れていき、夕方は母親が迎えにいく。一人でバスに乗ったり、電車に乗ったりすることはできない。ようが作業所でしているのは、紙袋の紐通しの作業であり、月に五〇〇〇円と交通費二〇〇〇円が貰えるが、材料代を差し引くと赤字である。

2 ようの両親は、一週間に一回療育教室にも通い、ように正座の訓練、円や四角を書く訓練、玉さし、紐通しなどの訓練をした。また、家でも、直線を歩く訓練や階段の昇り降り、ボール投げなどの訓練を続けた。便所に一緒に入り、後の始末を教え、風呂も一緒に入り、タオルの絞り方から身体の洗い方などを教え、何年も根気よく続けることにより、ある程度は自分でできるようになった。しかし、現在でも、風呂から出て裸のままうろうろしていることがある。生理の始末についても、親が一緒に入って訓練をし、処理はできるようになったが、下着をはかないまま外へ出てきたりすることがあるので、目を離せない。

3 ようは、いくら訓練をしても、現在も、人と会話することができず、おうむ返しをしたり、突然全く関係のないことを叫んだり、意味もなく泣いたり笑ったりする。突然奇声をあげたり、建具や家具を叩いたりすることも続いており、一人にしておくことはできない状態にある。

4 平成元年一〇月に、母が過労のためか原因不明の嘔吐とともに倒れた際、ようを一時施設に預けたことがあるが、施設に入った後は、ようの表情が変わってしまい、帰宅後も、全く元気がなく、嘔吐、便秘が続き、食欲もなくなってしまった様子なので、施設に預けておくことはできない。

5 また、ようは、平成元年一〇月六日に、けいれんの大発作を起こした。

一八 被害児番号32横山信二

認定に供した証拠〈書証番号略〉、証人横山喜代子(当審)の証言

その後の状況

1 信二は、寝屋川市第八養護学校高等部を卒業したのち、行くところがなかったので、障害者の親たちが共同で開設した私設の作業所で、プラスチック部品の組立やおしぼりをまとめて輪ゴムで止めるような作業をしていた。

しかし、そのままでは一人になったときに生きていけなくなる心配があったので、信二が二三歳になったときから、社会福祉法人「なわて更生園」に入所し、一か月の半分は家で過ごし、残りの半分は園で寝泊まりする生活を送っている。母は、信二を園に入所させてもらう条件として、園のトイレの掃除や食事づくりなど、園の手伝いを週四回行っている。

2 信二は、背骨が曲がっているため、現在も、バランスをくずして転びやすく、段差や石、水たまりなどを避けて歩くことができない。危険に対する理解が不十分なため、車を避けることもできないし、ストーブの上に座ったり、火傷をすることもある。刃物は握りの部分と刃の部分の区別ができず、はさみの使い方も覚えられない。

3 現在でも、抗けいれん剤を常用しているので、その副作用で歯が悪く、固い物を食べることはできない。月に一回くらいは今でも小さいけいれん発作を起こす。

一九 被害児番号33大橋敬規

認定に供した証拠 〈書証番号略〉、証人大橋萬里子(当審)の証言

その後の状況

1 敬規は、昭和六〇年三月に中学校を卒業したのち、同年四月から交野養護学校に入学し、昭和六三年三月に卒業した。昭和六三年五月から、四條畷市内にある「さつき園」という作業所で紙袋の紐通しなどの作業をしていたが、他の障害児からのいじめや障害が重度で指導員の手がかかりすぎることなどが原因で、同年八月末ころからは同作業所へも行けなくなり、その後は、自宅で父母の全面介護を受けながら生活している。

2 敬規は、種痘後脳炎後遺症を主症状として、現在も、精神薄弱、てんかん、肥満などの症状があり、ずっと病院で治療を続けており、現在も通院中である。

3 敬規は、現在でも抗けいれん剤を継続して服用しているが、それでも時々けいれん発作が起きる。歩くのを嫌がり、坂道や段差のあるところでの歩行、階段の上がり下がりは特に困難で、手すりがあれば何とかできるが、すぐにつまづいてバランスを失いがちで、危険であり、けがをすることも多い。

食事、排泄、更衣、入浴などの行動もほとんど改善進歩していない。

4 熱い冷たいの感覚がないこと、危険物がわからないことは従前と同様で、熱いアイロンを触ったり、熱湯に手を突っ込むこともある。また、まばたきすることが困難で、異物が目に入ることも多く、眼科の治療を受けることも少なくない。最近は、機嫌の悪いときは、自分の手で自分の体や回りの物をバンバン叩いたり、時には柱に頭を打ちつけるなどの行動をとることがある。

食べられるものと食べられないものの区別がつかず、ミカンやスイカの皮なども止めさせないと食べてしまう状態である。

5 敬規がこうした状況であるため、家族も、敬規の行動から一日中目を離せず、介護に追われている。母は、昭和六二年一月、介護の疲れなどから高血圧症で倒れて入院し、同年一一月には、昭和五七年ころに悪化させた網膜症の治療や手術のために入院したが、視力障害のため、最近では一人で買物にも行けない状態となった。義父も、昭和六二年八月、敬規のけいれん等による突発的な事態に動きやすいようにとの配慮からそれまで勤めていた会社を退職し、現在は自営で配電器の組立をしている。

二〇 被害児番号34木村尚孝

認定に供した証拠〈書証番号略〉

その後の状況

1 尚孝は、昭和六〇年三月に養護学校高等部を卒業後、同年四月から個人営業の紙の裁断屋に勤めていたが、仕事の役に立たないので、同年一二月には事実上解雇された。その後、昭和六一年九月から約二年半ほど、吹田市内の大阪市立千里作業指導所に入所を認めてもらい、帽子掛けや洋服掛けのネジの締め込みの単純な作業をしていたが、その作業で貰えるお金は毎月二、三万円で、授業料(指導料)を支払うと何も残らなかった。

2 平成三年三月ころ、大阪市東淀川区内の会社に雇ってもらい、現在もそこで働いている。給料は、日給月給で毎月三、四万円ほどもらっているが、いつまで働かせてもらえるかという保証はない。

3 尚孝は、毎日、洗顔、食事をし、服も自分で着ることはできるが、季節感がないため、変化に適応はできない。また、服が汚れていても気にならず、作業着を持って行っても、通勤着のまま作業をして汚すことがよくある。

4 会社から帰ると、テレビのチャンネルを独占する。電話番号は、自宅、母の勤務先、親しい友達の三つだけ覚えている。電話に出ることはできるが、内容を伝言することはできない。給料はもらっているが、すぐに自分の好きな物を買ってしまい、金銭管理は全くできず、お金の値打ちも分かっていない。

5 計算は、一桁の簡単な足し算はできるが、二桁になる計算はできない。引き算、掛け算、割り算などは全くできない。ひらがなやカタカナも全部の読み書きは困難で、漢字は自分が興味を持っている字は読めるが、書くことができるのは住所と名前くらいである。

6 待ち合わせをしても、それに合わせて予定を立てて行動することはできない。あいさつはできるが、ものを尋ねることはできないので、道がわからなければうろうろするだけである。

7 料理や食事後の皿洗いなどもできない。色は、赤・青・白・ピンク・黒等の原色は分かるが、その他の色はわからない。

二一 被害児番号35田村秀雄

認定に供した証拠 〈書証番号略〉、証人田村キミ子(当審)の証言

その後の状況

1 秀雄は、現在も大阪府立の「金剛コロニー」に入所しており、草むしりとか、和紙を染める作業をしているが、役に立つ仕事はできない。金剛コロニーでは、年間約二か月は自宅で過ごさせる方針であり、それ以外にも歯の治療を外部で受ける必要があることから、父母は、始終秀雄の送り迎えをしている状態にある。

2 秀雄は、自宅にいるときは、付近を歩き回ったり、はさみで紙を切るようなことを繰り返している。嫌なことがあるとすぐ逃げ出すが、行き先が分からなくなり、危険でもあるので、常に家族の誰かが付き添っている。秀雄の言葉の表現は、意味が分からず、母以外はほとんど理解できない。

二二 被害児番号37矢野さまや

認定に供した証拠 〈書証番号略〉、証人矢野直美(当審)の証言

その後の状況

1 さまやは、昭和五四年四月に香川県立香川東部養護学校に入学したが、小学部・中学部、高等部とも重度障害クラスに在籍した。体力がないため風邪をひきやすく、欠席も多かったが、平成三年三月には一二年間の通学生活を終えた。登・下校のスクールバスに乗るため、母子ともに時間に縛られる生活であった。

2 平成三年三月に養護学校を卒業後、隣町の小規模作業所へ週一、二回通っているが、さまやは、身の回りのことはできないので、常に、母が付き添っている。作業所では、一番初歩的なショッピングバッグの紐通しの作業をしているが、これも一人では満足にできない。

3 さまやは、抗けいれん剤を現在も一日三回ずつ飲ませているが、その副作用で歯ぐきが腫れており、また、きれいに歯が磨けず虫歯になっているため、治療が必要な時は片道一時間もかかる障害者専門の歯科診療所へ毎週治療に通うこともあり、三か月ごとに定期検診も受けている。

4 さまやは、自分で判断する知恵がないため、常時誰かが付き添っていなければならず、用便の始末も、成長とともに、父には頼めないため、必ず母が介助している。

別紙②

認容金額一覧表

当審番号

一審

原告番号

一審原告

(当審承継人)

氏名

認容金額

1

高倉米一

六三五八万二五三九円

及びこれに対する昭和三二年四月一〇日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

2

河島豊

六三九八万〇六一六円

及びこれに対する昭和三六年二月一七日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

3

塩入信子

三八五六万九二一四円

及びこれに対する昭和三八年一月一〇日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

4

秋山善夫

六四五二万七二四五円

及びこれに対する昭和三二年一一月二六日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

5

吉田理美

五四八九万二八一一円

及びこれに対する昭和四一年一〇月三一日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

6

七の一

増田肇

一六二一万九七一九円

及びこれに対する昭和三八年七月三〇日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

7

七の二

増田恭子

一六二一万九七一九円

及びこれに対する昭和三八年七月三〇日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

8

清原ゆかり

五五九四万五〇八二円

及びこれに対する昭和四六年一一月九日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

9

小林誠

五三三二万七一五〇円

及びこれに対する昭和四〇年三月三〇日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

10

一〇の一

幸長好雄

一七八一万八四八八円

及びこれに対する昭和三一年一〇月一六日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

11

一〇の二

幸長律子

一七八一万八四八八円

及びこれに対する昭和三一年一〇月一六日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

12

一一

鈴木旬子

五八二〇万〇二〇三円

及びこれに対する昭和三二年二月一四日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

13

稲脇正

二一七八万一三五四円

及びこれに対する昭和二七年二月一二日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

14

稲脇みつ子

二一七八万一三五四円

及びこれに対する昭和二七年二月一二日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

15

一三

山本治男

八〇四七万〇一四六円

及びこれに対する昭和四六年一〇月五日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

16

一四

大喜多雅美

九一三万九四二二円

及びこれに対する昭和三九年三月二五日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

18

一六

前田憲志

四七三八万三三六〇円

及びこれに対する昭和四五年一一月一七日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

19

一七

上田純子

一六九〇万六六四一円

及びこれに対する昭和四一年四月二一日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

20

一八

藤本章人

二〇〇四万八九八九円

及びこれに対する昭和四〇年五月一九日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

21

一九

仲本知加

四三四三万四一九一円

及びこれに対する昭和四六年五月二六日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

22

二〇

森井富美子

三二〇〇万六三七二円

及びこれに対する昭和三三年六月六日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

23

二一

末廣美佳

四六六三万五五〇八円

及びこれに対する昭和四六年一〇月二一日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

24

二二

四方正太

五七五〇万〇〇〇〇円

及びこれに対する昭和三八年一二月一一日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

25

二三

三好一美

一五七六万六五一七円

及びこれに対する昭和四五年一月九日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

26

二四

三好道代

一五七六万六五一七円

及びこれに対する昭和四五年一月九日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

27

二六*

毛利舜子

二一一五万九四二六円

及びこれに対する昭和四五年一月二七日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

28

稲葉由紀子

二三五万一〇四七円

及びこれに対する昭和四五年一月二七日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

29

小田京子

二三五万一〇四七円

及びこれに対する昭和四五年一月二七日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

30

毛利和彦

二三五万一〇四七円

及びこれに対する昭和四五年一月二七日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

31

二七

柳澤康男

一六四五万八四四五円

及びこれに対する昭和四三年三月二七日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

32

二八

柳澤二美子

一六四五万八四四五円

及びこれに対する昭和四三年三月二七日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

33

二九

常信勇

一五二三万二八一五円

及びこれに対する昭和三七年二月一五日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

34

三〇

常信知子

一五二三万二八一五円

及びこれに対する昭和三七年二月一五日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

35

三一

三原政行

一五〇七万七一九五円

及びこれに対する昭和三五年三月九日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

36

三二

三原洋子

一五〇七万七一九五円

及びこれに対する昭和三五年三月九日から

支払済みまで年五分の割合による遅廷損害金

37

三三

中尾巖

一三三五万〇二二三円

及びこれに対する昭和三九年九月二八日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

38

三四

中尾八重子

一三三五万〇二二三円

及びこれに対する昭和三九年九月二八日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

39

三五*

田邉幾雄

二四二三万〇二八五円

及びこれに対する昭和三九年八月二七日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

40

三七

田邉博法

三四六万一四六九円

及びこれに対する昭和三九年八月二七日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

41

三九

大木清子

七一九万六四三六円

及びこれに対する昭和三三年六月二三日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

42

四〇

桑原恵子

七一九万六四三六円

及びこれに対する昭和三三年六月二三日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

43

四一

前田訓代

七一九万六四三六円

及びこれに対する昭和三三年六月二三日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

44

四二

中野節子

七一九万六四三六円

及びこれに対する昭和三三年六月二三日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

45

四三

澤﨑慶子

六四六九万六二五九円

及びこれに対する昭和三九年四月二二日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

46

四四

髙島よう

五一一一万五二八六円

及びこれに対する昭和四八年一月二九日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

47

四五

横山信二

八六八〇万二二七〇円

及びこれに対する昭和四三年二月五日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

48

四六

大橋敬規

七七七九万九九七四円

及びこれに対する昭和四九年三月一九日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

49

四七

木村尚孝

三五七九万五八八五円

及びこれに対する昭和四三年九月一七日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

50

四八

田村秀雄

七四六一万七六一六円

及びこれに対する昭和三一年五月八日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

51

四九

西晃市

三九〇六万三四六二円

及びこれに対する昭和四四年二月一八日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

52

五〇

矢野さまや

六九四二万八一四二円

及びこれに対する昭和四六年一一月二五日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

53

五一

菅ユキエ

四七三五万五〇〇七円

及びこれに対する昭和二九年一月二二日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

54

五二

高橋勝巳

一八六一万〇五四五円

及びこれに対する昭和四三年五月一六日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

55

五三

原雅美

一四九四万〇〇七九円

及びこれに対する昭和四四年八月二七日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

57

五五

小川昭治

八〇三万九四二五円

及びこれに対する昭和四五年七月二日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

58

五六

白井良子

八〇三万九四二五円

及びこれに対する昭和四五年七月二日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

59

五七

野々垣幸一

一二七五万八一七二円

及びこれに対する昭和三三年五月二〇日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

60

五八

野々垣久美子

一二七五万八一七二円

及びこれに対する昭和三三年五月二〇日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

61

五九

原竹彦

一五六六万九一二八円

及びこれに対する昭和四三年一一月一四日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

62

六〇

原須磨子

一五六六万九一二八円

及びこれに対する昭和四三年一一月一四日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

63

六一

垣内光次

一五七二万六二三二円

及びこれに対する昭和四四年一一月二一日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

64

六二

垣内千代

一五七二万六二三二円

及びこれに対する昭和四四年一一月二一日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

65

六三

山本昇

一五七六万六五一七円

及びこれに対する昭和四五年四月一五日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

66

六四

山本幸子

一五七六万六五一七円

及びこれに対する昭和四五年四月一五日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

67

六五

安田豊

一一九三万七〇七四円

及びこれに対する昭和五〇年九月二日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

68

六六

安田明美

一一九三万七〇七四円

及びこれに対する昭和五〇年九月二日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

69

六七

藤井英雄

一六一四万〇一五八円

及びこれに対する昭和四三年一二月四日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

70

六八

藤井鈴恵

一六一四万〇一五八円

及びこれに対する昭和四三年一二月四日から

支払済みまで年五分の割合による遅延損害金

別紙③

別紙⑱(一)A

死亡被害児(その一)の認定損害額一覧表

被害児番号

被害児氏名

逸失利益

(助)

慰謝料

損害額合計

逸失利益・

介護(助)費

との

損益相殺額

慰謝料との

損益相殺額

損益相殺後

の損害額

弁護士費用

最終損害額

22

三好元信

19,733,035

-

15,000,000

34,733,035

-

4,700,000

30,033,035

150

31,533,035

23

毛利孝子

16,572,568

-

15,000,000

31,572,568

-

4,700,000

26,872,568

134

28,212,568

24

柳澤雅光

21,056,890

-

15,000,000

36,056,890

-

4,700,000

31,356,890

156

32,916,890

25

常信貴正

18,015,631

-

15,000,000

33,015,631

-

4,000,000

29,015,631

145

30,465,631

26

三原繁

17,424,390

-

15,000,000

32,424,390

-

3,700,000

28,724,390

143

30,154,390

27

中尾仁美

14,430,446

-

15,000,000

29,430,446

-

4,000,000

25,430,446

127

26,700,446

28

田邉恵右

18,673,225

-

15,000,000

33,673,225

-

4,000,000

29,673,225

148

31,153,225

29

福山豊子

16,115,745

-

15,000,000

31,115,745

-

3,700,000

27,415,745

137

28,785,745

43

野々垣一世

13,006,344

-

15,000,000

28,006,344

-

3,700,000

24,306,344

121

25,516,344

44

原篤

19,548,256

-

15,000,000

34,548,256

-

4,700,000

29,848,256

149

31,338,256

45

垣内陽告

19,662,464

-

15,000,000

34,662,464

-

4,700,000

29,962,464

149

31,452,464

46

山本実

19,733,035

-

15,000,000

34,733,035

-

4,700,000

30,033,035

150

31,533,035

47

安田美保

15,644,149

-

15,000,000

30,644,149

-

7,900,000

22,744,149

113

23,874,149

48

藤井崇治

20,450,317

-

15,000,000

35,450,317

-

4,700,000

30,750,317

153

32,280,317

別紙⑱(二)A

死亡被害児(その二)の認定損害額一覧表

被害児番号

被害児氏名

逸失利益

介護(助)費

慰謝料

損害額合計

逸失利益・

介護(助)費

との

損益相殺額

慰謝料との

損益相殺額

損益相殺後

の損害額

弁護士費用

最終損害額

6

増田裕加子

14,918,852

14,954,640

15,000,000

44,873,492

5,110,054

8,864,000

30,899,438

154

32,439,438

9

幸長睦子

14,061,996

17,250,120

15,000,000

46,312,116

5,320,139

7,045,000

33,946,977

169

35,636,977

11

稲脇豊和

21,896,159

17,711,190

15,000,000

54,607,349

9,043,641

4,071,000

41,492,708

207

43,562,708

19

森井規雄

17,596,155

8,456,340

15,000,000

41,052,495

3,023,123

7,543,000

30,486,372

152

32,006,372

38

菅美子

13,732,567

16,372,440

15,000,000

45,105,007

-

-

45,105,007

225

47,355,007

別紙⑱(三)A

死亡被害児(その三)の認定損害額一覧表

被害児番号

被害児氏名

逸失利益

介護費

慰謝料

損害額合計

逸失利益・

介護費

との

損益相殺額

慰謝料との

損益相殺額

損益相殺後

の損害額

弁護士費用

最終損害額

42

小川健治

-

5,318,850

10,000,000

15,318,850

-

-

15,318,850

76

16,078,850

別紙⑱(四)A

Aランク生存被害児の認定損害額一覧表

被害児番号

被害児氏名

逸失利益

介護費

慰謝料

損害額合計

逸失利益・

介護費との

損益相殺額

慰謝料との

損益相殺額

損益相殺後

の損害額

弁護士費用

最終損害額

1

高倉米一

32,296,085

25,188,840

15,000,000

72,484,925

11,922,386

-

60,562,539

302

63,582,539

2

河島豊

35,257,222

25,515,420

15,000,000

75,772,642

14,832,026

-

60,940,616

304

63,980,616

4

秋山善夫

33,083,210

25,188,840

15,000,000

73,272,050

11,814,805

-

61,457,245

307

64,527,245

5

吉田理美

23,011,199

30,960,990

15,000,000

68,972,189

16,689,378

-

52,282,811

261

54,892,811

7

清原ゆかり

22,122,454

31,392,120

15,000,000

68,514,574

15,229,492

-

53,285,082

266

55,945,082

10

鈴木旬子

17,889,054

25,412,940

15,000,000

58,301,994

2,871,791

-

55,430,203

277

58,200,203

12

山本治男

41,691,950

31,226,490

15,000,000

87,918,440

11,278,294

-

76,640,146

383

80,470,146

30

澤崎慶子

20,498,679

26,117,580

15,000,000

61,616,259

-

-

61,616,259

308

64,696,259

32

横山信二

38,797,063

30,804,390

15,000,000

84,601,453

1,929,183

-

82,672,270

413

86,802,270

35

田村秀雄

30,977,416

25,090,200

15,000,000

71,067,616

-

-

71,067,616

355

74,617,616

37

矢野さまや

22,122,454

31,392,120

15,000,000

68,514,574

2,386,432

-

66,128,142

330

69,428,142

別紙⑱(五)A

Bランク生存被害児の認定損害額一覧表

被害児番号

被害児氏名

逸失利益

介助費

慰謝料

損害額合計

逸失利益・

介助費との

損益相殺額

慰謝料との

損益相殺額

損益相殺後

の損害額

弁護士費用

最終損害額

3

塩入信子

18,136,982

17,323,560

12,000,000

47,460,542

10,721,328

-

36,739,214

183

38,569,214

8

小林誠

33,863,110

20,383,080

12,000,000

66,246,190

15,449,040

-

50,797,150

253

53,327,150

18

仲本知加

20,760,436

20,906,120

12,000,000

53,666,556

12,292,365

-

41,374,191

206

43,434,191

20

末廣美佳

19,910,209

20,928,080

12,000,000

52,838,289

8,422,781

-

44,415,508

222

46,635,508

21

四方正太

33,434,504

17,262,320

12,000,000

62,696,824

2,627,849

-

60,068,975

300

63,068,975

31

高島よう

20,955,410

21,046,280

12,000,000

54,001,690

5,316,404

-

48,685,286

243

51,115,286

33

大橋敬規

43,019,428

20,792,000

12,000,000

75,811,428

1,711,454

-

74,099,974

370

77,799,974

別紙⑱(六)A

Cランク生存被害児の認定損害額一覧表

被害児番号

被害児氏名

逸失利益

介助費

慰謝料

損害額合計

逸失利益・

介助費との

損益相殺額

慰謝料との

損益相殺額

損益相殺後

の損害額

弁護士費用

最終損害額

13

大喜多雅美

8,245,968

3,474,765

4,000,000

15,720,733

7,011,311

-

8,709,422

43

9,139,422

15

前田憲志

30,903,560

6,229,800

8,000,000

45,133,360

-

-

45,133,360

225

47,383,360

16

上田純子

12,656,039

6,647,400

6,000,000

25,303,439

9,196,798

-

16,106,641

80

16,906,641

17

藤本章人

15,125,127

4,264,680

4,000,000

23,389,807

4,290,818

-

19,098,989

95

20,048,989

34

木村尚孝

30,552,779

6,229,800

8,000,000

44,782,579

10,686,694

-

34,095,885

170

35,795,885

36

西晃市

29,322,384

7,784,700

8,000,000

45,107,084

7,903,622

-

37,203,462

186

39,063,462

39

高橋勝巳

15,581,139

6,647,400

4,000,000

26,228,539

8,497,994

-

17,730,545

88

18,610,545

40

原雅美

8,697,051

2,597,640

4,000,000

15,294,691

1,064,612

-

14,230,079

71

14,940,079

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